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<沖縄県知事選>
全野党共闘の敗因と
問われる今後の行方(3)


青山貞一

2006年11月23日



青山貞一:沖縄知事選、全野党共闘の敗因と問われる今後の行方 その1
青山貞一:沖縄知事選、全野党共闘の敗因と問われる今後の行方 その2
青山貞一:沖縄知事選、全野党共闘の敗因と問われる今後の行方 その3

 沖縄県は安保の前線基地ととっかえひっかえに、国依存、公共事業依存、特例的補助金依存、公債依存といった体質を余儀なくされてしまったと述べた。これでは、仲井真新知事の言う「沖縄の真の自立は経済の自立なくして出来ないとは裏腹に、国への追随、従属を強めるばかりになりかねない。

 そんな折、フリージャーナリスト、横田一氏が日刊ゲンダイに書いた以下の記事が舞い込んできた。横田氏は私が代表理事を務める政策学校 特定非営利活動法人「一新塾」の第一期生。

 東京工業大学応用化学科を卒業したあと「官製談合・権益利権と政治家」を足を使って徹底取材し、各種メディアに掲載する気鋭のジャーナリストである。近著には、共著でトヨタの正体 がある。

 以下の記事では、安倍政権の現役閣僚である尾身幸次財務相がらみの沖縄県内での金銭疑惑が取りざたされている。

 もし週刊文春や横田氏が以下に顕示する事実が真実なら、中央の閣僚関係者を沖縄の県や市町村を食い物にしていることになる。と同時に、中央政界と沖縄県の政界とが公共事業利権をめぐり、結果的にもちつもたれつの関係にあることになる。

安倍内閣を直撃する“沖縄爆弾” 出典:日刊ゲンダイ

 9日発売の「週刊文春」が、尾身幸次財務相絡みのスキャンダルをスッパ抜いた。私設秘書を名乗るA氏の金銭疑惑だ。A氏は2つの事業で暗躍した。ひとつは沖縄科学技術大学院大学。もうひとつは沖縄市の焼却炉建設。大学院大学では地元の企業からカネをもらい、焼却炉建設では謝礼金を騙(かた)る詐欺疑惑が取りざたされているという。

 さっそく、永田町で話題になっているようだが、それも当然だ。 「A氏は沖縄出身で群馬に住んでいましたが、尾身氏が沖縄担当大臣に就任した時に沖縄に戻った。尾身氏の“威光”をバックに、県内の事業に手広く関わっていたため、沖縄の“ブローカー業界”では有名な存在だった」(地元事情通)のだ。

 A氏は、尾身大臣の娘・尾身朝子氏が2年前の参院比例区に立候補した際、沖縄での後援会作りなどに奔走した。尾身は自民党でも有数の「沖縄族」。このとき、尾身が推進していたのが「大学院大学」(事業費700億円以上)なのである。地元の建設業者、國場組の関係者はこう言っていたものだ。

 「尾身先生は沖縄の建設業者を前にして、大学院大学をはじめ県内の振興事業について語り、『娘をよろしく』と言っていました。『仕事を取りたいのなら、娘に投票しなさい』と言っているように聞こえました」  焼却炉建設を巡る話も自民党の関係者はヒヤリとしたのではないか。

 この事業を巡っては自民党の大物国会議員の口利き疑惑も囁かれているからだ。 4月の沖縄市長選では、社民党国会議員だった東門美津子氏が当選したが、実は保守陣営が分裂していた。保守陣営が焼却炉の機種選定をめぐり、ガス化溶融炉派とストーカー炉派に割れ、後者が東門支持に回ったというのだ。グチャグチャの選挙戦の最中、さまざまな文書がばらまかれた。

 「沖縄市のゴミ処理施設が実績のあるストーカー炉ではなくガス化溶融炉になった背景に政治家が関与したと指摘する文書が出回ったこともあります。大物議員の意を受けて、地元選出の議員が沖縄市幹部に口利きをしたという内容で、新規参入組のガス化溶融炉メーカーが札束を持って営業攻勢をかけていたのも間違いありません」(地元事情通)

 ここに出てくる大物議員とは安倍内閣の現職閣僚だ。今後の展開が見ものだ。

(ジャーナリスト・横田一)
 
