エントランスへはここをクリック   


福島放射線現地調査報告
2011年6月18日〜20日:
〜調査の目的・方法など〜
青山貞一  池田こみち 鷹取敦
東京都市大学青山研究室(横浜市都筑区)
環境総合研究所(東京都品川区)
掲載月日:2011年8月14日
独立系メディア E−wave
無断転載禁

2011年6月18日〜20日 福島放射線現地調査
◆福島原発事故、520カ所に及ぶ放射線測定調査(速報)
6月18日 6月19日 6月20日
調査の目的・方法など 二本松市から飯舘村へ 二本松市の知人宅訪問
宇都宮市から那須高原へ 南相馬市到着 二本松知人宅で測定
白河市から須賀川市へ 市長との議論、被災地視察 二本松市からいわき市へ
須賀川市から郡山市へ 南相馬市の被災市民との議論 広野町・楢葉町へ
郡山市から二本松市へ 南相馬産廃施設視察 いわき市被災地再訪問
福島市(福島大学・中心市街地)  「相馬野馬追」、相馬太田神社訪問   全測定結果(固定測定)
南相馬市南の警戒区域線上 測定結果(平均値)

●調査の背景

 2011年3月11日、東北地方で発生した巨大地震とそれに続く津波によりチェルノブイリ原発事故に匹敵する福島第一原発の巨大事故が発生した。事故直後から福島県内を中心に周辺地域に各種の放射性物質が移流、拡散し、大気、土壌、水などを汚染するとともに人間を含む生物に放射線を被曝させた。

 本研究の一環として筆者ら環境総合研究所の研究スタッフは、SPEEDIに類する3次元流体計算シミュレーションを3月下旬より開始した。このシミュレーションモデルは、複雑な地形を考慮できるところに大きな特徴があるが、事故当初各地に飛散した放射性物質は複雑な地形と地域固有の強烈な海風などの気象条件のため、各地の放射線量や汚染分布は原発からの距離で単純に表現できないことが分かった。

 他方、ひとたび原発から放出され大気中に拡散した放射性物質は、事故直後の初期降雨により土壌、草地などに沈降、凝集した。地表面に滞留する放射能は、地表面から地上に向けそれぞれの半減期に対応し放射線を継続的に発することとなり、当該地域に居住する人々に積算放射線量(外部被曝)を増加させることになっている。

 筆者らは上記の仮説を検証するため、4月中旬(予備調査)と6月中旬(本調査)に福島県を中心に合計520カ所において地上1m及び地表面の放射線量を測定するとともに、国、自治体などが実施してきた空間放射線量と土壌中放射能の測定データを整理、分析し、時系列的にそれらと降雨量との関係を解析してきた。さらに国が設定した20km警戒区域の設定など政策についてもその妥当性を検証してみた。

 本論は研究途中の暫定報告であり、今後も継続する予定である。

●現地調査の概要

(1)現地調査の目的:

 福島県を中心に福島原発事故に起因する空間放射線量率の測定を行い記録すること、また3月下旬から環境総合研究所が独自研究として行っている3次元流体システムによる各種シミュレーション結果の検証のためのデータを得ることが目的である。 さらに、福島原発による放射性物質による地域の汚染構造を分析するための基礎的なデータを得ることも目的のひとつである。

(2)現地調査の実施年月日:

 2011年6月18日から20日まで

(3)現地調査の方法:


 調査は、大別して2種類ある。固定測定と自動車を用いた移動測定である。

@固定測定
 地上1mの高さ、地表5cmの高さ、側溝など溝は底から10cmでガンマー(γ)線を測定。


図1 放射線の測定(固定測定:地上1m)


図2 放射線の測定(固定測定:地表面)

A移動測定
 自動車で移動中、車窓で地上約1m高でガンマー(γ)線を測定するとともにGPS(Global Positioning System)を用いて移動中の位置を記録した。


図3 放射線の測定(移動測定:地上1m)

(4)測定カ所数

 測定カ所数は以下の通りである。

@固定測定 
 64箇所、130地点
 (1箇所につき1m、5cmでの測定及び場合により側溝などでの測定を含む。測定数としては130カ所)

A移動測定
  福島県内外 390カ所

B合計測定カ所数 
  520カ所

(5)放射線測定器:

 本調査には図4にある日本(TCS-171B)、ロシア(RADEX RD1503)、米国(DoseRAE2)、中国製(DP802i)の4台の測定器を使用した。

 日本製は東京都市大学原子力研究所が所有する公式測定器(γSurvey Meter TCS−171B)を公式キャリブレーション(校正)後、現地調査に持参した。米国、ロシア、中国の他の携帯用線量計は、公式測定器との間で補正係数を求めた上で使用した。ただし、中国製(DP802i)は低レベル放射線領域の値の誤差が大きいことが分かり、途中から使用中止とした。


図4 現地調査で使用した放射線測定器 

(6)調査の対象範囲

 測定範囲の設定に関しては、文部科学省と米国エネルギー省が共同実施し作成した図1の放射線量測定マップを参考にした。

 ただし、図5は2011年4月29日に航空機を用いて測定し作成したものであるが、本調査時点では、下図にある20km圏内(警戒区域)などは立入禁止区域となっており特別許可がない限り圏内への立入が出来ないことから、調査では20km圏外を対象とした。


図5 航空機モニタリングによる空間線量測定マップ
出典:文部科学省及び米国エネルギー省

(7)調査ルートと対象市町村:

 現地調査ルートは概ね次の通りである(図6参照)。

 横浜市出発(6月17日)→東京特別区縦断→東北自動車道→宇都宮市(1泊)→那須塩原→白河市→西郷村→白河市→天栄村→須賀川市→郡山市→本宮市→大玉村→二本松市→福島大学→福島市街地→二本松市(2泊目)→福島市→川俣町→飯舘村→南相馬市→相馬市→南相馬市→川俣町→山木屋(川俣町)→二本松市(3泊目)→本宮市→三春町→田村市→小野町→いわき市→広野町→楢葉町→いわき市→北茨城市→常磐自動車道→つくば市→柏市→東京特別区。


図6 福島放射線現地調査ルート図
出典:株式会社環境総合研究所(東京都品川区) 
 
(8)現地調査の体制

 本現地調査は以下の3名で実施した。

 青山貞一  東京都市大学環境情報学部教授
         株式会社環境総合研究所所長

 池田こみち 株式会社環境総合研究所副所長

 鷹取 敦   株式会社環境総合研究所調査部長
         法政大学工学部講師

つづく