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今後、一世紀を見据えたまちづくりで重要な政策には、いわゆる循環型経済社会もあります。 あまり知られていないようですが、日本は世界に類例のないゴミ焼却大国です。何でもかんでも燃やして埋める、これが日本のゴミ政策の基本です。 下のグラフを見ると、日本各地で当たり前となっているこの燃やして埋めるゴミ政策の実態がよく分かります。グラフは家庭から出る一般廃棄物を燃やす焼却炉の数を主要先進国で比較したものです。 データは古いのですが、今では小さい焼却炉を集めて大きな焼却炉や溶融炉をつくり、そこで燃やしているので、焼却炉(平成23年度末現在1,211施設)と減っていますが、依然として先進国のなかでは、ダントツに多いのです。 当然、ゴミを燃やせば、ダイオキシンはじめ重金属など、さまざまな有害化学物質が非意図的につくられ、排出されて、大気、土壌、水を汚染します。 下の表は先進諸国における環境保全力ランキングです。日本は年度により異なりますが、18位、22位、62位、30位と非常に低ランクに位置しています。 その原因、理由はたくさんありますが、異常なまでのゴミの焼却、ひとことで言えばゴミ焼却主義にあると思われます。 世界にもまれに見る日本のゴミ焼却主義を、今後、脱焼却、脱埋め立てに向かわせるためにはどうすればよいのでしょうか? 今後、設楽町を循環型の経済社会とするにはどうしたらよいかが問われます。 言うまでもなくゴミは分別すれば資源となります。もちろん、それ以前に生活や生産の現場でゴミを出さないことが大切となります。 日本の徳島県上勝町では、市民参加によって何とゴミを34種類に分別しています。こうすることで、ゴミは資源となります。ビン、カンはじめ分別されたゴミは資源となり、町の内外で再利用が可能となります。 分別後の資源の里親をさがせば、有価物、資源として売ることもできます! 先進国の都市で最もこの問題でがんばっているのは、カナダのノバスコシア州です。そこでは首都のハリファックスだけでなく、農村、漁村を含めあらゆるまちで、ゴミを出さない、ゴミを資源化する政策、施策が進み、現在、家庭から出るゴミの焼却炉はゼロとなっています。 このような資源循環型のまちづくりは「ゼロウエイスト政策」と呼ばれており、サンフランシスコ、ニュージーランド、オーストラリアなどで試行されています! 実は日本でも徳島県の上勝町において「ゼロウエイスト政策」が行われ大きな成果をあげています。 下の図はノバスコシア州のゴミ処理の流れを示しています。見て分かるようにどこにも焼却炉はありません! 上勝町やノバスコシアでは、ゴミは出来るだけ出さないことを小学生から教えています。 家庭から出るゴミ(一般廃棄物)で、一番多いのは食べ残しなどの有機物です。これらは堆肥化されています。農村部では裏庭で堆肥化します。これをバックヤード・コンポスティング(裏庭堆肥化)と言っています。 ノバスコシア州(人口約85万人)には州内に16カ所の堆肥化施設があり、有機系廃棄物(家庭の厨芥や庭の剪定ごみなど)の堆肥化を進めています。堆肥化施設は民間企業が運営し、堆肥を砂と混ぜるなどして、土木工事現場などに活用され、100%が消費されます。 下はノバスコシア州のハリファックスの日量50〜60トン処理している大型堆肥化施設です。この堆肥化施設の外ではほとんど臭いがしません。 ハリファックス市の生ごみ堆肥化施設 撮影:青山貞一、 撮影:青山貞一、Nikon CoolPix 下はハリファックスの堆肥化センターの事務室で質問する環境総合研究所の池田こみちさん、右側はゴミ弁連の広田次男弁護士です。 堆肥化施設で質問する池田さん 撮影:青山貞一 撮影:青山貞一、Nikon CoolPix 下の写真は、出来上がった堆肥の説明を受けるゴミ弁連らメンバーです。 出来上がった堆肥の説明を受けるゴミ弁連らメンバー ハリファックス市にて 撮影:青山貞一、Nikon CoolPix 比較的標高の高い設楽町では、間伐材などの木質系チップなどを加えることにより発酵を管理することもできるので、安定した堆肥化が可能となります。