|
●はじめに−事前交渉 2012年10月9日、環境研究者(環境総合研究所、青山貞一、池田こみち、鷹取敦ら4名)、原発研究者(原子力資料情報室、澤井、上澤2名)、弁護士(東京第二弁護士会花澤弁護士)、宮城県民(女川原発関連NPO市民3名)、合計10名が宮城県女川にある東北電力女川原子力発電所を現地視察し、東北電力の幹部らとの議論を敢行してきた。 事の起こりは、青山貞一がこの夏、福島県南相馬市による再生可能エネルギー推進ビジョン策定有識者会議に友人の櫻井勝延市長からの依頼で委員として出席したことにある。 南相馬市の会議でいつも青山の隣の席に座られていた東北電力の小野所長に、ぜひ一度、女川の現地を訪問し、現場を見ながら議論したいとお願いしたところ快く対応してくれた。 しかも、青山からは脱原発訴訟を行っている各地の弁護士を連れて行き、忌憚のない議論、質疑をしたいと小野所長に伝えた。小野所長は、「いいですよ」と快諾されたのである。 まずもって、超ご多用中のなか、私達の無理な依頼に正面から対応いただいた東北電力の関係者に感謝したい。 ●期日の決定と事前準備 2012年9月25日、第三回目の南相馬の有識者会議が開催されたとき、青山は10月のカレンダーをわたし、東北電力側の都合で日程を決め、返事を頂きたいと小野所長に伝えた。 青山、池田がニセコ町の原子力防災関連の講演と計画策定会議参加後、東京に帰ってきた10月3日の直前に、東北電力からメールで10月9日(火)の午後であれば対応可能と連絡が来ていた。 当初、参加を予定していた弁護士らに連絡したところ、いずれもまたとない機会だが、公判が入っているので断念という連絡がきた。 そこで、環境や原発、原子力に関連するメーリングリストで参加者を再募集したところ、上述のように原子力資料情報室の澤井さんや上澤さんを含め10名が集まった。 訪問期日が決まった後、参加者リスト(氏名、呼び名、住所、生年月日、性別など)の提示を求められた。 東北電力からはさらに、女川原発入構、入域者にリストにある参加者に対し、本人確認のために厳格なチェックがあるので、パスポート、運転免許、あるいは健康保険証を(この場合は住民票をあわせて)用意して欲しいとの連絡が入った。 確かに航空機に搭乗する際も、名前のアルファベット読みが一字でも間違っていると搭乗できないこともある。原発に素性が知れない者が勝手に入構することは、現下の情勢からして許されないのだろうか。 ●女川原発行きの当日 2012年10月9日当日、東京から参加する者は東北新幹線の「はやて」や「やまびこ」などで仙台駅まで行った。仙台駅で10名中9名が集まり、宮城県民の参加者が手配してくれたマイクロバスで石巻経由で女川に向かうことになった。 仙台から女川原発までは直線距離はそれほどでもないが、仙台市を出るまでの渋滞、それに牡鹿半島に入ってからは曲がりくねった途が多く、最低2時間は見ておかないといけない。 昨年、石巻、女川から南相馬まで放射線量を測定していることもあり、青山、鷹取は空間放射線量率測定のための携帯型線量計を持参した。 天気は花曇りである。 <参考1> 以下は2011年9月17日〜19日に行った宮城県女川原発付近から福島県南相馬市までの放射線量の測定結果である。グラフでは市町村別の平均値を示している。実際には一市町村あたり5〜10箇所を車載のGPS付き線量計で自動測定している。 測定結果見ると、福島第一原発に近い南相馬市が平均値で0.33μSv/h、仙台市が0.06〜0.07μSv/h、石巻市が0.08μSv/hそして女川原発付近が0.12μSv/hであった。2012年9月、委員会で南相馬市に行ったとき市役所前にある放射線測定装置は0.369μSv/hを示していたので1年経ってもほとんど線量は変わっていないことになる。 |
<参考2> 以下は、上記2011年9月17日〜19日の測定調査で仙台に行く際、新幹線の窓際に測定器を設置し測定した空間放射線量の測定値である。測定ルートはいわゆる福島県の中通りである。 ※横軸は距離に比例していない 出典:環境総合研究所(東京都品川区) 図 東北新幹線軌道図 ●女川原発の位置 以下は、女川原発の位置図である。宮城県北東部、牡鹿半島の北側にある。 東北電力女川原子力発電所の位置 出典:女川原子力発電所の概要より 下は女川原発の位置である。 牡鹿半島北部における女川原発立地域図 出典:女川原子力発電所の概要より ●グーグルアースで見た女川原子力発電所 下はグーグルアースで見た女川原子力発電所である。上の写真は、発電所の「所」の字の下側で撮影したものである。 グーグルアースで見た女川原子力発電所1 グーグルアースで見た女川原子力発電所2 グーグルアースで見た女川原子力発電所3 ●仙台から石巻、女川原発まで 私達は仙台駅前を11:30頃出発し、途中、高速道路を使い石巻に向かった。3.11の被災地のなかでも最も被害が大きかった石巻市や女川町を通過し、女川原発に向かった。 青山、池田、鷹取は昨年夏に、石巻、女川の現地調査をしているが、その時に比べるとがれきの多くが処理されており、市街地の大部分は整序されていた。しかし、実際の復旧、復興のまちづくりは、あまり進んでいる様子はなかった。 たまたまマイクロバスの運転手さんが石巻在住の方だったので、道すがらいろいろ復旧、復興について話を聞くことが出来た。上述のようにがれきの処理は進んでいるが、復旧、復興のまちづくりは3.11から1年半経ってもほとんど進んでいない現実があった。 マイクロバスの車窓から見た石巻の港 撮影:青山貞一 津波が遡上したあと 牡鹿半島 撮影:青山貞一 女川原発は牡鹿半島の北側の女川町に位置している。 仙台駅からマイクロバスで午前11時30分過ぎに出発し、途中高速道路を使い石巻市まで行き、その後、石巻市内は一般道を使い女川町に入った。そして女川原発PRセンターに午後1時45分に到着した。東北電力には、遅くても13:45に到着すると事前に連絡を入れ、当日も担当者に携帯電話で到着前に連絡を入れた。 下は、東北電力の女川原発PRセンターである。 女川原発PRセンター 撮影:青山貞一 女川原発PRセンター玄関にて 撮影:鷹取敦 女川原発PRセンターにて 撮影:鷹取敦 ●東北電力のバスに乗り換え入構 東北電力側が用意したバスに全員移動 撮影:鷹取敦 そこから東北電力が用意してくれたバスに乗り換え、東北電力の小野所長らと一緒に入構した。原発敷地への入構に際しては、ゲートでセキュリティチェックの担当者がバスに乗り込み、東北電力幹部、視察対応責任者を含め私達10名について厳格な本人確認が行われた。 何と、ゲート近くで子鹿にご対面。これにはびっくりしたが、女川原発がある半島は牡鹿半島という地名があるように、女川原発周辺にはたくさん鹿が生息しているとのことであった。実は、帰りもゲート付近で鹿に会った。 PRセンターから原子力発電所に向かう途中のバス内部 注意事項の説明を受ける 撮影:鷹取敦 つづく |