 横田一氏は、“改革者”を自称する小沢一郎(現在、民主党党首)が、ミニ田中角栄的なゼネコン政治を地元・岩手県でどのようにやっているかを余すところなく明らかにする告発の書、ずばり「政治が歪める公共事業:小沢一郎ゼネコン政治の構造」を書いている。

政治が歪める公共事業:小沢一郎ゼネコン政治の構造
著者:久慈力 /横田一 出版社:緑風出版

【目次】
序章   公共事業は本当に地域住民のためになっているか
第1章  新進党の建設業界締めつけ選挙の実態
第2章  一心同体の新進党県議と建設業者
第3章  復活した仙台談合組織
第4章  大型公共事業と政治家の関係―ダムと小沢の長い関係
第5章  北上山系開発の巨大なツケ
第6章  土木業者と政治家を太らせる農業対策
第7章  土建優先で枯渇する市財政
第8章  「洪水防止」を口実に利権事業を仕立てる
第9章  新たな政治利権を生み出す公営ギャンブル
第10章 メディアと建設業者と政治家
終章   公共事業改革へむけての提案

 横田氏の著作はいずれも現場主義、足を使った執拗な取材に基づいたものだが、「政治家が歪める公共事業」を読むと、選挙に強い小沢一郎氏の実態が良く見えてくる。同時に、小沢氏が民主党就任時に、映画『山猫』における「変わらずに生き残るためには、変わらなければならない」と告白したことの意味がなんとなく見えてくる。

 後述する亀井静香国民新党副代表とともに、小沢一郎民主党代表が社共とともに沖縄知事選挙で全野党共闘したことそのものが、今の日本の政治の混迷、行く先に大きな課題を残していると言っても過言はないだろう。

 社共それぞれが政党として抱える理念的、体質的な課題があることは言うまでもない。しかし、ここで問われるべきは、反自公と言うだけで全野党が共闘したことの理念、政策的な意味が問われねばならない。その意味で小沢氏の「変わらずに生き残るためには、変わらなければならない」と言う告発の真の意味が問われるのである。これは小沢・亀井両氏を慕う田中康夫、新党日本代表についても妥当することである。

.....

 ところで、沖縄にかかわる閣僚、国会議員、秘書らの疑惑は後を絶たない。以下は、沖縄をめぐる国家予算、中央政界との間での各種事例事例である。

 以下は沖縄県に残る貴重な干潟、泡瀬干潟沖を187ヘクタールを埋め立て人工島を造り、ホテルやコンドミニアム、人工ビーチなどを建設する。総事業費は約650億円。隣接する中城湾港の港湾整備のしゅんせつ土砂を利用し、国が埋め立てる。事業予定地の周辺には、南西諸島で最大の泡瀬干潟が広がり、自然保護団体などは、干潟保全の立場から事業中止を求めている。

 この泡瀬干潟問題でも横田一氏は、「暴走する公共事業」(緑風出版)と言う著作の第1部 小泉政権が進める無駄な公共事業のなかで、「尾身幸次・沖縄担当大臣が指南した泡瀬干潟埋立」という見出しで中央政界がこの環境資源破壊を前提とした経済振興策の無謀さを書いている。ここにも尾身幸次氏の名前がでてくる。

泡瀬、月内に海上着工/埋め立て実質スタート
総事局方針・海藻移植は「手植え法」
沖縄タイムス 2002.10.5朝刊

 中城湾港泡瀬地区の埋め立て事業で、沖縄総合事務局は四日までに、今月下旬に海上工事に着手する方針を固めた。本格工事に当たって実施する藻場の移植について総合事務局は一九九八年度から実施している手植え法を「確実な移植工法」と判断、同工法を採用する。泡瀬埋め立て事業をめぐっては、干潟など環境への影響や土地利用の妥当性について、なお賛否が分かれており、地元や自然保護団体の反発を呼びそうだ。

 総合事務局は尾身幸次前沖縄相が今年三月、当面は第一工区(約九十ヘクタール) の早期着工を進める方針を表明したことから、事業実施は「既定方針」との立場。現在、県や沖縄市などの関係機関と事業の進め方についての協議をほぼ終えており、担当者は「環境監視・検討委の意見を尊重して進める。今月以内に着工する」と明らかにした。資材を搬入するための仮設道路建設などを施工計画通りに進める。

 藻場移植について、総合事務局は当初、コストや効率面から、バックホーによる機械化移植工法が手植えなどの他工法より優れていると想定。国の環境監視・検討委の助言を受けながら機械化工法実験を続けてきた。

