エントランスへはここをクリック   


「社会正義」が死語の
日本で体を張る弁護士
海渡雄一・日隅一雄
青山貞一 Teiichi Aoyama
東京都市大学大学院教授
掲載月日:2012年2月9日、10日拡充
独立系メディア E−wave 無断転載禁


 東京共同法律事務所所属の友人の弁護士、海渡雄一さんと日隅一雄さんの出版記念パーティーが2012年2月8日、午後6時から千代田区のKKRホテル(竹橋会館)で開催された。 

東京共同法律事務所主催

   海渡雄一弁護士×日隅一雄弁護士
   原発関連書籍合同出版記念パーティ


「フクシマ後」の視点を提供する4冊を上梓します

  浜岡原発運転差止訴訟等の困難な原発訴訟に、三十年間取り組んできた海渡雄一弁護士。 3.11後の東電本社記者会見に連日出席し、鋭い質問を発して情報公開を迫ってきた日隅一雄弁護士。

 このたび、両弁護士が原発関連書籍計4冊を上梓するのを記念し、合同出版記念パーティを開催いたします。

  ぜひご出席いただき、両弁護士との歓談の機会としてください。

 以下はパーティーの開催通知である。



 私も原告になったり、知人が原告となって起こした各種行政訴訟で主任弁護人を務めてくれている海渡さんや一緒に著書を出し、この1月30日、東京神田の岩波セミナールームで「審議会革命」関連の対談をした日隅さんの出版記念パーティーでもあり、あらかじめ出席の返事を出していた。

 しかし、大変残念なことに、大学入試の合格者判定教授会が同日夕刻にセットされたため出席できなかった。

 当日は、その東京共同法律事務所の設立45周年記念パーティーも兼ねていたそうだが、会場には300名を超える両弁護士の友人、知人らがかけつけ大盛況となった。

 環境総合研究所と独立系メディアの同僚、池田こみちと鷹取敦が参加し、両弁護士や海渡弁護士の奥様、福島みずほ参議院議員と近況を報告し、写真を撮ってきたのでそれらをもとに紹介してみたい。
 
 まず、以下は一雄(左)、雄一(右)のツーショットである。偶然ではあるが、一雄と雄一である。


写真撮影:鷹取敦 (独立系メディアE-wave Tokyo)

 以下は挨拶される海渡雄一弁護士。海渡さんは、原発訴訟を岩波書店から発刊した! 書評


写真撮影:鷹取敦 (独立系メディアE-wave Tokyo)

 あらためていうまでもなく、海渡さんは東大法学部時代、つれあいの福島みずほさんと出会い、その後結婚される。

 その海渡さんは東京共同法律事務所に入所した直後、当時、動きはじめた原発の稼働をとめる訴訟(原発訴訟)に自分の意思で取り組まれた希有の弁護士である。海渡さんは原発訴訟を行いたくて同事務所に入ったと述べている。

 ちなみにここ5年間、海渡さんと一緒に行ってきた総務省相手の行政訴訟や異議申し立ての会合で伺った話として、海渡さんは東大時代天文学にも関心があったとのこと。実際、5年間一緒に闘ってきて法学だけでなく理系にも関心がおありと見た。

 私は根っからの文武両道、いや文理両道で生きてきたが、やはり環境問題や科学技術問題に立ち向かうには文理両道でなければならないと常々実感している。

◆青山貞一最終講義: 環境調査と環境アドボカシーで歩いた世界(1) 
◆過去5年、国相手に一緒に闘ってきたPLC行政訴訟公式サイト



 海渡さんは、その後、もんじゅ訴訟(もんじゅ 設置許可無効確認事件)浜岡原発訴訟(浜岡原発3,4号機 建設・運転差し止め事件)など多くの原発訴訟を手がけられた。浜岡原発訴訟では、河合弘之弁護士や同じ東京共同法律事務所の只野靖弁護士らとともに、徹底抗戦したものの初審敗訴した。

 しかし、3.11の福島原発事故以降、この静岡県御前崎近くに立地する浜岡原発問題が国会でも大きく取り上げられ、最終的に稼働停止に追い込まれたことはご承知の通りである。

 もっぱら、私が調べた範囲で示せば、原発関連訴訟はいままで一審、二審、最高裁判決をそれぞれ1回とすると、30回以上起きている。だが、いずれかで勝訴したのはわずか2回ほどのはずだ。海渡さんはそのうちのひとつ、すなわち「もんじゅ訴訟」の二審で勝訴を勝ち取っている。

