エントランスへはここをクリック   

北朝鮮を嗤えない
やらせタウンミーティング(2)
〜朝日新聞の小会社が業務受注!〜

青山貞一

2006年11月24日


無断転載禁

 やらせタウンミーティングだが、福山哲郎参議院議員は自身のメルマガで次のように述べている。

テツロー日記 2006年11月24日 第294号
「久々の質問、紛糾続く・・・」

 今日は「教育基本法に関する特別委員会」で質問に立った。

 .......前略

もう一つは、例のタウンミーティングの問題である。やらせ問題、謝礼、文科省の参加者動員要請・・・、次々と明るみに出ている。

調査も進まず、資料も出さない。まさに隠蔽状態。

審議は紛糾し、何度もストップ。

......後略

 この政府の教育基本法改正に関連するタウンミーティングは、思わぬところで波紋を広げている。

 しかし、話が話だけに、大メディアでこれを記事にしているところは今のところない。

 何かと言えば、日刊ゲンダイ(2006年11月25日号)は、『朝日』の報道、なぜ小さいと題し、日本を代表する大メディア、朝日新聞グループがメディアとして深刻な機能不全に陥っている様子を報じている。

 まずは以下の記事をご覧頂きたい。

 「大臣お出迎えでエレベーターの開閉ボタンを押しているだけで日当1万5000円」、「内閣府との打ち合わせで42万8000円」。

 広告代理店に丸投げ企画だった「タウンミーティング」のベラボーな経費には呆れるばかり。

 会場から日当5000円のやらせ質問で教育基本法改正が練り上げられていたのだからデタラメもいいところだ。

 国会で明らかにされたこの経費については、きのう(2006年11月23日)の各紙も報じている。毎日は一面で一覧表付き、読売は3段の見出しで「閣僚送迎係に4万円」と言った具合だ。

 ところが朝日だけは、ベタ記事扱い。このテの不正話には敏感なはずの朝日にしては扱いが小さい。そこでこんな味方が出ている。

 「丸投げされた広告代理店は2社ですが、そのちの1社は朝日の子会社なのです。自分の身内がやらせを仕込んでいたとなると、おおっぴらには書けないでしょうね」(事情通)

 教育改革をテーマにしたタウンミーティングは8回開かれているが、このうち6回は朝日広告社の仕切りだ。その「朝日広告社」の会社説明にはこうある。

 <朝日広告社は、世界有数のメディア・朝日新聞グループのソリューション・サービスカンパニーとして確固たる地域確立、国内外に約200社のグループ企業・団体を持つ朝日新聞の情報ネットワークを生かして、効果的なリサーチ&メディアサービスを提供しています。朝日新聞グループならではの生活者の意識や視点をしっかりと吸い上げた私たちの確かな知見と洞察力は、大きな力を発揮しています>

 朝日はこの問題が国会で取り上げられる前から、子会社への丸投げとベラボーな経費の実態を知っていたはずだが、さすがに身内のことは書けない.....


 ちょっと信じられない話だが、どうも事実のようだ。

 朝日新聞は、ブッシュ大統領が捏造した「イラクのやらせ大量破壊兵器保持」をもとに、こともあろうか社説でイラク戦争やむなしの論調を展開、まともな識者の大顰蹙をかった。これについては、私は独立系メディアで何度となく書いた。

 今回は、こともあろうか国家百年の計に位置づけられる教育基本法の改悪という一大事に、子会社が「やらせタウンミーティング」の事務局を業務で受注したわけだ。やらせなどしたことの内容もさることながら、税金の無駄遣いという観点からもトンデモナイことになる。

 もちろん、今回はたまたま朝日広告社が受注したのであって、次回からは他の大メディア関連の広告代理店や調査会社、シンクタンクとならない保証はない。

 私たち独立系メディアは、欧米のメディアが原発、核廃棄物リサイクル等の事故などを大々的に記事にしているとき、なぜか日本の大メディアがまったくこれに触れないことに気づき、何度となく書いてきた。 以下はその一部。

なぜか日本のメディアで一切報じられないスウェーデンの原発事故!
スウェーデン原発3基、2週間以上停止へ! Bloomberg com
スウェーデンでまた原発事故 <原文速報1> <原文速報2>
なぜか日本のメディアで一切報じられないスウェーデンの原発事故!
スウェーデンの原発でメルトダウン寸前の事故 GP Int'(グリーンピース国際)
青山貞一:スウェーデン原発事故と日本のメディア・NGO
青山貞一:なぜか日本のメディアが報じない原発事故
スウェーデンで原発事故(ニューヨークタイムズ他20紙)
スウェーデンで原発事故が発生した。ニューヨークタイムズ他、世界の新聞各紙が報道しているがなぜか、日本の新聞等は今のところ一切報じていない!
スウェーデン原発稼働停止(英国、BBC)
■英国セラフィールド核廃棄物再処理施設から漏れ出る放射能汚染
英国セラフィールド核廃棄物再処理工場、再開は来年以降か
青山貞一:(1)河野太郎議員の問題提起
青山貞一:(2)その位置と施設の概要
青山貞一:(3)プルトニウム30kgを紛失
青山貞一:(4)莫大な放射性物質の漏洩
青山貞一:(5)環境汚染の実態
青山貞一:(6)今回のコラム執筆で分かったこと
青山貞一:どこまで続く日本原電の情報隠蔽体質〜英セラフィールド再処理施設事件〜
  
