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スイス山歩き - グリンデルヴァルト(3)

鷹取敦

執筆日:2019年8月20日
 独立系メディア E-wave
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内容目次
8/11-13 ツェルマット 1 ツェルマット(1) | 2 ツェルマット(2)
8/13-16 グリンデルヴァルト 3 グリンデルヴァルト(1) | 4 グリンデルヴァルト(2) | 5 グリンデルヴァルト(3)

 フィルストハイキングの翌日は、再度ユングフラウヨッホに向かいました。早朝割引の登山列車のチケットは前々日に購入済みです。

 この日は帰国便のために1泊するチューリッヒに向かう移動日です。ユングフラウヨッホはお昼までの時間を使って訪れるという予定です。数日前にツェルマットからの列車が不通でバスで代替輸送だったことも思い出され余裕を残して計画します。(早朝割りチケットなので帰りの列車は13:13までですがそれより早く現地を出る予定です)ホテルをチェックアウトして荷物を預けて出発しました。

 今回はグリンデルヴァルトの駅から列車に乗り、クライネ・シャイデックで乗り換えます。下の写真は朝7:40頃です。予定より1本早い列車(始発のユングフラウ鉄道に接続する列車)に乗りました。


グリンデルヴァルト駅 撮影:鷹取敦 Nikon COOLPIX S9900

 クライネ・シャイデック駅に到着し、ユングフラウヨッホ行きのユングフラウ鉄道のプラットホームに向かいました。改札が2箇所あり最初の改札に行ったところチケットが改札を通過できません。駅の表示をみてもよくわからなかったのですが、仕方なく先の改札に向かい並びました。後で分かったのですが、最初の改札は座席指定ありのチケット、後の改札は自由席のチケットのためのものでした。(チケットを購入する際に説明がなく気がつきませんでした。)

 結果として自由席の改札は1人前までで満席となり乗車できません。次の列車の先頭ということになります。予定より1本早い列車で来たので結果として予定の列車に乗ることになります。(一緒に並んでいた中に団体がいてそのツアーガイドらしき人と駅の係員がもめていました。ガイドはチケットを指定して買ったはずなのに乗れないのはおかしい、と主張していたようです。座席指定券を持っていたかどうかわかりませんが、わかりにくシステムだったのは間違いなさそうです。)


クライネ・シャイデック駅で乗れなかった列車 撮影:鷹取敦 Nikon COOLPIX S9900

 下はユングフラウヨッホに向かう列車の車窓から見たクライネ・シャイデック駅です。駅と駅舎に附属している施設以外に余計なもはなく景観が保たれています。


クライネ・シャイデック駅 撮影:鷹取敦 Nikon COOLPIX S9900

 アイガーの斜面が間近に迫って来ました。ここからすぐにトンネルに入ります。トンネルは全長約7km、勾配は25%(1kmあたり250m上昇)で、アイガー北壁とメンヒの内部を貫いています。

 このトンネルは多くの犠牲者を出した16年の難工事により1912年8月に開通しました(出典)。

 産業革命の後、鉄道による旅行が普及しスイスへの観光客が増加していた19世紀後半に計画されました。長いトンネルを通過するため最初から蒸気機関車ではなく電気による鉄道計画でした。1898年までにアイガー山麓まで開通し部分営業が開始され、1912年にようやく標高3,454mのヨーロッパで最も高いところにあるユングフラウヨッホ駅まで開通されたものです。ユングフラウの山頂(4,158m)までの計画もありましたが、資金の問題と観光客の高山病のリスクなどを考慮しユングフラウヨッホ駅が終着駅となっています。(出典


アイガーの山肌 撮影:鷹取敦 Nikon COOLPIX S9900

 途中の標高3,158mの高さにあるアイスメーア(Eismeer)駅で5分間停車し地下の展望デッキから外の光景を眺めることができます。(ユングフラウヨッホ駅は3,454m)


アイスメーア駅 撮影:鷹取敦 Nikon COOLPIX S9900

 下が展望デッキからの眺望です。標高3,158mですが下に見えるのも標高の高い位置にある氷河であることと、風景の中に大きさが分かるような対象物がないので高さを実感させません。素晴らしい眺望ですが、終着駅のユングフラウヨッホの外からの開けた迫力のある眺望にはかないません。