◆主な原発訴訟の判決 原告の請求内容 提訴年 一審 二審 最高裁

1 伊方原発1号機 設置許可処分取り消し 1973     X X X
2 東海第2原発 設置許可処分取り消し 1973      X X X
3 福島第二原発1号機 設置許可処分取り消し 1975  X X X
4 柏崎刈羽原発1号機 設置許可処分取り消し 1979  X X X
5 女川原発1、2号機 設置運転差し止め 1981      X X X
6 もんじゅ 設置許可無効確認 1985            X ○ X
7 もんじゅ 建設・運転差し止め 1985 X(確定)

8 滋賀原発1号機 建設・運転差し止め 1988       X X X
9 福島第二原発3号機 運転差し止め 1991        X X X
10 滋賀原発2号機 建設・運転差し止め 1999       ○ X X
11 浜岡原発3,4号機 建設・運転差し止め 2003     X 審理中

○・・・・原告勝利  X・・・・原告敗訴

 おそらく今後、全国各地で原発訴訟が活発化すると思う。ぜひとも海渡さんにはその先頭に立ってがんばって欲しい。

 以下は挨拶される日隅一雄弁護士である。


写真撮影:鷹取敦 (独立系メディアE-wave Tokyo)

 日隅さんが岩波書店から出されるブックレットは、当日に発刊が間に合わず、後日参加者に郵送されることになったとのことだ。発刊後、ぜひ、独立系メディアの書評欄で紹介したい。

 日隅さんは福島第一原発事故以降、東京電力と政府の合同で開催された記者会見に連日参加され、後の方の席に座られ毎回挙手され、東電や政府に質問されていた姿は記憶に新しい。ずいぶん、マスメディアの記者に嫌みを言われたそうだ。
 
 いやみを言うマスメディアが連日取材しながら、ほとんどまともな記事を書いてこなかった、あるいはデスクの取捨選択で記事にしてこなかったことは見る人が見れば分かる。

 この会見の模様は一部始終、インターネットメディアにより生で全世界中継され、私は連日大学の研究室や自宅で拝聴してきた。

 以下は2009年3月10日に日隅さんが執筆し、私が監修し出版した著書「審議会革命」(現代書館)に関連し立教大学で開催したシンポジウムについての概要である。

 後述するが、この「審議会革命」に関連し、1月30日岩波セミナーホールで、日隅さんと青山で対談を行った。 

みんなのメディア作戦会議 第2弾

◆青山貞一:
みんなのメディア作戦会議 第2弾参加記
◆委員は公募、第三者選考を/政府審議会改革求めシンポ 共同通信


 上記の対談とは別に、数年前、東京池袋にある立教大学で、やはり日隅さんが司会をされ日本の審議会の在り方を徹底討議したことがある。私は立教大学の服部先生、東大大学院の醍醐先生とともに私もパネリストとして参加した。

◆問題提起::日隅一雄(弁護士・NPJ代表) 

         「政財官を断ち切る秘策・
         英国任命コミッショナー制度とは」(仮)

司会:日隅弁護士

 日隅弁護士の問題提起と提案を受け、以下のメンバーで徹底討議を行った。
 公職任命コミッショナー概略(pdf)  
ヤメ蚊ブログ



 そを受けパネル討議を行う!



パネリスト: 以下敬称略

 服部孝章(立教大学教授)

 青山貞一(武蔵工業大学・大学院教授、現東京都市大学) 

 醍醐 聰(東京大学教授)

 三井マリ子(女性政策研究家) 

 中野真紀子(デモクラシーナウ!日本代表)

 このパネル討議は、フロアだけでなくUSTREAMで生中継され、全国各地の視聴者からの質問にも日隅さんとパネリストが対応するなど、現在のソーシャルメディアの先駆けとなる画期的なシンポジウムとなった。

 今ではUSTを使い似たようなシンポジウムが開かれていると思うが、2009年の時点でこのようなシンポを行ったのは日隅さんの卓見であると思う。デモクラシーナウはじめ関連するNPOも共催してくれた。




 ところで、よく考えてみると、私が最初に日隅弁護士にお会いしたのは、行政訴訟の打ち合わせで新宿御苑近くにある東京共同法律事務所の会議室で、私が大きな声で話していたところ、事務所にいた日隅さんが見えられお会いしたのが最初である。