 上記については、河野太郎衆議院議員が繰り返し述べているように、書くと電気事業者や原子力産業会議系の広告がもらえなくなるからと言われている。たとえば、セラフィールドでのプルトニウム漏洩事故では、

 日本からの再処理委託分はどうなるのか等、我が国にも影響が大きい事故である。特に事故処理に5千億円、一説では一兆円かかるとのこと。六ヶ所村での同様の事故があればこのくらいの費用がかかるわけだ。なぜ、日本のマスコミは奇妙に黙っているのか?

 NGOによれば、イギリス政府に先駆けてアイルランド政府が事故の詳細を発表したという説もある。漏洩発見から発表までの経緯は未だ不明だ。

 電力会社の広告宣伝費がそれだけマスコミにとっておいしいということは、電力料金がその分高い訳だ。もっと競争をエネルギー業界に導入しなければならないのではないか。


 最近では、トヨタ自動車が国内外で人権問題に通ずる不祥事を次々に起こしていることを知人のフリージャーナリスト横田一氏らが体を張って書いている(トヨタの正体)。しかし、日本のメディアはまったく事実を書いていない。容易に想定されるのは、広告収入だ。これはJTについても当てはまる。日本ほどたばこの宣伝が白昼堂々とテレビで行われている先進国はない。

 日本は依然として先進国でもっとも男性の喫煙率が高く、さらに女性の喫煙率も上昇している。WHOなど国際機関も日本に対し禁煙率の目標を設定し、喫煙を減少させるように何度も勧告している。にもかかわらず、日本の政府はもとより、大メディアはJTのたばこの広告、宣伝をすることはあってもその危険説についてまともに報じたことはない。

 せいぜいTBSのアナウンサーをしている私の知人がたばこのリスクについて米国などでの徹底した取材をもとに、すばらしい番組を作ったことがあるが、それすでに10年以上前のことだ。

 ところで、私の手元に興味深いメールが一昨日届いた。日本を代表するシンクタンクが内閣府から受注した。内容は真面目なテーマのシンポジウム開催などだが、「やらせタウン・ミーティング」発覚の影響で、動員がかけられず、人集めに苦労していると言うのだ。そもそも、この種の業務をなぜ丸投げ発注するのか大いに疑問だが、御用学者を寄せ集めたつまらない、結論がみえるシンポジウムに人が集まらないのは当然だ。

 と言うことは、何もタウンミーティングだけでなく、さまざまな政府主催イベントでは、いずれも自治体や関係業界などからの動員でなりたっており、会場での質問の多くが、まさに「やらせ」であることを証明したようなものである。

 やはり、日本の総合的な民度は、アーンシュタインの「参加の梯子」の1.、2.、よくて4.と言うところか。

 これは何も政府ばかりが問題なのではなく、それを利害・利権から許容してきたメディア、さらには日本国民の民度の低さの反映と言ってもよいだろう。
 
■シェリー・アーンシュタインによる「参加の梯子」
8 市民による自主管理 Citizen Control 市民権利としての参加・
市民権力の段階

Degrees of
Citizen Power
   ↑
7 部分的な権限委譲 Delegated Power
   ↑
6 官民による共同作業 Partnership
   ↑
5 形式的な参加機会の増加 Placation 形式参加の段階
Degrees of
Tokenism  
   
4 形式的な意見聴取 Consultation
   ↑
3 一方的な情報提供 Informing
   ↑
2 不満をそらす操作 Therapy 非参加・実質的な
市民無視

Nonparticipation
   
1 情報操作による世論誘導 Manipulation
出典:シェリー・アーンシュタイン(米国の社会学者)

 それにしても、今回の一件をみるにつけ、朝日新聞社は情報産業、広告産業ではあるかも知れないが、国民に対し何らインテリジェンスを提供しているとは思えない。そういえば、朝日新聞社はサラ金の武富士との間での信じられない不祥事もしでかした。

 政府も政府だが、朝日新聞グループが「情報操作による世論誘導」の手先、先兵となっていると、国民に思われても仕方ないのではないか。世も末、断末魔である。

 朝日新聞の幹部は一体どういう面下げて読者、国民、世間に言い訳するのだろうか? 大いに見物だ。