メアリー・ステュアートの足跡を追って スコットランド2200km走破 セラフィールド核廃棄物再処理工場3 Sellafield Nuclear fuel reprocessing facility 3 青山貞一 Teiichi Aoyama 池田こみち Komichi Ikeda 2018年12月10日公開 独立系メディア E-Wave Tokyo 無断転載禁 |
スコットランド総目次へ* セラフィールド核廃棄物再処理工場1 セラフィールド核廃棄物再処理工場2 セラフィールド核廃棄物再処理工場3 ところで、私たちが最初にセラフィールド工場のすさまじい汚染問題を知ったのは、今から7年前の2005年、セラフィールド工場からアイリッシュ海に何と約20トンのウラニウムとプルトニウムを含むオリンピックサイズのプールの半分の量の放射性物質が漏れ、施設が閉鎖されたときのことだった。 以下は英国の主要新聞、ザ・タイムズ紙、2005年2月17日号の「セラフィールドはプルトニウム30キログラムを「紛失」─原子力監査公表」の記事である。
しかし、それ以前にもセラフィールドの再処理施設は、操業当初から北欧にまで至る広域的な海洋汚染や何度もの事故を背景とした周辺住民らへの深刻な健康被害などから論争を引き起こしてきたと言えます。 <セラフィールド工場における処理量と放射能排水量> ところで、セラフィールド核燃料再処理工場における年間の処理量は、表にあるように毎年880トンから1100トン、以下の処理期間中のマグノックスの通算量は4万トンを超えています。 THORPは10年間で約5千トンとなっている。さらにガラス固化の本数は通算で3000本弱となっており、いずれも巨大な量です。 表 セラフィールド工場における年間処理量の推移 出典:旧動燃資料 一方、以下のグラフは、セラフィールド工場から海洋への放射能排出の推移です。α放射能排出量、β放射能排出量ともに、1971年から1985年まで膨大な量を海洋に排出していたことが分かります。 図 セラフィールド工場から海洋への放射能排出量の推移 出典:BNFL <セラフィールド工場周辺地域への影響> これだけの処理量と海洋への排出量がある施設であれば、周辺地域への環境影響や健康被害があっても不思議ではありません。 たとえば、1983年、英国の地元テレビ番組でセラフィールド工場近くに住む子供たちの小児がんや白血病の発生率は、英国の全国平均よりかなり高いと報道されました。ちなみに工場から2.4km離れたシースケール村では10倍高いということです。 1990年にはマーティン・ガードナー教授(元サザンプトン大の疫学学者、故人)が、「母親の妊娠前に父親がセラフィールド工場で働き放射線被ばくを受けていたことが、子どもたちの白血病および非ホジキン性リンパ腫のリスク因子である」という仮説を発表しています。 さらに2002年には国際的なガン研究の専門誌(International Journal of Cancer)に、セラフィールド再処理工場で働き被ばくした男性労働者の子どもたちは、他の地域の子どもたちに比べて、白血病やリンパ腫など血液の癌の発生率が2倍近く高く、工場があるシースケールでは、15倍も高いリスクがあると発表されました。 これは工場から地域への直接的影響ではなく、セラフィールドの原子力施設で働く被ばく労働者の父親と小児白血病の子どもとの関係についてみたものです。 上記のうち、かなり古い情報だが1983年の件を報じた英国テレビ局の番組内容を以下に示します。
現地調査で撮影したセラフィールド工場の全景 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 ところで、下にあるように、2018年5月、英国メディア、News SKYの記事によればセラフィールドは従業員の汚染を招いた核物質を扱う事件に関連し「個人従業員の汚染」で起訴されたとあります。 以下に記事タイトルとリード文を示します。 Sellafield to be prosecuted over ' personal employee contamination' "Sellafield to be prosecuted over 'personal employee contamination'. The charges relate to an incident at the facility, which handles nuclear materials, that resulted in employee contamination." 出典:2018年5月、英国メディア、News SKY Sellafield Ltd will be prosecuted after an employee was contaminated during an incident in February last year. The Office for Nuclear Regulation (ONR) announced it was taking action for offences under the Health and Safety at Work Act. The charge relates to an incident at a facility which handles special nuclear materials run by Sellafield Ltd on 5 February 2017. The incident resulted in the "personal contamination" of an employee. A spokesman for the ONR said: "For legal reasons we are unable to comment further on the details of the case which is now the subject of active court proceedings." Sellafield Ltd confirmed it was aware of the prosecution but was unable to offer any further comment. 私たちが次に向かったのは「湖水地方」です。 , 一言で言えば、原発、放射能などに関心があるひとは、「湖水地方」を知らず、他方、文学、自然に関心がある人は、核廃棄物再処理工場を知らず? , いずれにせよ、湖水地方の隣に核廃棄物再処理工場をつくったのは、英国が犯した最大の問題(廃嫡)と言えると、現地を見た私たちは感じました。 「湖水地方1」につづきます スコットランド総目次へ* |