 当時、日隅さんは下に表紙を示すマスコミはなぜ「マスゴミ」と呼ばれるのか(旧版)ー権力に縛られたメディアのシステムを俯瞰する(現代人文社)という著書を出していたが、そのなかで私が自分のブログに書いた英国セラフィールドにおける大量のプルトニウム流出事故を日本のマスコミがほとんど報道しないことを引用されており、一冊寄贈してくれていた。



 れっきとした弁護士でマスコミに在籍されたひとは日隅さん以外ほとんど知らない。その意味でも日隅さんは希有な存在であると思う。

 私は海渡さん、福島さんともにおつきあいしているが、民主主義国家とは言えない今の日本にあって人権や社会正義を体を張り続けながら実現している希有の弁護士(福島さんももともとは弁護士)である。

 日隅さんも産経新聞記者時代から人一倍正義感強いジャーナリストである。新聞記者時代に司法試験に合格され弁護士として理不尽な日本社会で社会正義を実現するべく日夜奮闘努力している。お世辞でなく、希有で秀逸な弁護士だ。

 ご自身は辞め検(ヤメケン)ならぬ、辞め蚊と自らを称し、この間ずっとブログを開設し、連日連夜論考を展開されてきた!

 以下は海渡・福島夫妻と日隅さん。私は福島さんとも永年つきあってきたが、社会正義、人権が司法の世界だけでなく、政治の世界で消え入っている今日、まさにEndangered Species、 危機に瀕している種の女性であると思う。何しろ現代人に乏しいパッションがあるのがいい。


写真撮影:鷹取敦 (独立系メディアE-wave Tokyo)

 以下は花束贈呈である!


写真撮影:鷹取敦 (独立系メディアE-wave Tokyo)


写真撮影:鷹取敦 (独立系メディアE-wave Tokyo)


写真撮影:鷹取敦 (独立系メディアE-wave Tokyo)

 以下は駆けつけた宇都宮健児日本弁護士連合会会長である。現在、会長二期目にチャレンジ中である!
 海渡さんは、日本弁護士連合会の事務総長に就任されている。


写真撮影:鷹取敦 (独立系メディアE-wave Tokyo)

 
私と池田が代表を務める独立系メディアE-wave Tokyoを含め、会場には多くのメディア、インターネットメディアも駆けつけた。みなさんがご覧になられているこのブログもそうだが、インターネットメディア、ソーシャルメディアの興隆で、この種の大切な内容をもつ行事が大きく写真入りで情報発信可能となったことは、日本の民主主義にとってきわめて大きな意味をもつと思う。


写真撮影:鷹取敦 (独立系メディアE-wave Tokyo)

 下の写真は、両弁護士や福島みずほさんに挨拶する池田こみちである。


両弁護士に話しかける池田こみち(右)
写真撮影:鷹取敦 (独立系メディアE-wave Tokyo)

 池田や鷹取からは、現在、私たちが行っている環境省の放射性物質に汚染された災害廃棄物問題を審理する検討会が、全面非開示とされている問題や沖縄県にベトナム戦争時の枯れ葉剤が大量に残されている問題で
福島みずほさんに国会質問や質問主意書を出してもらうことを依頼した。今後が楽しみである!


左は池田こみち、右は福島みずほ参議院議員
写真撮影:鷹取敦 (独立系メディアE-wave Tokyo)

 このブログは、実は、ここからが本番である!

 池田が私に送ってきた下のコメントをご覧頂きたい。

> 今日は、海渡さんと日隅さんの出版記念パーティに参加して
> とても感銘を受けました。お二人とも社会正義の実現のため
> 若い頃から継続的に闘ってこられたことが自己紹介などから
> よくわかりました。日隅さんはかなりお疲れのようでしたが、
> 必死の訴えが胸を打ちました。昨年5月末の時点で余命半年と
> 宣告されていたとのこと、「今はおまけのおまけの命なので」
> とご本人もおっしゃってましたが、そんな中でもがんばって
> おられる様子が痛々しかったです。 
池田こみち

 すでに多くの方々はご承知のことと思うが、日隅弁護士は、昨年5月に検査に訪れた虎ノ門の病院で胆嚢がんと診断され、余命半年と宣告されている。検査を受けられたきっかけは、海渡弁護士が体調が悪かった日隅さんに検査を勧められた結果だそうだ。