 だが、今年七月以降台風が相次ぎ、海草が壊滅的な被害を受けたことから、国の環境監視・検討委は先月三十日、海草の回復状況を見極めるため、機械化工法実験は来年五月までモニタリングを継続、その後実験の成否を判断する方針を確認している。

 一方、手植えによる移植実験結果は「良好に生育する」と結論付け、総合事務局は手植え工法の採用を示唆していた。これに伴い、海上工事が延期されるかが焦点となっていた。

泡瀬埋め立て事業
 泡瀬沖合の187ヘクタールを埋め立て人工島を造り、ホテルやコンドミニアム、人工ビーチなどを建設する。総事業費は約650億円。隣接する中城湾港の港湾整備のしゅんせつ土砂を利用し、国が埋め立てる。事業予定地の周辺には、南西諸島で最大の泡瀬干潟が広がり、自然保護団体などは、干潟保全の立場から事業中止を求めている。

     ◇     ◇     ◇     

推進派「念願」と歓迎/反対派「だまし討ち」
「泡瀬」今月着工

 「念願のプロジェクトがようやく本格化する」「埋め立てありきで無謀だ」―。昨年八月の着工予定が大幅に遅れていた泡瀬埋め立て事業。今月下旬に、国が海上部分の工事に着手する方針を固めたことに、推進派と自然保護団体の反応は真っ二つに分かれた。推進派が「市の発展に明るい展望が開けた」と手放しで歓迎したのに対し、自然保護団体は「埋め立てに伴う環境保護策も十分でない」と、見切り発車的な国の判断を厳しく批判した。

 同事業の推進団体・美ら島を創る市民の会の比屋根清一会長は「いよいよ本格化する。中心市街地の落ち込みの抜本的な解決がない状況で、沖縄市の将来のまちづくりをどうつくりあげていくかが重要だ」と期待する。

 「大変喜ばしいことだ」。東部海浜開発リゾート推進協議会の仲宗根健昌会長は「将来の子どもたちのためにも沖縄市の発展に必要な事業だ」ともろ手を挙げて喜ぶ。

 一方、同事業の中止を求めている泡瀬干潟を守る連絡会の前川盛治事務局長は「だまし討ちだ。前回の環境・監視検討委員会では、(事業者は)いつ着工するかはいまのところは言えないとしていた」と話し、怒りをあらわにした。

 同事業の是非を問う住民投票の実施を求めた住民投票市民の会の漆谷克秀代表は「移植技術の確立もできておらず、埋め立てありきで、情けない判断だ」と批判。 「計画自体も無謀だが、環境保護対策にはあまりにもクリアされていない課題が多 く、環境・監視検討委員会は一体何だったのか」と疑問を投げ掛けた。

 以下は「誰も知らない沖縄」(筑摩書房)の紹介文。

森口豁『だれも沖縄を知らない』筑摩書房

■沖縄にもこれがある。「基地があるがゆえに基地従属経済や補助金交付金従属経済がある」というだけなら「自発的従属問題」ではない。ところが実際にはそれに留まらない。象徴的な出来事は95年の米兵少女レイプ事件後に起こった。事件で県民感情は激昂した。



■それを鎮めるべく沖縄特措法ができ、膨大な補助金交付金でカネとコンクリがぶち込まれた。鈴木某など中央政治家のポッケが膨らみ、次に沖縄の利権ボスのポッケ、更に利権ボスにぶら下がる土建屋のポッケ、最後に土建屋にぶら下がる島民のポッケが膨らんだ。

■結果、補助金漬けの公共事業なくして経済が回らなくなった。農民のための土地改良で土木が儲かるからと大量の離農者が生まれ、漁民のための港湾改良で土木が儲かるからと大量の離漁者が生まれた。かくしてパトリは空洞化し、アイデンティティーは拡散した。

 以下は自民党の旧橋本派と沖縄経済振興利権にかかわるJanJanの記事。

西脇尚人
沖縄から見た「沖縄族」橋本元首相の死去
 
 「....橋本氏は、小渕恵三元首相、梶山静六元官房長官、野中広務元官房長官らと共に「沖縄応援団」と呼ばれた。中央との政治・行政ルートが細かった沖縄に対して、沖縄出身でもない彼らが得意の利益還元型政治で親身に沖縄の面倒を見た。そこには、それぞれの個人的体験なども含まれた、あながち、まやかしではない「弱者」沖縄への「思い」があり、さらに新たな利権獲得という功利性が矛盾せずに同居していたようだ。....」


