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■2009年3月26日 白保の海を視察した後、現在工事中の新石垣空港の現場に向かった。 ここで石垣における空港問題の歴史的経緯について概略を説明しておこう。以下が新石垣空港立地の経緯である。 石垣空港には、現在、年間180万人近い乗降客がある。沖縄県は現在の石垣空港が1500mの滑走路であるため大型ジェットが利用出来ず、増大する観光客の呼び込みに限界があるとして、当初2500m、その後も2000m級の滑走路を持った空港の建設を計画してきた。 現在の石垣空港は、第2次世界大戦中に造られた海軍飛行場を基にしており滑走路の長さはそのときの1500mのままである。 石垣島にはボーイング737型などの中型ジェット機が暫定的に就航しているが、滑走路の長さが足りず旅客数や貨物、積載燃料の量を制限している状態であるとされる。滑走路は当初2500mで計画されたが、現実には2000mあればボーイング747は無理だが777や767などが就航でき、輸送力は格段に向上するはずであった。 1982年には南西航空(現・JTA,日本トランスオーシャン航空)のボーイング737-200が滑走路をオーバーランし、炎上する事故も起き、住宅密集地の空港への危機感が高まった。 だが同年に発表された2500mの新空港案は、白保の沖合いにある世界的に見てすぐれたサンゴ礁を埋め立てるものであったため、地元住民や自然保護団体から強烈な反対を受けた。 環境庁(現・環境省)は沖縄県に計画変更を要請、滑走路は2500mから2000m に短縮されたが白保のサンゴを埋め立てる方針に変わらなかった。そのため反対運動側は1988年に国際自然保護連合総会で危機を訴える手段に出た。国際的な自然保護団体(国際自然保護連盟)の調査や圧力が強まった。 上記に関連し、筆者らは当時、沖縄県が作成した石垣空港の環境アセスメントの準備書に関連し、NHK沖縄の取材を受けた。沖縄県が東京に本社があるパシフィックコンサルタントに委託した立地代替案調査では、@現空港の拡張案、Aフサキ案、B白保沖のうち、白保案を最高得点をとったとして評価したことを巡り、大きな議論が巻き起こった。 というのも、沖縄県がパシフィックコンサルタントに立地選定調査を依頼する前に、実は日本空港サルタントに立地選定調査を依頼していたが、そこでは白保案はサンゴ礁があることから除外されていたことがNHKの取材で暴露されたからである。 筆者はじめ琉球大学の学者やコンサルタントは、沖縄県の立地選定や環境アセスメントが杜撰で意図的なものであり、結果的に世界的に見て希有な存在である白保のサンゴ礁を大規模に破壊するものであるかについて番組の中で証言したのである。また実際にサンゴの海に取材班などが潜り実験をした。その結果、白保案ではサンゴはまったく保護できないという結論に達したのである。 以下はNHKの金曜リポートの一部である。 NHKの金曜リポートは、九州、沖縄で放映されたものの東京など他地域では放送されなかった。 当時、NHKから私の所に送られてきたビデオテープを私はすぐに環境庁に送付し、環境庁の幹部らがこのビデオを見ることになる。 これがきっかけとなり、1989年に白保に滑走路を立地する新空港計画はすべて撤回されることになった。 ..... しかし、これで新空港建設問題は終わらなかった。 その後、新石垣空港の建設予定地は二転三転した。巨額の工費を必要とし、島内の手付かずの場所を破壊することになる新空港の代わりに、現空港の拡張を求める声もあった。だが、現空港の周囲や滑走路の先には国指定遺跡や市街地があり、立退き費用などを考えると滑走路延長は困難という声もあった。 私見では、地元では新空港の必要性は、実需、すなわち航空需要の増加とは別に、沖縄県で一般化されている国の補助金で公共事業を行うことで地元業者の仕事を得る、という側面も強くあり、現空港拡張だと地元に落ちる公共事業がらみの予算が少なくなるという側面も看過できなかったはずである。 2000年になって、石垣島東部の海沿いの陸地に新空港を立地する計画が策定された(下の図を参照)。 2000年3月には専門家の集まる位置選定委員会により、カラ岳東側案、宮良牧中案などの候補地の中からカラ岳陸上案が選定された。 この案は白保集落の北部に空港を建設し、海上埋め立ては伴わない案である。しかし、下の図にあるように滑走路の先端はサンゴの海近くに接近している。 そんなこともあり、今回は工事中の新石垣空港の現場を視察、監視することが大きな目的となっていた。 下は空港滑走路関連の法面工事である。 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.26 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.26 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.26 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.26 下の写真は新石垣空港の現場見学台である。私たちが行ったときはどこかの市議らしきひとたちが5名ほど来ており、沖縄県の職員の説明を受けていた。 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.26 下は現場見学台から見た滑走路の工事現場。この工事現場は滑走路のほぼ中央部にある。写真から分かるように、滑走路は海浜は非常に近いことが分かる。また滑走路建設では立地域及びその周辺において地形が大々的に改変される土の切り盛りが行われていた。 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.26 下はカーラ岳の麓から撮影した滑走路の北端の工事である。すぐ隣が海であることが分かる。 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.26 下の写真の告知板では、空港建設に伴い赤土が海に流れでることに関連し流出防止条例に係わる表示を掲示しているが、空港の北端はサンゴ礁がある海にきわめて近くなっていることから、今回の現地視察で赤土が海に流出することを防止するのはきわめて難しいことが分かった。 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.26 下の写真は海側の法面工事の現場。むき出しになった赤土をどう処理できるかが重要なポイントとなるが、降雨による表土の流出以外に、盛り切りしたことによって土が構造的に流出しやすくなっていることも看過できない。 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.26 土砂防止や降雨排出に関連してか、滑走路の下に埋設するカルバート工事が行われていた。新石垣空港工事では予定地の地質、土質に関連して工法や工事、さらに構造の変更が度々生じているらしい。おそらくその度に工事費が増加しているのだろう。 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.26 もうひとつの大きな課題は、滑走路の北端がカーラ岳に近接することである。そのため航空法で制限される高さに抵触し、今後、カーラ岳を切り落と大工事が行われることだ。下の写真は滑走路の北部先端予定地。背後にカーラ岳が見える。 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.26 下は今後、切り崩される予定のカーラ岳。このカーラ岳は石垣島を象徴する由緒ある山であるだけに、単に自然景観や地形が破壊されるにとどまらず、歴史的・地質学的なランドマークを石垣島は喪失することになりかねない。もっぱら、これも公共工事量を増やす「一策」なのかも知れない。 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.26 つづく |