◆胆嚢癌について

 胆嚢から発生する悪性腫瘍である。早期に発見されることが少なく、有効な治療法に乏しいため、全体的には予後の悪い癌である。発症率はハンガリー共和国やチリ共和国、日本で高く民族間での差が認められる。

 胆嚢癌は胆嚢内腔の上皮より発生する。初期の癌は胆嚢内腔に沿って平坦に発育することが多いが、胆嚢内腔にポリープ状に突出し超音波検査などで発見されることもある。癌はやがて胆嚢壁に浸潤し、リンパ管や神経に沿って転移を起こす。


胆嚢(Gallbladder)の位置

 さらに増大した癌が胆管を閉塞すると黄疸や胆管炎を起こし、この時点で初めて自覚症状が出現する。癌は肝臓、十二指腸、結腸など周辺臓器を巻き込むとともに、肝臓、リンパ節、腹膜などに転移し、やがて個体を死に至らしめる。

 初期には症状がなく、胆石症などを契機に偶然発見されることが多い。進行癌になると、黄疸、右季肋部痛、食欲不振、全身倦怠感、体重減少などが出現する。検診で胆道系酵素(ALP, γ-GTPなど)の異常値を指摘され発見されることもある。

 根治切除(認識できる癌を残さず取る手術)が可能な場合に行われる。肝転移や腹膜転移を有する症例は切除による治療効果が望めないため、通常は対象とならない。2008年現在においても進行胆嚢癌に対する手術術式は統一されておらず、有効性に対する議論が続いている。

出典:Wikipedia

 このことは、私も日隅弁護士の同僚である海渡弁護士や只野弁護士からも聞かされていたことだが、あまりにも悲しく寂しい話だ。

 私との対談があった1月30日(日隅さんの誕生日)もそうだが、昨年の5月+半年は11月である。 医者が宣告した余命半年を数ヶ月超えているなかで、悪い体調をおしての対談となったことになる。
 
 下は1月30日に開催されたNPJ編集長 日隅一雄 連続対談企画 第2回「審議会が本来の機能を取り戻すために」、日隅一雄×青山貞一の対談の開催風景である。会場は超満員となり、同時生中継したニコニコ動画では1万9千人が視聴された。

★日隅一雄氏インタビュー〜「主権在官」打ち破れ 東京新聞
◆青山貞一: 日隅一雄×青山貞一対談参加記  
◆青山貞一:立法府が本来の機能を取り戻すために


写真撮影:鷹取敦 (独立系メディアE-wave Tokyo)

 当日、日隅さんは私との対談でもたいへん明るく振る舞われた。

 会場に詰めかけた満席の参加者の大部分は日隅さんのご容態を知っての参加であった。当然、私もそれを承知の上の対談であり、いつも以上に話に熱が入った。


写真撮影:池田こみち (独立系メディアE-wave Tokyo)


左が青山貞一、右が日隅一雄弁護士
写真撮影:鷹取敦 (独立系メディアE-wave Tokyo)

 実は日隅さんと私たち(青山、池田)の経歴には思わぬ共通点がある。それは、日隅さんが産経新聞にいらしたこと、私たちがフジテレビの100%子会社のシンクタンクに在籍していたことである。

 ともにいわゆるフジサンケイグループにいたのである。フジサンケイグループと言えば、右よりのタカ派メディアと思われている。

 しかし、そのフジサンケイグループを辞めたあと、日隅さんは社会正義を実現するため弁護士に、私たちも社会正義を実現するためにシンクタンク(環境総合研究所)を設立し、さらに独立系メディア(E-wave Tokyo)を立ち上げたのである。

 おそらく、それだけに人一倍、日本を社会正義や人権を大切にする社会にするためにミッション、パッション、アクションをもってがんばる気概をもって生きてきたと思いたい。

 日隅さん一日でも多く元気な姿を国民に見せて欲しい!
 

 胆嚢がんに関連し、日隅さんは、闘病の過程で得られた様々な情報をご自身のブログで細かく報告されている。同じ病気の方々に少しでも役に立てばとのお気持ちからとのことだが、その報告内容は非常に克明であり、ここでもジャーナリストとしての役割をいかんなく発揮されている。

◆胆嚢癌(腹膜播種あり)手術不適応患者の記
  http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/c/0014fc6d188927ccadc946eab2135f00

 ご挨拶の最後に、「今日の日を日本の国民主権を考える最初の日にしていただけると有り難い」切々と訴えられ、会場の人々の心を打った。
 池田こみち

 2010.2.9 青山貞一談