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嬬恋村では、パノラマライン北ルートと国道144号線の間、また国道144号線から浅間高原の鎌原地区の間、さらに国道145号線の嬬恋村から東吾妻町にかけて、地形学上また地質学上興味深い崖、断崖、渓谷、火砕流跡など多様な特異な地形が多数ある。 パノラマライン北ルートで万座川が吾妻川に合流する地点は、国道144号線を<門貝>に上がってゆく西窪地区だが、西窪側から鎌原側を見上げると非常に特異な地形が見える。 下の写真がそれである。走っている道路は国道144号線、これを写真画面の左側に進むと途中から国道145号線となり、八ッ場ダムの工事現場になる。また下の写真では電車の架線が見えるが、これはJR吾妻線である。西窪地区は、JR吾妻線の駅で言うと、万座鹿沢口と終点の大前の間にある。 西窪地区から断崖を望む 撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8, 2010年8月 西窪から見る地形は写真のように非常に特異である。真夏なので樹木が生い茂っていて岩肌がよく見えないが、冬に見るとまるでトルコのカッパドキアの地形に似ている部分もある。崖の高さは約100mある。 西窪地区から断崖を望む 撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8, 2010年8月 下の写真は1996年8月、トルコのイスタンブールで国連ハビタット2会議が開催されたとき、青山、池田で参加した際にカッパドキアで撮影した写真である。 トルコのカッパドキアの特異な地形 撮影:青山貞一、Pentax ,1996年8月 これを地形図で見たのが以下である。楕円の内部は等高線が密集しており、鎌原側の標高900mが西窪側では一気に800mに落ち込んでいることがわかる。 グーグルマップにより筆者が作成 下の写真は、標高1100mほどの<門貝>地区から見た鎌原地区の特異な地形である。浅間高原が吾妻川側に約100m落ち込んでいることがよくわかる。 写真を撮影した日は曇天で遠望できないが、写真の上側が浅間高原を隔てて浅間山がある。残念ながらこの日は浅間山は全く見えなかった。 門貝から断崖絶壁さらに浅間高原の鎌原地区を望む 撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8, 2010年8月 上の写真は下の地図の矢印の方向を撮影したものである。下の地形図でもわかるように、吾妻川は浅間山麓(浅間高原)と白根・万座山麓の切り立った谷間(接合線)を左から右側に流れている。下の地図では万座川も切り立った谷間を流れ、吾妻川に流れ込んでいることがわかる。 グーグルマップにより筆者が作成 下はグーグルアースで見た西窪・鎌原の断崖絶壁である。鳥井峠方面(西)から見ている。3DCG画面中、右側が浅間高原の鎌原地区、左側の谷間が西窪、左端の山間地は門貝となる。 残念ながら100mが垂直に落ちる地形はグーグルアースでも表現できていない。 グーグルアースにより筆者が作成 下はグーグルアースで見た西窪・鎌原の<断崖>。自由に動かせます! クリックすることで地形図、普通の地図、衛星画像なども見れます。お試しください! 大きな地図で見る 下は西窪地区の集落を含めて撮影した写真である。約100mの岩壁が民家の前に立ちはだかっている様子が見える。 西窪地区から断崖を望む 撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8, 2010年8月 ただ、この特異な地形は、何も西窪・鎌原地区に固有なものではない。吾妻川の西窪・鎌原地区から下流は、今や八ッ場ダム工事で全国的に有名になった吾妻渓谷(下の写真参照)となる。渓谷の深さは、鹿飛橋から下が50m以上、国道145号線レベルから100m以上、さらに渓谷沿いの山から見ると150mから200mもある。 切り立った吾妻渓谷 鹿飛橋上から撮影 撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8, 2010年8月 吾妻渓谷は上の写真のように吾妻川の浸食によって深い切り込みができている。このように群馬県北西部は、地形学上、地質学上、特異な地形のデパートとなっていることもあり、巨大な八ッ場ダム工事により、特異な地形が湖底に沈められることは断じて防がなければならない。 下の図は、吾妻渓谷の長野原町と東吾妻町の接する地域に計画されている八ッ場ダムの本体工事の模式図である。現地で撮影した写真と国土交通省の設計図をもとに青山貞一が作成した。 現地で撮影した写真と国土交通省の設計図をもとに 青山貞一が作成 上の吾妻渓谷を地形図で見ると下のように、渓谷で700m以上ある標高が一気に500m台に落ち込んでいる。八ッ場ダムの本体工事の予定箇所は、下の地形図の少し左(西側)にある。 以下、地形の分類、類型から断崖や渓谷について見てみよう。出典はWikipediaである。 ■崖( Cliff) 垂直もしくは垂直に近い傾斜の地形のことである。日本の法令では、水平面に対し30度を超える角度の傾斜を要件とする。 通常、浸食や風化作用に対しての抵抗力がある強い岩石によって形成されている。 一般的に、海岸沿いにある崖の他にも山岳地帯にもあり、川に沿って存在するものもある。 崖を形成する主な堆積岩は砂岩、石灰岩、チョークおよび苦灰岩である。花崗岩や玄武岩などの火成岩もしばしば崖を形成する。 海岸沿いにある崖は海食崖(かいしょくがい)で、波の浸食によって出来る。崖を超えて河川が流れる場合、そこに滝が出来る。 断崖(だんがい)は、地質学上の断層の移動によって形成された崖のことである。多くの崖は、滝や岩のシェルターを伴っている。世界で最も高い崖は、高さが約1,010mもあるハワイのモロカイ島・カラウパパの海食崖である。 ■渓谷、谷(valley) 山や丘、尾根、山脈に挟まれた、周囲より標高の低い箇所が細長く溝状に伸びた地形のことである。渓、谿とも表記される。 「谷」「谷戸」「谷津」「谷地」と表し「や、やと、やつ、やち」などと読む地形および地名については谷戸を参照のこと。 また、新潟県、長野県、静岡県以東の東日本では「○○沢」と呼ばれることが多いが、富山県、岐阜県、愛知県以西の西日本では「○○谷」と呼ばれることが多い。つまり、「谷」と「沢」とは、同じ意味を表す方言どうしであった、という見方も可能である。例えば、谷川岳と丹沢山とは、ともに谷あるいは沢の多い山を指す山名である。 地図においては、尾根とは逆に等高線が凹状になって表れる。 成因により、河川や氷河の侵食によってできた侵食谷と断層や褶曲によってできた構造谷とに分けられる。よく見受けられる谷は河川の浸食による浸食谷である。 山脈に沿って流れる谷を縦谷(じゅうこく)、山脈を横切る谷を横谷(おうこく)という。横谷のうち、もともと川が流れていた平地の一部が隆起して川を横切るように山脈が形成されるときに、隆起の速度よりも谷の下刻が速い場合に形成されたものを先行谷(せんこうこく)という。 吉野川が四国山地を横切る箇所にある大歩危・小歩危が代表的である。隆起の速度の方が速いと谷は切断される。 また、谷の断面の形状によりV字谷・U字谷・鋸挽谷・峡谷・階層谷(キャニオン)・谷床・箱状谷・非対称谷などに分類される。 谷を流れる川のことを渓流という。 非対称谷は、左右両側の斜面勾配に著しい異なりを見せる谷である。 つづく |