厳寒のロシア2大都市短訪 ロシア2大都市の基礎知識 サンクトペテルブルグ 青山貞一 Teiichi Aoyama 池田こみち Komichi Ikeda 掲載月日:2017年5月30日 独立系メディア E-wave Tokyo 無断転載禁 |
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ロシア短訪・総目次に戻る <ロシアの基礎知識> ロシアの歴史 現在のロシアの政治 ロシアの中枢機関 ロシアのメディア ロシアのメディア(詳細) 2大都市の基礎知識(サンクトペテルブルグ) 2大都市の基礎知識(モスクワ) ロシアの国章 サンクトペテルブルグ紋章 モスクワ紋章 ここでは、ロシアの2大都市の基礎知識としてサンクトペテルブルグを紹介します。 ◆ロシアの歴史的首都(サンクトペテルブルグ) ロシアの首都は、以下の表にあるように、歴史的にモスクワとサンクトペテルブルグのいずれかにあり、現在はモスクワとなっています。 ・サンクトペテルブルク サンクトペテルブルグは、時代状況によりペテログラード、レニングラードと名称が変更されています。現在はもともとのサンクトペテルブルグは聖ペテロの町という意味です。英語ではセント・ピーターズブルグ(St. Petersburg)となります。 詳しくは、ペトロ( - 67年)は、新約聖書に登場する人物であり、イエス・キリストに従った使徒の一人です。シモン・ペトロ、ペテロ、ケファともいわれます。聖人の概念をもつ全てのキリスト教諸教派(正教会・東方諸教会・カトリック教会・聖公会・ルーテル教会)において聖人とされ、その記念日(聖名祝日)は6月29日です。カトリック教会においては「使徒の頭」、ロシアのような正教会においてはパウロ(パウェル)と並んで首座使徒の一人と捉えられています。 聖ペテロのイコン。聖カタリナ修道院(正教会)所蔵。同修道院は現存する 初期のイコンを収蔵しており、その中にはこのような6世紀の蝋画法による イコンも含まれています。 Source:Wikimedia Commons found and uploaded by en:User:Ghirlandajo - [1], パブリック・ドメイン, リンクによる
ロシアの首都としては、1914年までレニングラード州の州都としてサンクトペテルブルグがロシア帝国の首都でした。その後、第一次世界大戦開戦以降(1914 - 24年)はペトログラード(Петроград)と名称を変え、ソビエト連邦時代(1924 - 91年)はレニングラード(Ленинград)と呼ばれていました。サンクトペテルブルグは英語圏では上述のように、セントピーターズバーグ(Saint Petersburg)と呼ばれています。 ・モスクワ ソビエト連邦(USSR)が成立した1918年以降、ロシアの首都機能がモスクワに移転され、ソビエト連邦とロシア・ソビエト社会主義共和国(現在のロシア連邦)の首都となっています。これは1991年12月25日にソ連崩壊によりソビエト連邦の継承国として独立ロシア連邦( Российская Федерация)またはロシア (Россия) となった現在もモスクワが首都ととなっています。 なお、モスクワの街の名は、モスクワの中心部を流れるモスクワ川の河畔に位置していること由来しています。英語ではモスクワの街は「Moscow」と表記されますが、モスクワ川は「Moskva」と表記されます。どちらも同じロシア語(Москва)をもとにしています。 「モスクワ」の語源は定かではありませんがいくつかの説はあります。 一つは古代のフィン・ウゴル語派の言語で「暗い」「濁った」を意味するという説があります。また、コミ語の「牛」が語源とする説やさらにモルドヴィン諸語で「熊」を意味する説もあります。
◆2大都市の位置 サンクトペテルブルグ市、モスクワ市ともにロシアのヨーロッパに位置しています。両市は直線距離で約700km離れています。一方、サンクトペテルブルグと東京都の間の地図上の最短距離は、約7600kmとなっています。 出典:Fukuma's Daily Record ◆2大都市の人口規模 ロシアにおけるモスクワ市とサンクトペテルブルグ市は、以下の表にあるようにモスクワが第一位、サンクトペテルブルグが第二位の人口規模にあります。
なお、以下の地図にあるように、ロシアの大都市はモスクワ市とサンクトペテルブルグ市だけでなく、他の大都市も大部分がヨーロッパ側にあります。 出典:旅行のとも、ZenTech ◆2大都市の経済 ・サンクトペテルブルグ サンクトペテルブルクはロシアを代表する港湾工業都市です。造船業を初めとして、電気機器、工作機械・工具類、農業機械、化学工業、製紙、家具、繊維・衣類、食品加工、タバコ、皮革などの工業が発達しています。 サンクトペテルブルクは世界有数の観光都市でもあります。観光名所の多くがユネスコの世界遺産に登録されています。サンクトペテルブルクには歴史地区と関連建造物群があり、膨大な数のユネスコの世界遺産の登録物があります。その意味でサンクトペテルブルグは質の高い観光都市として、毎年、多くの観光客が訪れる観光都市(観光御産業都市)でもあります。さらに多くの大学があり教育都市の側面も持っています。 