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岡山市北区の火葬場建設問題
D処分場跡地に石綿埋設の事実 

青山貞一 Teiichi Aoyama
掲載月日:2014年6月16日  
独立系メディア E−wave

無断転載禁

◆特集:住民無視で暴走する岡山市北区の火葬場建設問題
@高齢化社会と火葬場建設問題 D処分場跡地に石綿埋設の事実
A火葬と有害化学物質発生 E異常な処分場跡地買収価格
B最終処分場跡地に火葬場建設 F不透明で正当性なき立地選定
C処分場跡地の環境汚染 G産廃業者の許可取り消し処分

 図5(建物配置イメージ図2)をよく見ると、手書きでアスベスト(石綿)が埋め立てられている位置について特記されている。


図5 廃止された安定型処分場跡地

 石綿(アスベスト)は、それを体内に吸い込んだ人が塵肺、肺線維症、肺癌、悪性中皮腫(ちゅうひしゅ)などの健康被害を起こすことで知られている。アスベストは、耐熱性、絶縁性、保温性に優れ、断熱材、絶縁材、ブレーキライニング材などに古くから用いられ、「魔法の鉱物」と重宝されてきた。しかし、高濃度長期間暴露による健康被害リスクが明らかになったことで、アスベスト含有製品の生産や建設作業(アスベストの吹きつけ)に携わっていた従事作業者の健康被害が問題となった。

 日本では、アスベスト含有製品生産や建設作業に携わっていた作業者の健康被害に対する補償が行われてきたが、2005年にアスベスト含有製品を過去に生産していた工場近辺における住民の健康被害が明らかになったことで、医療費等の支給など救済措置のための法律が制定されることになった。また、アスベスト製品がほぼ全廃された現在においても、吹きつけアスベスト、アスベストを含む断熱材などが用いられた建設物から、解体時にアスベストが飛散することが問題とされている。

 そのようなことから建築物の解体又は改修工事において石綿が発生する場合は、特別管理産業廃棄物管理責任者の設置が義務付けられている(法第12条の2第6項)。

 したがって万一、アスベストが安定型最終処分場に埋め立てられているとすれば、法的に問題になるだけでなく、アスベストの埋め立ての調査さらに除去などをすることなく、用地の盛り切り工事を含め土地の造成工事などできなくなる。

 以下は環境省の<廃棄物処理法における廃石綿等の扱い>である。

 廃棄物処理における廃石綿(廃棄物アスベスト)についての扱いが書かれている。産廃業者が以下を遵守していたとは到底思えない。

◆廃棄物処理法における廃石綿等の扱い

1.特別管理産業廃棄物である「廃石綿等」の定義
(令第2条の4第5号ヘ、規則第1条の2第7項)

 廃石綿等とは、廃石綿及び石綿が含まれ、若しくは付着している産業廃棄物のうち、飛散するおそれがあるものとして次に掲げる事業等により発生したものをいう。

[1] 石綿建材除去事業(建築物その他の工作物に用いられる材料であって石綿を吹き付けられ、又は含むものの除去を行う事業をいう。)により生じたもの

 ・吹付け石綿
 ・石綿保温材
 ・けいそう土保温材
 ・パーライト保温材
 ・人の接触、気流及び振動等により石綿が飛散するおそれのある保温材、断熱材及び耐火被覆材
 ・石綿建材除去事業において用いられ、廃棄されたプラスチックシート、防じんマスク、作業衣その他の用具又は器具であって、石綿が付着しているおそれのあるもの

[2]大気汚染防止法に規定する特定粉じん発生施設が設置されている事業場において生じた石綿及び当該事業場において用いられ、廃棄された防じんマスク、集じんフィルターその他の用具又は器具であって、石綿が付着しているおそれのあるもの

[3]輸入されたもの(事業活動に伴って生じたものに限る)

2.処理基準

(1)収集・運搬(令第6条の5第1項第1号)

「運搬車及び運搬容器は、廃棄物が飛散し、及び流出し、並びに悪臭が漏れるおそれのないものであること」等、特別管理産業廃棄物に共通の基準が適用される。

(2)中間処理(令第6条の5第1項第2号ト)

 廃石綿等の処分又は再生の方法は、廃石綿等を溶融設備を用いて石綿が検出されないよう溶融する方法又は無害化処理(法第15条の4の4第1項の認定を受けた者が当該認定に係る処分を行う場合に限る。)としている。

 特別管理産業廃棄物の処理施設において、適正な処分又は再生を行うためにやむを得ないと認められる期間を超えて保管を行ってはならない。

(3)埋立処分基準

[1]溶融又は無害化処理した場合
 通常の産業廃棄物の処分基準が適用される。

埋立処分の基準:
 溶融又は無害化処理(溶融の場合)の方法により生じたばいじんについては、溶融若しくは無害化処理の方法により処理され、又は石綿が飛散しないようセメント固化されていること

海洋投入処分:

禁止
(令第6条第1項第3号ム、H.4.7.3厚生省告示第42号、令第6条第1項第4号参照)
[2]廃石綿等を直接埋立処分する場合
特別管理産業廃棄物としての処分基準が適用される。

埋立処分の基準:

大気中に飛散しないように、あらかじめ、[1]耐水性の材料で二重に梱包するか又は [2]固型化し、産業廃棄物処理施設である最終処分場のうちの一定の場所において、かつ、当該廃石綿等が分散しないように埋立処分する。

海洋投入処分:

禁止
(令第6条の5第1項第3号ル、第4号参照)

3.処理マニュアル

 特別管理産業廃棄物の処理に関連する排出事業者、収集・運搬業者及び処分業者や地方自治体の行政担当者向けに、廃石綿等に関する法的手続や保管、収集・運搬、中間処理、最終処分までの手順及び基礎知識や関係法令等について整理しまとめたものとして次のものがあります。 以下略

 出典:環境省

 現地で入手した膨大な資料を見ていたら、岡山市市民文教委員会 追加資料 No.2として図7の地図があった。出所は岡山県の生活安全課(平成25年12月18日)である。この時期は、岡山市が産廃処分場跡地を買収するため市議会に資料を出し説明していた時期である。

 岡山市が文教委員会で市議らに配布したこの地図を見ると、はっきりと敷地内に「石綿埋設位置」と明記されている。つまり、市役所はアスベストが埋め立てられていることを知りながら宅地並みの高額で処分場跡地を購入したことになる。




図7  岡山市市民文教委員会の追加資料 No.2の主要部分

 下は青山が産廃処分場跡地の正面玄関前から撮影したものである。図7の「石綿埋設位置」が写真の正面、法面の下部に相当する。とりたてて「石綿埋設位置」にフェンスなどがないことが分かる。


写真  産廃処分場跡地の正面玄関前から 「石綿埋設位置」を撮影したもの 
撮影 青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014-6-14


参考(写真1再掲) 処分場跡地の斎場建物予定地前にある正門ゲート
撮影 青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014-6-14

 岡山市が産業廃棄物最終処分場跡地を宅地並みの高額で産廃業者から買ったことそのものが問題であり、先に見たようにどう見ても現状で環境省の「廃止基準」を満たしているかどうかも疑わしいのだが、何と買った土地のど真ん中に猛毒のアスベストが埋設されていたのである。

 岡山の弁護士が私達の研究所を最初に訪れたとき、弁護士は市役所は、敷地のに建物を建ててしまって掘り起こさないから問題ないというような話をしている、とか言っていたようだが、今時、政令指定都市となった役所の幹部がこんな認識しかもっていないこと自体、大問題である。


 これだけでも、耳を疑う話しである。

つづく