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2013年9月1日、愛知県設楽町の総合センター会議室で「自然力を生かし幸せが実感できる持続可能なまちづくり」と題して私が講演し、そのあと、市野和夫さんと対談、同時に参加された町民や下流域などの皆さんとの間で質疑応答を行いました。 現在、日本の自治体が抱える高齢化、過疎化、少子化、限界集落化などの諸問題は、けっしてそれぞれの町や村など個々の自治体に固有の問題ではありません。日本社会全体が抱える問題なのです。 しかし、人口が5000人以下の小規模自治体や大都市から遠く離れた自治体では、これが非常に顕著に現れています。 愛知県設楽町の町長選に出馬を予定されている市野和夫さん(元愛知大学教授、理学博士)は、ご自身の理念、政策として「100年後を想定したまちづくりを」とおっしゃっています。 過疎化する小規模な自治体としての設楽町が、長期的に持続可能なまちづくりを進めるために、何をどう考慮すべきかが問われます。 長期的に持続可能なまちづくりを進めるうえで、おそらく一番大切なことは過去の量的な成長を重視する成長社会から質的な発展を重視する成熟社会に価値観の転換を図ることだと思います。 40年近く前、世界中の100人の有識者メンバー(官僚など行政以外、政治家以外)で構成された非営利団体ローマクラブ(The Club of Rome)は、過去の量的な成長を重視する成長社会から質的な発展を重視する成熟社会へと移行することの重要性を「成長の限界」(人類の危機リポート)の中で強調しています。 資源、エネルギーをムダにジャブジャブ使うような経済社会は、必ず破綻すると言っています。またそのような経済社会は、環境汚染で破綻(システム・ダウン)すると言っています。 今の日本は、大量に資源を輸入し、大量生産し、大量に廃棄物を出す経済社会、ハーマン・デーリー氏が言うところの「食らい抜け経済社会」(Throughput Economy)であると言っています。 いつまでも経済成長ばかりを追い求め、右肩上がりの成長至上主義の経済社会から、成熟した質を重視する経済社会への転換です。 では、具体的にどのような経済社会を目指すべきかですが、ローマクラブや世界の見識ある経済学者らは、「食らい抜け経済社会」(Throughput Economy)から「定常状態経済」(Steady State Economy)に移行すべきであると言っています。 もちろんこれは、日本全体について言えることですが、実は地方の自治体も例外ではありません。いつまでも、大企業の工場誘致に奔走したり、巨大な土建公共事業に依存するまちづくりは、最終的に社会、地域経済のためにならないのです。 市野和夫さんは、成熟社会=定常状態経済の社会では、無駄な消費はなくなり、それほど大きな所得でなくても、人間の基本的生活を営むことは十分可能であると述べています。 成熟社会を想定した定常状態の経済社会イメージ つづく |