橋本龍太郎氏の死去を伝える琉球新報記事

 以下は、各地の空港関連業務疑惑が取りざたされている亀井静香(現在、国民新党)に関わる草野洋氏のブログ。

◆疑惑だらけの代議士 亀井静香の虚像と実像 
 出典:草野洋ブログ
(12) 右翼大物を「道路公団」へ亀井が橋渡し?!
(11)“亀井凋落”で「橋梁談合」政界ルートへも飛び火か
(10)“刺客”ホリエモンに唖然たる亀井
(9)「学会が政権に影響力を持つのは危険」と吠える
(8) 仕手集団「コスモポリタン」との株取引
(7)「住都公団」への“口利き”で秘書に疑惑
(6) 亀井に多額献金の不動産業者が“逮捕”
(5)“審査不合格”の「ジェイ社」に“温情”の「道路公団」
(4) 「那覇空港」警備業務に喰い込んだ「ジェイ社」
(3) 「JAL」の“アルバイト客室乗務員”採用計画を潰す
(2)“似て非なる”亀井ファミリー会社
(1) 石原慎太郎をポスト小泉に擁立か

 利権的疑惑とは別に、沖縄関連の国の予算編成にも沖縄の自立・自律とは程遠い大きな課題がある。以下は、沖縄が国依存を強める特例的な国家予算とそれを期待する沖縄側のいわば甘えが見て取れる沖縄タイムズの社説。

沖縄関係予算: 県民の主体性が問われる
沖縄タイムズ 2000年12月26日

 二〇〇一年度予算の政府案が決まった。このうち内閣府沖縄担当部局の予算は、本年度当初予算比〇・一%増の三千四百八十九億九千二百万円となった。

 他省庁を含めた沖縄関係予算も、本年度と同規模の五千五百億円程度になる見通しである。

 橋本竜太郎沖縄開発庁長官や稲嶺恵一知事らが政府案を「沖縄重視」と高く評価するのは、沖縄関係予算が、ほぼ要求に沿って決定されたからだ。

 政府案の特徴として、おおむね次の点が挙げられる。

 まず、沖縄関係予算は、本年度並みに確保されたことである。

 国はみぞうの財政赤字を抱えている。とりわけ、公共事業については、政策効果が疑問視され、バラマキや利権絡みとの批判が強い。

 だが、予算規模を縮小せざるを得ない厳しい状況下でも、沖縄関係予算の公共事業費が削られることはなかった。

 県経済は、公共事業依存度が高い。「沖縄に対する特別な配慮をした」(稲嶺知事)からだろう。

 とはいえ、いつまでも公共事業に頼っていける状況にはない。三次にわたる振興開発計画に投げかけられている疑問も、財政依存から脱却できず、自立化への足掛かりを築けなかったことにある。

 県や沖縄開発庁には沖縄経済振興21世紀プランが、沖縄産業振興策の在り方を変えるレールの役割を果たすとの期待がある。

 そうだとすると、21世紀プランに盛られた事業を実現するために走る機関車の燃料が、単年度予算ということになる。

 政府案には、21世紀プランで示された事業が少なくない。これも次年度沖縄関係予算の特徴である。

 例えば、IT(情報技術)教育センター(仮称)等整備事業、沖縄体験滞在交流促進事業、ゼロエミッション・アイランド沖縄実践モデル推進事業などがそうである。

 他省庁計上分も、21世紀プランを受け、観光・リゾート関連産業とIT関連産業を重視して配分された。

 財政依存体質の改善につながる新たな政策展開と受け止めたい。

 もう一つの特徴は、普天間飛行場の移設を含めた日米特別行動委員会(SACO)最終報告の「着実な実施」に向けた対策である。

 具体的には代替施設建設と基地所在市町村の負担の代償としての振興策と、跡地対策が重点的に措置されたことだ。

 その意味では、レールは単線ではなく、複線である。が、いずれにせよ、レールの上を走る機関車が私たち県民であることは間違いないだろう。

 盛りだくさんの産業振興策が示されたが、県経済の自立化は最終的には県民の主体性にかかっているのであり、代替施設建設の行方も、名護市民をはじめとする県民の判断にかかっている。