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2014 初夏の浅間高原

(5)八ッ場ダム巨大7橋梁工事-1

青山貞一 Teiichi Aoyama
池田こみち Komichi Ikeda
斎藤真実 Mami Saito

July 31, 2014
Alternative Media E-wave Tokyo
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(1)下久保ダム・神流湖  (2)JAL墜落現場再アタック (3)鬼押出し園-1
(4)鬼押出し園-2  (5)八ッ場ダム工事7-1  (6)八ッ場ダム工事-2 
(7)八ッ場ダム工事、温泉移設  (8)野反湖とキスゲ  (9)碓氷峠とおぎのや


 私たちは過去30回以上、八ッ場ダムの工事現場に足を運び写真、動画で工事の実態を撮影している。そろそろ一本の動画などにし国民そして世界各国のひとびとに世紀の愚行を知らせたいと思っている。

 私達の環境総合研究所(東京都目黒区)では、単に現場近くに別荘があるので行くたびに現場を見に行くだけでなく、八ッ場ダムの集水域全体を対象とした水象動態シミュレーションモデルを研究開発しており、学会などにも論文発表している。下は環境行政改革フォーラムの予稿集に掲載した論文である。

 ※ 青山 貞一(武蔵工業大学環境情報学部)、鷹取敦(環境総合研究所)
    計画高水シミュレーションシステムの研究開発
    〜八ッ場ダム計画地域を事例に〜(経過の概要報告)
   環境行政改革フォーラム論文集 Vol.1 No.2

 2009年秋、民主党の政権交代に一大シンボルとなった八ッ場ダム工事中止だが、現場は自然環境が破壊されたい放題、税金、公金の使いたい放題となっている。地域の人間の社会的関係もズタズタ、巨大公共事業が地方、地域を破壊する典型例であると言える。

 .....

 7月17日の午後、鬼押出し園を見学した後、浅間牧場で一休みした。このころ小雨が降り出した。

 雨が降り出したが、青山、池田にとっては勝手知ったる地元ということもあり、斎藤真実さんをご案内し群馬県長野原町でここ10年以上行われている八ッ場ダムの工事現場にでかけた。

 雨は降ったり止んだりしていたが、霧が出て地域は水墨画のような様相を呈していた。

 八ッ場ダム工事は当初予算が4600億円と日本最大級であったが、ダム本体工事以前にほぼ全額を使い果たし、さらに道路特別会計からも相当額の資金を供出し、吾妻渓谷の両側に巨大な道路、橋梁、トンネル、軌道を整備してきた。

 とりわけ橋梁の数は膨大で、国道145号線バイパス道路用橋梁(以下の@、Aのアーチ型鉄橋)、吾妻線付け替えのための橋梁(以下のB)、国道145号線バイパスの高規格道路用橋梁(以下のC)、一般県道橋梁湖面2号橋(以下のD)、一般県道橋梁湖面1号橋(以下のE)、それに下図にはないが東吾妻町の吾妻線付け替えのための橋梁(以下F)と全部で7つもの巨大橋梁を吾妻渓谷の両岸を結ぶためにつくってきた。

 今回現地視察すると、7本目の巨大橋梁がほぼ完成していた。これは下図のEに相当する橋梁である。正式名称は、一般県道川原畑大戸線 湖面1号橋である。

 下の橋梁位置を入れた立体地図は青山貞一のオリジナル図だが、これを見ただけで道路、橋梁、トンネル、鉄道付け替えなど、ダム建設がなければすべて一切不要なものであり、環境破壊と税金・公金の無駄遣いであるかが分かるというものである!


八ッ場ダム関連の立体橋梁図   出典:青山貞一

 以下は@、AとBのアーチ型鉄橋である。車が走っているのは、@(奥側)の橋梁である。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8


 以下は
ほぼ完成した7本目の巨大橋梁である。 今回、2014年7月17日午後に現地で撮影したものである。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2014-7-17

 上の写真にある湖面1号線の橋梁は、八ッ場ダム工事における巨大橋梁建設の何と7本目の橋梁であるが、正式には、一般県道川原畑大戸線 湖面1号橋という。巨大橋梁以外の中小規模の橋梁建設は数知れないが、巨大橋梁だけで先の立体図に見るように7本もある。

 湖面1号線橋梁の建設場所は、長野原町川原湯温泉地域と対岸の川原畑地域を結ぶ位置にある。下の看板は国土交通省が昨年まで現地に設置していた一般県道川原畑大戸線 湖面1号橋の解説板である。橋の延長は494m地表面からの高さは最大で81mとなっており、巨大な橋梁であることが分かる。


撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2013-8

 この湖面1号線は、民主党が政権を取った2009年秋、メディアが撮影し報道していた橋(湖面2号線という)の下流側にあり、今後本格工事に入る八ッ場ダム本体から少しだけ上流側となる。 

 下の写真は2013年の8月に、川原畑側の現地で撮影した一般県道川原畑大戸線 湖面1号橋である。


一般県道用道路の橋梁となる湖面1号線(Eに相当)の工事現場
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2013-8

 下の写真は川原湯温泉側から撮影した一般県道川原畑大戸線 湖面1号橋である。工事は橋桁部だけでなく橋梁上の道路部分もかなり完成していることが分かる。後述する湖面2号橋に比べると、工事の進捗が非常に早くなっている。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2014-7-17

 斎藤さんが立っているのは、川原湯温泉地域の温泉や住民の代替地(移転地)の外れであり、背後に一般県道川原畑大戸線 湖面1号橋が見えている。


斎藤さんが立っているのは、川原湯温泉地域の温泉や住民の代替地
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2014-7-17

 下の写真は、一般県道川原畑大戸線 湖面1号橋の渓谷を挟んで反対側の川原畑地区で撮影したものである。湖面1号橋と一般県道、国道145号線バイパスなどを接合させる部分の工事の様子が分かる。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2014-7-17

 上の写真を見ると、一帯にブルドーザーが入り、自然環境だけでなく地質・土質もメチャクチャに破壊され裸地となっている。 

 法面は法面で、今後、コンクリートを貼り付ける一大土木工事が行われることとなるのは目に見えている。その場合でもこうした斜面の開発工事により、地域全体の流出係数が高まり、1時間当たり数10mmさらに50mmを超すような大降雨時に土砂崩れ、がけ崩れも起きやすくなっているはずだ。近年、気候変動の影響か、1時間当たり50mmを超すような大雨が全国各地で降っており、死者を出すような崖崩れが頻発している。

 この地域一体は天明3年の浅間山大噴火時の火山灰が堆積しており、地質、土質学的に見ても脆弱となっていると地質学の専門家が指摘して久しい。

つづく