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伊方原発事故時の大分
への影響予測評価
(大分講演会概要)

C3次元流体力学モデル

青山貞一

環境総合研究所顧問 東京都市大学名誉教授
掲載月日:2016年1月31日

             

4. 3次元流体シミュレーション・モデルと手法

 用いている3次元流体シミュレーションの手法のうち拡散モデルは、定常、非正規モデルです。

 いわゆる運動方程式の偏微分方程式を差分法により解を求める数値解析を用いています。コンピュータ計算モデルは、風洞模型実験により精度を検証した3次元流体力学数値解析モデル(有限差分法)です。


出典:環境総合研究所(東京都目黒区)

 以下はすうち数値解析モデルによる3次元流体シミュレーションの部分についての紹介です。数値解析モデルでは、解析解モデルのように、地形などの重要な要因を捨象する(すてさる)ことで偏微分方程式の解を求めることはできません。そのため繰り返し計算によりより解に近づく方法が採用されています。私達の3次元流体シミュレーションモデルでは、そのうちの一つである差分法を用いています。




 出典:青山貞一、鷹取敦 山間地における大気拡散モデル による現況再現性の比較検証
     東京都市大学環境情報学部紀要 第十号 (2009年2月28日発行)
     http://www.yc.tcu.ac.jp/~kiyou/no10/1-01.pdf
 
  以下は偏微分方程式(波動方程式ないし運動方程式)を差分法の解説です。

   微分方程式の差分解法の基礎

  数値計算スキームとしての差分型非線形シュレーディンガー方程式

 差分法では、計算するグリッド(メッシュ)をx、y、zいずれの方向とも、等間隔、たとえば500mとする場合と、主要部分を細かくし、そこから遠い部分については、計算時間を少なくするために荒くする、たとえば1500mとする方法が用いられます。これを有限差分法と言います。

 この差分法を用いた数値計算モデルは、簡易モデルである解析解モデル(通称、プリュームモデル)では不可能な詳細に地形を考慮した風と汚染の流れをシミュレーションすることが出来ます。計算手法としては、有限差分法を用いています。しかし、計算量は簡易モデルに比べて数10万倍から数100万倍の量となり、膨大な計算時間がかかります。

 以下は国のSPEEDIにおけるシミュレーションの手順です。環境総研の場合も、放出情報→風速場計算→濃度計算→線量計算→図形表示という手順は基本的に変わりません。


出典:特殊法人 原子力研究所部内資料

 下図は先の手順に関連し、使用するデータファイルとの関連を示したものです。いずれも出典は特殊法人 原子力研究所部内資料です。


出典:特殊法人 原子力研究所部内資料

 以下は、有限差分法を用いた3次元流体シミュレーションの手順です。まず風の流れを計算し、その後、風場データを使用して汚染の流れをシミュレーションします。


出典:環境総合研究所(東京都目黒区)

 以下は環境総合研究所が流体力学モデルを用いた2次元流体シミュレーションの具体例です。中央に発生源(煙突高50m)がある場合、風下1kmに汚染が移流、拡散、沈降して様子をシミュレーションしています。風下に山や谷がある場合だけでなく、風上に山や谷がある場合にも拡散に影響が及びます。


出典:環境総合研究所(東京都目黒区)

 以下は環境総合研究所が流体力学モデルを用いた3次元流体シミュレーションの具体例です。丘の上に産業廃棄物の焼却炉がある場合、風下に汚染が移流、拡散、沈降して様子をシミュレーションしています。汚染の移流、拡散、沈降が地形により非常に複雑に展開している様子が分かります。


出典:環境総合研究所(東京都目黒区)

 以下はシステム開発に関連した東京新聞の記事です。

◆この人 青山貞一さん 放射性物質拡散予測 独自のシステム開発 東京新聞

 さらに、システム研究開発した背景と技術面については、以下の動画ごご覧ください。
 
 
パソコンでSPEEDI 研究開発の背景 青山貞一(環境総合研究所顧問)
https://www.youtube.com/watch?v=wFG8tx6cPQw


 下は地形を考慮した3次元シミュレーションの一例です。以下は東北電力の女川原発を事例としています。これは青山の女川講演会で使用したパワーポイントです。


出典:青山貞一 講演時使用パワーポイント

 以下は宮城県女川町で2015年7月5日に女川体育館で行われた講演会に関連したNHKニュースです。上記のシミュレーション結果は、この講演会で公開されました。
 
女川原発放射性物質の拡散予測を公表
  http://www3.nhk.or.jp/tohoku-news/20150705/3013271.html
  2015年07月05日 07時13分
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, 宮城県の女川原子力発電所の事故に備えて、民間の研究所が予測した放射性物質の拡散のシミュレーションが4日公表され、女川町では、条件によっては、1週間以内に避難が必要とされる放射線量を上回るという内容が示されました。
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 このシミュレーションは、女川町で開かれた講演会で、東京にある、民間の環境総合研究所の青山貞一所長が発表したもので会場には住民などおよそ170人が集まりました。シミュレーションでは、女川原発で、東京電力福島第一原発の事故と同じ規模の放射性物質が放出されたと想定し、地形や気象の情報を元に各地の放射線量を予測しています。
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 それによりますと、およそ7キロ離れた女川町役場では、条件によっては、国の指針で1週間以内に避難が必要とされる放射線量を上回る、毎時156マイクロシーベルトが検出されるということです。
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 また、およそ57キロ離れた仙台市役所では、条件によっては、毎時6.3マイクロシーベルトになると予測されていて、青山氏は「仙台市など避難を受け入れることになっている地域でも高い線量になる可能性はある」と説明しています。
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 震災前に女川町に暮らしていた、70代の男性は、「安心して逃げられるために避難道路の整備が必要だ」と話していました。
















 

つづく