シルクロードの今を征く Now on the Silk Road  バードシャーヒー・モスク（1993年）（Provisional list of World Hertage of Pakistan） 青山貞一 Teiichi Aoyama 池田こみち Komichi Ikeda 共編 掲載月日：２０１5年１月2３日 更新：２０１９年４月～６月 独立系メディア Ｅ－ｗａｖｅ Tokyo 無断転載禁 |
| 総合メニュー（西アジア） パキスタンの暫定世界遺産リスト 暫定世界遺産１ 暫定世界遺産２ 暫定世界遺産３A 暫定世界遺産３B 次はパキスタンの暫定世界遺産リスト（Provisional list of World Hertage of Pakistan）です。 ◆バードシャーヒー・モスク（1993年）  バードシャーヒー・モスク (Badshahi Mosque, ウルドゥー語: بادشاہی مسجد, 「皇帝のモスク」の意味) は、ムガル帝国の第6代君主アウラングゼーブの命によってラホールに建設されたモスクです。 1671年から1673年にかけて建設された同モスクは、完成時には世界最大のモスクでした。現在は、パキスタンで2番目、世界で5番目に広いモスクです。同モスクはラホールを象徴するもっとも有名なランドマークであり、主要な観光地です。 アウラングゼーブによる建築プランは、彼の父シャー・ジャハーンがデリーに建てたジャーマー・マスジドに似ていますが、バードシャーヒー・モスクの方がはるかに大きいのです。同モスクは、野外モスク (イードガー) として機能しています。 27万6,000平方フィート (約2万5,641平方メートル) の中庭は10万人の礼拝者を、屋内には1万人の礼拝者を、それぞれ収容可能です。ミナレットは高さ60メートル (196フィート) 。同モスクは、もっとも有名なムガル様式の建造物の一つですが、シク王国のランジート・シングの統治期 (1801年 - 1839年) においては不遇を託っていました。 パキスタン政府は1993年、バードシャーヒー・モスクを世界遺産の暫定リストに掲載しました。  正面からの全景 Zaki imtiaz - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=42177066による Source：Wikimedia Commons 立地 同モスクは、ラホール城のアーラムギーリー門のちょうど向かい、ハズーリー・バーグ庭園に隔てられたウォールド・シティ）内に位置しています。庭園の東側が、ラホールにある13の門の一つ、ローシュナーイー門です。モスクのそばには、ムハンマド・イクバール廟があります。 歴史 1671 – 1849年 同モスクは、ムガル帝国の第6代君主であるアウラングゼーブによって建設されました。彼は、先代の君主たちとは異なり、芸術や建築のパトロンではありませんでした。同モスクは、1671年から73年にかけて、フィダイ・カーン・コカ (Fidai Khan Koka) の指導の下で建設されました。  ドゥリープ・シングによるモスクへの入場 James Duffield Harding (1797-1863) after Charles Stewart Hardinge (1822-1894), the eldest son of the first Viscount Hardinge, the Governor General. - Panjab: Entry into Lahore from the Parade Ground., パブリック・ドメイン, リンクによる Source：Wikimedia Commons 1799年7月7日、スケルチャキア・ミスルの首長ランジート・シングによるシク教徒の軍隊が、ラホールを支配下に置いきました。街の占領の後、ランジート・シングが同モスクの中庭を軍馬用の馬小屋として、中庭を取り囲む80の小部屋 (hujras) を兵舎と倉庫としてそれぞれ使用したため、モスクの神聖性は損なわれました。ランジート・シングはまた、モスクに隣接したハズーリー・バーグ庭園を公的な宮殿として使用しました。  1880年代、壊れたミナレット 不明 - from Columbia University Website & ebay, May 2008, パブリック・ドメイン, リンクによる Source：Wikimedia Commons  モスクのミナレット。後方は隣接するランジート・シング廟 Muhammad Ashar - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる Source：Wikimedia Commons 第一次シク戦争前の1841年、ランジート・シングの息子シェール・シングは、モスクの大ミナレットを軽砲 (zamburahs) の設置場所として利用しました。軽砲は、隣接するラホール城に籠城したチャーンド・カウルの支持者を砲撃するために使用されました。 ラホール城は、この砲撃で大きなダメージを負いました。この砲撃の一つによって謁見の間 (Diwan-e-Aam) が破壊されました。