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「災害廃棄物安全評価検討会」
会議録音開示の答申が
指摘した環境省の不透明な体質

環境行政改革フォーラム 事務局長 鷹取敦

掲載月日:2013年1月28日
 独立系メディア E−wave 無断転載禁


 情報公開・個人情報保護審査会より「災害廃棄物安全評価検討会」の会議録音データを「開示すべき」との答申書が届いた。録音していなかった回以外すべての録音データを開示せよとの答申で、その中で環境省の対応を厳しく批判するものである。

 この答申に至るまでの経緯は次のとおりである。

 東日本大震災に伴い発生した「がれき」の処理の安全性について検討する環境省の検討会「災害廃棄物安全評価検討会」が非公開・不透明な中で開催されていたため、環境行政改革フォーラム事務局では、2011年7月19日から議事録の情報開示請求を行ってきた。
◆環境省の信頼性損なう正当性のない意思決定手続き
〜放射性廃棄物の処理方針の決定〜

http://eritokyo.jp/independent/eforum-col101.htm

◆環境省への議事録開示請求の経過報告
http://eritokyo.jp/independent/eforum-col104.htm
 詳しい経緯は本コラムで報告してきた。かいつまんでいえば、議事録を請求したところ4回までは開示したものの、その後の議事録作成をやめ、会議録音データを請求すればそれは不開示とし、その後の録音をやめるというように環境省は徹底して不透明な方へ進んできた。
◆環境省の不透明な政策決定過程〜「災害廃棄物安全評価検討委員会」
議事録問題〜

http://eritokyo.jp/independent/eforum-col103.htm

◆開示されない「災害廃棄物安全評価検討委員会」の会議録音データ
http://eritokyo.jp/independent/eforum-col105.htm

◆災害廃棄物広域処理に関する国の不透明な検討と地方自治体の不信
http://eritokyo.jp/independent/eforum-col106.htm

◆議事録作成をやめた「災害廃棄物安全評価検討会」
http://eritokyo.jp/independent/eforum-col107.htm
 2012年3月に質問主意書と参議院予算委員会での質問では、開示請求に応じてしぶしぶ(60日間待たせて)開示したことをもって、細野大臣に「4回まで議事録を公開」してきたと答弁させているが、この時点で公開されていたのは、情報公開請求で開示された議事録を環境行政改革フォーラムが掲載したものだけだった。環境省は大臣に虚偽答弁をさせていたのである。
◆細野環境大臣が災害廃棄物安全評価検討会
議事録問題で虚偽の答弁−参議院予算委員会−

http://eritokyo.jp/independent/eforum-col109.htm

◆災害廃棄物安全評価検討委員会(第1〜4回)議事録−情報開示−
http://eritokyo.jp/independent/eforum-col102.htm
 そして、環境省は、何の説明もなく4回までの議事録を掲載し、筆者らがそれを本コラムで指摘したところ、経緯の説明はあいかわらず無いが、議事録掲載日だけは載せるようになった。
◆災害廃棄物安全評価検討会議事録
環境省がこっそり4回分を掲載

http://eritokyo.jp/independent/eforum-col110.htm
 大臣に虚偽答弁をさせた後、ようやく会議は公開となり、その後の議事録は環境省のサイトに掲載されるようになったものの、ただし録音データ不存在とされている回(第8〜12回)の議事録の掲載はなく、存在している回の会議録音データは不開示のままだった。
◆環境省の不開示理由書と筆者の意見書
情報公開・個人情報保護審査会より

http://eritokyo.jp/independent/eforum-col108.htm
 録音データが存在しない、ということは、貴重な会議の正確な記録を残していない、ということである。開示された回の議事録を見ると、委員にさえ説明せずに事務局(環境省)が勝手に議事録作成をやめていたようである。
◆災害廃棄物安全評価検討会(第5〜7回)議事録は掲載されたものの
http://eritokyo.jp/independent/eforum-col111.htm
 不開示部分について、2011年10月以降複数回にわたり、内閣府の情報公開・個人情報保護審査会に異議申し立てをしていたが、2012年12月中旬にようやく審査会から答申書が、この答申を受けてさらに1ヶ月後の2013年1月中旬に環境省の決定書が送付された。

 <情報公開・個人情報保護審査会の答申書(PDF)>

 情報公開・個人情報保護審査会の答申では、第8回〜11回の議事録を作成しなかった点について「看過しがたい問題がある」とP.12からP.15にわたり厳しく批判している。開示請求に対応して作成をやめたのではないかとの疑念を指摘した上で、議事内容を保存することへの重要性の認識が不足していたこと、公開して政府として説明責任を果たすべきこと等、当然の指摘をしている。

 また録音データを不開示とした点についても、審査会で実際に録音内容を確認した上で、「委員による率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」という環境省の主張はあたらないと指摘し「開示すべき」と結論づけている。

 このような不透明な体質の環境省が、原発事故後汚染された廃棄物処理や除染等の対応を行い、原子力規制庁を置いて原子力規制行政を行っていることの問題は、単に会議の公開や議事録にとどまらない本質的な問題ではないだろうか。

 ICRP(国際放射線防護委員会)はその勧告(Pub.111)で、徹底的な透明性、意志決定への住民(当事者)の関与、正確な記録が重要であると述べているが、環境省がやってきたことはこれと正反対のことである。日本政府は議事録の問題にとどまらず、勧告(Pub.111)を正しくふまえた対応を行っていない。それどころか文科省の放射線審議会では基礎となる勧告(Pub.103)の中間報告を2011年1月28日に出して以来まともに議論が進まないまま、放射線審議会は原子力規制庁(つまり環境省の下)に移管されてしまったのである。


 異議申し立てを経て開示が決定されたものの、2011年7月の最初の請求から1年半が経過してしまっており、議事録・会議録音の検討が重要だったタイミングはとっくに過ぎてしまっている。それどころかこの検討会が検討の対象としている災害がれきの広域処理は、必要性を検証するデータの開示が一切ないまま、次々と前倒しで終了されているありさまである。

◆必要なかった災害廃棄物の広域処理〜その本質的課題を検証する〜
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-col8579..html

 情報開示請求から開示されるまで(本件はまだ入手に至っていない)、1年半以上かかるようでは、情報公開手続きが、情報をしばらく隠しておくための手続きになってしまっていると言わざるをえない。

 そもそも会議は公開、議事録や録音・録画は請求されなくてもウェブに掲載すること、そして請求された後の手続きを迅速に行うことが必要である。