また、人口密度が低いことにより施設の立地も容易だと思われます。 一方、都市部では20以上の堆肥化センターでコンポスト化しています。またビン、カン、プラスチックボトルなどの容器類にはデポジットをかけることで85%を超える高い回収率を維持することができ、税金に頼らずに資源の有効利用が進んでいます。 森林、農地が圧倒的に多い設楽町では、「ゼロウエイスト政策」がなじみます。 食べ残しなど有機物を堆肥化したり、消化槽などによってガス化するのです。これにより焼却炉や溶融炉が不要となります。今まで日本ではゴミ処理に膨大な税金、公金を投入してきましたが、「ゼロウエイスト政策」は、環境保全や資源循環だけでなく、税金のムダ使いを減らします。 実際、カナダのノバスコシア州や首都ハリファックスでは、日本のゴミ処理施設建設費や日常的なゴミ処理関連費が日本の1/3以下となっている現実があります。 市野さんは、青山らと一緒にカナダ・ノバスコシア州・ハリファックス市を一週間現地視察し「ゼロウエイスト政策」の現場をみてまわっています。州政府、市町村の担当者はじめ市民、NPO、企業などの人々とも、議論しています。 カナダ・ノバスコシア州へゼロ上イスト現地調査の写真 市野さんは後列左から3人目 後列右から3人目が櫻井勝延さん(現在、南相馬市長) 青山は前列右から4人目です。 以上は家庭から出る一般廃棄物についての「ゼロウエイスト政策」ですが、当然、産業廃棄物についても「ゼロウエイスト政策」を行うべきです。 たとえば、森林が90%を占める設楽町なら間伐材の有効利用が考えられます。バイオマス利用、チップ化しストーブで利用することも可能です。森林組合と話し合い、間伐材の有効利用を行うことは、設楽町ならではの重要な政策、施策となるでしょう。 また家具、家電など、粗大ゴミについては、廃校などを活用した町民マーケットでリペアー、リユース、リサイクルすれば資源の有効利用が行えます。 今や東京では大井競馬場の駐車場を活用したフリーマーケットが毎週開催され、大いににぎわっています。
以下は、ゼロウエイスト政策の先進地、カナダのノバスコシア州・ハリファックス市の廃棄物資源管理に関連した論文です。 <参考> ◆青山貞一・池田こみち:カナダ・ノバスコシア州の廃棄物資源管理、月刊廃棄物 ◆青山貞一:脱焼却、脱埋立への挑戦〜ノバスコシア州の循環型社会実験〜前編、月刊廃棄物 ◆青山貞一:脱焼却、脱埋立への挑戦〜ノバスコシア州の循環型社会実験〜後編、月刊廃棄物 ◆青山貞一・池田こみち:「脱焼却」のための具体的戦略(生ゴミの堆肥化)〜カナダ・ノバスコシア州の具体事例にみる現状と課題〜 環境行政改革フォーラム研究発表会(2003年10月11日〜12日、早稲田大学理工学部) さて、環境問題には、自然との共生、循環型まちづくり以外に、大きな問題があります。それは原発事故による放射性物質の影響です。 3.11以降のまちづくりには、原発事故の影響を配慮しなければなりません。もちろん、原発はないにこしたことがありませんが、それに備えるまちづくりを進めておくことた大切です。事実、現在の政権は、全国各地にある原発を再稼働させると公言しています。 周知のように、世界の1/10の地震は日本列島とその周辺で起きています。 福島原発事故に類する事故の影響範囲から見た設楽町について概略シミュレーションをもとにコメントしました。浜岡原発から設楽町までの距離は70kmです。 この距離は原子力防災計画策定自治体のUPZ(30km)よりもはるかに遠く、また下図にある米国原子力規制委員会の原発過酷事故時に避難すべき距離の80kmにほぼ相当しています。 このように、設楽町からもっとも近い浜岡原発が再稼働し、万一事故を起こした場合でも甚大な放射線、放射能汚染の影響、被害を受ける可能性は低いと思われます。もちろん、原発を再稼働させないことが最も大切ですが。 米国NRCの80km退避勧告を福島第一原発事故に当てはめた場合 下は、米国NRCの退避勧告80kmを浜岡原発に当てはめた場合です。80kmの線が設楽町に引っかかっています。 つづく |