◆3.11直後の南相馬市浜通り海浜部の被災地視察
下の津波被災状況図で南相馬地区を見ると30kmの橙色の破線が海にぶつかる周辺である。私たちは最初に南相馬市役所を訪問し、桜井勝延市長(当時)と会い、この間の状況についてインタビューを行った。
以下は3.11後による南相馬市の津波被災状況図である。赤色部分が海水が浸水した部分(主に農地)である。
南相馬市の東日本大震災の津波による被災状況図
撮影:青山貞一
その後、市役所を離れ、私たちは南相馬市浜通りの被災現場を北(相馬市・南相馬市境界)から南(浪江町・南相馬市境界)まで現地視察し、浜通りの要所で放射線を測定するとともに、被災住民らと議論やインタビューを行った。
被災地をビデオで撮影する青山貞一
撮影:鷹取敦
被災地には前日(6月18日土)まで2000人規模の自衛隊が駐留しながら瓦礫の除去、分別、要所への移動、さらに運び出しなどに全力をあげ、当日はいわき市など南部地区に比べると信じられないほど南相馬市浜通りの被災地は綺麗に瓦礫、建設廃材などが整理されていた。まさに災害救助隊としての自衛隊の面目躍如たるものを実感した。
実はこれも櫻井市長が自衛隊に早期段階から積極的に災害救助の要請、櫻井さんの言葉でいうところの強いメッセージを出し、自衛隊がそれに正面から対応したからである。
私たちがこの日(6月19日)、二本松から南相馬市に向かう、すなわち南相馬市から二本松や福島経由で東北道に向かう途中、多くの災害救助の自衛隊のトラックやジープなどに出会ったが、それらの車両は瓦礫撤去を終え南相馬から駐屯地に引き上げる途中であった。
南相馬市海浜部の津波被災地、半壊した住宅
撮影:青山貞一
南相馬市海浜部の津波被災地、防波堤が破壊されている
撮影:青山貞一
浜通りの被災地には、土台部分だけ残した膨大な数の家屋が散在していた。
南相馬市海浜部の津波被災地、土台部分だけ残した家屋
撮影:青山貞一
南相馬市海浜部の津波被災地
動画撮影:青山貞一
被災地をビデオで撮影する青山貞一
撮影:鷹取敦
動画撮影:青山貞一(東京都市大学)
自衛隊が瓦礫と建設廃材を撤去した後の南相馬市浜通りの風景。
南相馬市海浜部の津波被災地
撮影:青山貞一
南相馬市海浜部の津波被災地
動画撮影:青山貞一
さらに私たちは南相馬市浜通りの海岸線を県道74号線で北上し、相馬市との市境まで進んでみた。県道74号線の両側には水田が広がり、農家が点在していたが、すべて津波で流され、荒地と化していた。
しかし、2000人規模の自衛隊がガレキの処理を既に済ませており、きれいに片付いていた。南相馬市では41k㎡が津波で浸水しており、その大部分が農地であったことが見て取れる。そこは南相馬市鹿島区地区である。
市境の北端部はやや高台となっており、海岸線に出てみると、テトラポットは激しく破損され、堤防も道路もずたずたの状態だった。頻繁にパトカーが巡回し、見回りをしている様子だった。
ここは南海老という地区で、北端の高台には70世帯が暮らしていたが、すべて流されてしまった。亡くなったのは高齢者というより、若い人が多かった。地震直後に車で自宅の様子を見に戻った直後、津波に襲われ、車ごと流された人が多い。
この地区では20名以上が亡くなっており、まだ3名近く行方不明だ。津波直後に集落の高台にある墓地に逃げた人によると、引き波で、一旦海の底が見えるほど沖のテトラポットの防波堤まで水が引き、その後、高台の松の木のてっぺんを越える大津波が襲った。車で地区の運動場(かなり高台)に逃げた人はそこで津波をもろに受け、車ごと裏のため池に流されそこで大勢が亡くなった。
被災住民と議論する池田こみち
撮影:鷹取 敦
南相馬市沿岸被災地 コンクリート堤防が破壊されていた
撮影:青山貞一
海に面して建っていた家は友達の家だが、土台も残らないほど流されてしまった。今は、地区の人たちはバラバラになってそれぞれ避難している。これほどの被害にあうとは、悲しいを通り越してもう笑う以外にないほどだ。
幸い、この地区は海に面しており、一年を通じて東風が強く、原発からの放射能は低い。震災後、立派な椎茸ができたので、みんなで食べてしまい、放射能が高かったらと心配したが、保健所に聞いたら60歳以上は問題ないと言われ、一安心した。年寄りはまだしも子供たちが心配だ。
堤防から数十メートル先に作られたテトラポットの防波堤の上には船に合図を送る小さな灯台が3カ所取り付けられているが、そのうちの一つは津波前にはひっくり返っていたのに、津波でまっすぐに起きあがってしまった。
相馬市との境の農地だったところは、今では湾のように水がまだ引かない。
自衛隊が整理した瓦礫の山と水がまだ引かない農地
右は原町火力発電所
撮影:鷹取敦
南相馬市の浜通り地区でも要所で放射線量を測定した。
南相馬市浜通り海浜被災地で放射線を測定する
撮影:青山貞一
南相馬市海浜部の津波被災地(動画からの切り出し)
撮影:青山貞一
南相馬市海浜部の津波被災地(動画からの切り出し)
撮影:青山貞一
結果は0.26~0.36μシーベルト/時と、飯舘村や南相馬西側の濃度に比べ約1/10と低いことが分かった。
福島放射線現地調査結果(2011.6.19午前) 単位:μシーベルト/時
月日 |
天気 |
市町村名 |
測定地点の地表面 |
地上1m高 |
地表5cm高 |
6月19日 |
晴 |
南相馬市 |
海浜部、路肩 |
0.35 |
0.54 |
6月19日 |
晴 |
南相馬市 |
海浜部、 |
0.36 |
0.61 |
6月19日 |
晴 |
南相馬市 |
海浜部、路肩 |
0.35 |
0.78 |
6月19日 |
晴 |
南相馬市 |
海浜部、土 |
0.26 |
0.33 |
出典:東京都市大学青山研究室、環境総合研究所共同調査結果
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