アイスメーア駅からの眺望 撮影:鷹取敦 Nikon COOLPIX S9900

 ユングフラウヨッホ駅に到着しました。降り立ったプラットホームの壁面は下の写真のように岩が向きだしで照明もトンネルの中のようです。あえてこのように掘削当時の様子を演出しているものと思われます。


ユングフラウヨッホ駅 撮影:鷹取敦 Nikon COOLPIX S9900

 ユングフラウヨッホ駅は駅というより全体が観光施設のようになっています。展望台の他に氷で作られた彫刻が沢山展示されているアイスパレス、ユングフラウ鉄道の歴史などをみることが出来るアトラクション、チョコレートの製造過程をみることができるリンツ・スイス・チョコレート・ヘブン、屋外のハイキングコースなど盛り沢山です。

 施設を利用できる人数には制限があり、ここから他の場所に移動することもできないので、1日の登山鉄道のチケットの販売数は予め制限されており、そのため好天だった前々日のお昼には売り切れだったわけです。

 展望台に出てみました。下の写真の左奥の建物が地下にあるユングフラウヨッホ駅から登ってきたところです。広い展望台ではないので、このように観光客がひしめいています。写真の正面奥にユングフラウがあります。小さく見えますが、ここよりも700mくらい高い山頂です。


ユングフラウヨッホ駅 撮影:鷹取敦 DJI OSMO ACTION

 ユングフラウ(4,158m)はアイガー(3,970m)、メンヒ(4,107m)とともにオーバーラント三山と呼ばれています。下はメンヒの山頂です。アイガーはちょうどメンヒの後ろ側に隠れているようです。


メンヒの山頂 撮影:鷹取敦 DJI OSMO ACTION

 下の写真のようにメンヒの山頂等を背景に観光客が写真を撮っています。自撮り棒で撮っているお二人は何を背景にしているのでしょうか。


メンヒの山頂と筆者 撮影:鷹取美加 iPhone XS

 グーグルマップでだいたい同じような方向からみた3次元図を作ってみました。上空から見ているのでアイガーが見えますが、展望台からはメンヒの奥にあるアイガーの山頂は見えませんでした。上の写真ではメンヒの左側に少し肩が見えているかもしれません。メンヒの反対側にユングフラウの山頂があります。

 ちなみにグリンデルヴァルトはメンヒ、アイガーのさらに向こう側に位置しています。グリンデルヴァルト側からみるとアイガーが手前にそびえ立っていて、メンヒやユングフラウは見えません。


Googleマップより作成

 メンヒをみている上の写真から左の方を向くと、はるか遠くまで流れている氷河・コンコルディアプラッツが見えます。ユングフラウの東の山腹とメンヒの南の山腹からユングフラウフィンという氷河が7kmあり、それがコンコルディアプラッツに流れ出ています。コンコルディアプラッツは厚さ900mもあります。


氷河(コンコルディアプラッツ) 撮影:鷹取敦 DJI OSMO ACTION

 反対にメンヒから左の方を見ると、はるかインターラーケンの方向まで見下ろすことが出来ます。インターラーケンはグリンデルヴァルトから河下に下ったところにある2つの湖の間です。インターが間で、ラーケンが湖を意味します。


メンヒの山頂とインターラーケン方面 撮影:鷹取敦 DJI OSMO ACTION

 展望台を反対側にまわる途中でユングフラウの山頂が見えました。


ユングフラウの山頂 撮影:鷹取敦 DJI OSMO ACTION

 展望台の案内板ではちょうど以下の範囲でしょうか。ちょうど中央のとがったあたりがユングフラウの山頂であることが分かります。


展望台の案内板(部分) 撮影:鷹取敦 Nikon COOLPIX S9900

 ユングフラウの山頂から左に下がったところ、上の案内板に「Rottalstattel」とあるあたりに小さく人影が見えました。下が拡大した写真です。赤丸で囲んでみました。比べるものがないのでユングフラウの山頂は比較的近く見えていましたが、下の写真の登山者の大きさをみるといかに大きいかがわかります。