しかし、ロシアはEUなどのようにビザなし観光国ではなく、年間を通じて非常に寒冷地となっているため、英国、イタリア、フランスのような西欧の都市や東南アジア、北アフリカの観光都市に比べると、まだ観光客の数は少ないと言えます。ただし、近年中国人のサンクトペテルブルグ観光客が急増しています。 ・モスクワ 2014年のモスクワ都市圏の総生産は7944億ドルであり、世界10位の経済規模を有しています。ヨーロッパではロンドン都市圏、パリ都市圏に次いで3位です。 2016年、アメリカの経済誌『フォーブス』が公表した統計によると、10億ドル以上の個人資産をもつ大富豪は60人で、ニューヨーク、香港に次いで3番目に多い都市となっています。 2011年にモスクワ市の予算規模が、ニューヨーク市に次いで第2位となっています。ニューヨーク市の予算は、人口818万人に対し、659億9100万ドル、モスクワ市の予算は、人口1151万人に対し、508億ドルです。 ◆世界遺産から見た2大都市それぞれの特徴 サンクトペテルブルグは、300年以上つづいたロマノフ王朝の中心地としての歴史、文化をもっており、当時はもとより現在でも世界有数の歴史・文化・教育都市といえます。またサンクトペテルブルグは、ヘルシンキ湾など海に面し、イタリアのヴェニスのように多くの運河があります。 とりわけ、エルミタージュ美術館、エカテリーナ美術館(プーシキン市)、パブロフスク宮殿などの美術館、博物館の所有、収蔵品の質と量は世界一と言ってよく、世界有数の観光都市となっています。 サンクトペテルブルグを象徴する歴史文化建築物と風景 Source:Wikimedia Commons AlexTref871, Florstein - Image:Peter & Paul fortress in SPB 03.jpg, Florstein, CC-BY-SA 3.0Image:Saint Isaac's Cathedral in SPB.jpeg, Florstein, CC-BY-SA 4.0Image:Admirality Saint Petersburg SE facade and park fountain.jpg, Florstein, CC-BY-SA 4.0Image:Fontanka river SPB 5.jpg, Florstein, CC-BY-SA 3.0Image:Bronze Horseman.jpg, Florstein, CC-BY-SA 3.0Image:Winter Palace Panorama 2.jpg, Florstein, CC-BY-SA 4.0, CC 表示-継承 4.0, リンクによる これに対し、モスクワは、歴史的にクレムリンを中心として政治・外交・防衛・産業・技術・メディアの中心地と言えます。フォーブス誌による世界に最も影響を与えた人で4年連続トップとなっている現在のウラジミール・プーチン大統領となってからは、その度合いを一段と増しています。モスクワは、海に面せず、他方、蛇行するモスクワ川がクレムリンなど中心部を流れています。 とりわけ、国際的舞台での外交能力、情報発信能力は追随を許さないものがあると思われます。 モスクワを象徴する歴史文化建築物と風景 Source:Wikimedia Commons AlexTref871Valeriy1960, DmitriyGuryanov, Aleks G, ProtoplasmaKid, Sergey Korovkin 84, Alvesgaspar - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, リンクによる 一方、両都市の形成、構築に大きな影響を与えてきたのは、ロマノフ王朝とともにロシア正教会の存在です。さらに、両都市とも、世界的に著名な文豪を生み出してきたこと、それにクラシック音楽、クラシックバレー、オペラなどが現代に息づいていることです。とくにロシア正教会は、ソビエト革命により弾圧、迫害を受けてきましたが、1992年以降、復活しています。 ◆2大都市の気温と降水量 以下に両都市の年間を通じての基本変化と降水量の数位を示します。両都市ともに傾向は似ており、ともに冬季はマイナス10℃近くになり、夏季は23~24℃となります。雨量が多いのは両都市共に9月となっています。 今回は、マイナス17℃からマイナス3℃でした。とくに有風時には体感温度が著しく寒く感じました。 ・サンクトペテルブルグの気温と降水量(比較として東京も示しています) 出典:旅行のとも、ZenTech ・モスクワの気温と降水量(比較として東京も示しています) 出典:旅行のとも、ZenTech ◆ロシア(両都市)の水道と浴室 ロシアの水資源は非常に豊富で、世界でもブラジルに次いで二番目に多い貯水量保有国となっています。またロシアでは水道水が普及しており、モスクワやサンクトペテルブルグ市内の水道水は生活に適する水質の水を供給しています。 一方、水質については硬水であるため、硬水に慣れない日本人が飲むと下痢を起こす可能性があるようです。一般的なホテルには、ミネラルウォーターが初日用にに無償(コンプリメント)で用意されており。また日本同様のペットボトルの水が50-100円程度でスーパーやホテル内で買えます。 上記のようにロシアは水資源に富んでいること、また暖房などで膨大な量の温水を使っていることもあり、浴室のシャワーや風呂タブに使う温水は豊富といえます。 つづく |