謁見の間は、後にイギリス領インド帝国によって再建されるものの、以前の状態通りには戻りませんでした。 この間、シェール・シングの軍隊に雇われていたフランス人騎兵将校ヘンリー・ド・ラ・ルーシュ (Henri De la Rouche)は、一時的に弾薬を貯蔵するため、同モスクからラホール城へと繋がるトンネルを利用しました。 イギリス領インド帝国期の1849年、イギリスは引き続き同モスクと隣接するラホール城を軍の駐屯地として使用しました。巨大な中庭の三方を取り囲む壁の中に設置された80の小部屋 (hujras) は、本来は学習部屋であり、ランジート・シングが統治するシク王国の軍が兵舎や倉庫として使用されました。 イギリスは、反イギリス活動に使用されることを防ぐために小部屋を破壊して、オープン・アーケード (dalans) の様式に建て替えました。 1849 – 1947年  中庭東側の壁面の様子 モスクがイギリス軍の駐屯地として使用されていることに対するムスリムの憤りが高まったことにより、イギリスは礼拝施設としての再興と監督のため、バードシャーヒー・モスク管理組合を1852年に立ち上げなしたた。それ以降、同管理組合の管理の下、同モスクの改修が漸次実施されました。 1939年以降は、パンジャーブの首長シカンダル・ハヤート・カーンが基金を立ち上げ、大規模な修繕が実施されました。改修は、建築家ナワーブ・ゼン・ヤール・バハードゥル (Nawab Zen Yar Jang Bahadur) の監督の下で行われました。改修は1960年まで続き、総費用は480万ルピーでした。 独立後 1974年2月22日、イスラム協力機構の第2回サミットの式典において、イスラム教徒であるイスラム諸国39ヶ国の首脳が、同モスクでの金曜日の集団礼拝に参加しました。参加した主な首脳は、パキスタンのズルフィカール・アリー・ブットー首相、サウジアラビアのファイサル国王、リビアのムアンマル・アル＝カッザーフィー大佐、パレスチナ解放機構のヤーセル・アラファート議長、クウェートのサバーハ3世首長らでした。この時の集団礼拝は、同モスクのハティーブを務めていたマウラーナーであるアブドゥル・カーディル・アザド (Abdul Qadir Azad) でした。 1939年から1960年にかけて、同モスクは建設当初の状態に戻すための改修が行われました。1993年、パキスタン政府は同モスクを世界遺産の暫定リストに掲載しました。 2000年、大理石をはめ込んだ主礼拝室が改修されました。2008年には、モスクの中庭の赤色砂岩のタイルの交換作業が始まりました。特に赤色砂岩は、元々使用されていたインドのジャイプル近郊から、修復のために輸入されました。 特徴  植物の柄をあしらったモスク内部の壁面 Hhaarroonn - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる Source：Wikimedia Commons 同モスクの建築プランは、アウラングゼーブの父シャー・ジャハーンがデリーに建てたジャーマー・マスジドに類似しています。同モスクは、通常のモスクと野外モスク (イードガー) の双方の機能を兼ね備えています。同モスクの東側は入場階段になっており、砂岩で出来たアーチ形天井のある入り口を抜けることになります。 中庭は、27万6,000平方フィート (約2万5,641平方メートル) で、一つの通路で囲まれています。同モスクの四隅には、赤色砂岩でできた八角形で3階建てのミナレットが存在します。このミナレットには、オープンで大理石に覆われた天蓋があります。 中庭は、4本の小さなミナレットによって形作られています。礼拝室は、中央のアーチ状の壁龕と、各サイドに5つのアーチがあり、このアーチは中央の壁龕のおよそ3分の1の大きさであります。最大のドームは中央のアーチに隠れており、両脇には2つの球根上の大理石のドームがあります。その上同モスク、左右対称で、バランスの取れた明快性と均整を湛えています。 ミナレットは60メートル (196フィート) で、外周は67フィート、内周は8.5フィートです。同モスクは、せりあがったプラットホーム上に建てられており、段差が22段あります。入口ゲートの上部の部屋は一般には公開されていませんが、預言者ムハンマドとその娘婿で従兄弟のアリーの聖遺物 と信じられている彼らの髪の毛があります。 主礼拝室はアーチによって7つに分けられています。礼拝室中央の上部には3つのドームがあります。一つがメインで残る二つがサブですが、これはムガル様式に共通した特徴です。中庭は、ブラウンストーンの石板で構成されています。 同モスクの内装は、貴重な石を使い花柄デザインで装飾されていますｓ。主礼拝室の各サイドにある3つの礼拝室は、教育目的で使用されている部屋です。同モスクは、屋内に1万人、中庭に10万人の礼拝者を収容することが可能です。この中庭は、世界中のどのモスクのものよりも広いと言えます。 関連項目 パンジャーブ州の観光 ラホールの建築物 シャヒード・ガンジュ・モスク ワーズィル・カーン・モスク 暫定世界遺産３Aへつづく |