ユングフラウの登山者(赤丸内) 撮影:鷹取敦 Nikon COOLPIX S9900

 下の写真の筆者のあたまのあたりに上の写真の登山者がいます。


ユングフラウと筆者 撮影:鷹取美加 iPhone XS

 ユングフラウヨッホ駅から外に出るとハイキングコースがあります。クレバスのリスクがあるのでロープが貼ってある間だけを歩けるようになってみあす。下の写真の岩山の中に駅があります。写真中央奥に出入り口が見えています。


ユングフラウヨッホの地下駅からハイキングコースへ出たところ 撮影:鷹取敦 DJI OSMO ACTION

 ハイキングコースに出ました。緩い起伏がありますが、標高が高いため走って登ると息が切れます。ここで、前日にフィルストで見かけた(妻は湖の方向を聞かれて教えていました)トレラン姿の男性に偶然再会して少し話をしました。


ユングフラウヨッホのハイキングコースへ出たところ 撮影:鷹取敦 DJI OSMO ACTION

 下はクレバス注意の看板です。看板の後ろ、「STOP!」の下のあたりの位置に氷河の上に左右に伸びているがクレバスです。このような注意があってもコースの外に出ている人がいました。危険ですね。


クレバス注意 撮影:鷹取敦 Nikon COOLPIX S9900

 このハイキングコースの終点まで歩きたかったのですが、チューリッヒに向かうための列車に間に合うよう、帰りの登山列車に乗らなければなりません。少し歩いてあきらめて駅に引き返しました。11時過ぎにユングフラウヨッホ駅を出発しました。


ユングフラウヨッホ駅 撮影:鷹取敦 DJI OSMO ACTION

 ユングフラウヨッホ駅からクライネ・シャイデック駅に降りる列車の向かいの席に座ったアメリカ人が日本の高校で英会話の先生をしていたことがあるそうです。3人でクライネ・シャイデック駅まで日本語と英語でいろいろ話をしました。

 ライネ・シャイデック駅で乗り換えてグリンデルヴァルト駅に12時42分に到着しました。ホテルに預けてあった荷物を受け取り、13時過ぎの列車に乗りさらに乗り継いでチューリッヒに向かい16時頃に駅に到着しました。

 チューリッヒはトラム(路面電車)の多い町でした。翌朝はトラムで空港に向かいました。トラムのチケットは乗り場にある自販機でカードで購入できます。海外に行くとチケットの買い方が最初は難しい場合が少なくないのですが、この時は比較的分かりやすく簡単に購入できました。


チューリッヒ 撮影:鷹取敦 Nikon COOLPIX S9900

 チューリッヒは到着して夕食を取って散歩をして終了です。翌朝8時過ぎに出発し香港経由で成田空港に向かいました。香港はデモで封鎖されていた期間がありましたが、この時は解除されており通常通り運航していました。


チューリッヒでの夕食 撮影:鷹取敦 Nikon COOLPIX S9900

 今回はいつもの夏と趣向を変え、身体を動かしながら自然を満喫する旅を選択しました。雄大なアルプスの自然の中を日々、歩いたりちょっと走ったりする1週間弱でいつも以上に心身ともにリフレッシュできたことを実感しました。

 いつもの歴史的な場所を訪れる旅の時の1日に相当な歩数を歩いてまわっているので、運動量はそれなりにあるのですが、やはり新鮮な(そして涼しい)空気の中でハイキング三昧は違います。


 一方、スイスの歴史は他のヨーロッパと大きく異なり、非常にユニークです。

 ヨーロッパの他の国の多くは王様や貴族の領地が後に国民国家として成立したものですが、スイスはその成り立ちから領主がおらず、複数の地域どうしの複数の同盟関係が発展し、その中での諍い等もありながら成立した連邦国家です。スイス連邦と表記されますが、正式名称からはスイス盟約者同盟と訳されることもあります。

 その独特なため複数の言語の地域があったり、カトリックとプロテスタントの地域が入り交じっていたり、傭兵が主要産業だった時代があったり、永世中立国で国際機関が多数設置されていたり、EUに加盟していなかったりします。

 この非常に興味深い歴史については、スイスの歴史的な地を訪れた機会にまとめてみたいと思います。