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2009年12月から継続している秩父事件の現地調査の一環として、この12月21日、秩父(皆野)から群馬の上野町を経由し佐久の小海町まで往復してきた。 このルートは、長野から秩父事件に参戦し、敗走した人々が歩いたルートだ。 秩父事件に長野から参戦した人は1000人近くに及び検挙されただけでも600人いるが、その多くは現在の南佐久郡南相木村と北相木村出身の住民だった。 今回、無医村で「限界集落」に近いそれら南相木村と北相木村も現地視察してきた。これらについては以下をご覧頂きたい。
長野県の南相木と北相木に行って驚いたことがある。 それは人口がともに1000人前後の村なのだが、南相木村に入った途端、どの家々も周辺地域にない立派なもので、敷地も広いものばかりだったからだ。一口で言えば、南相木村の家々は見るからに資産家の家々という感じがした。一方、北相木はと言えば日本のどこにでもある限界集落に向かう農村集落そのものであった。 南相木村はその総面積の92%を山林原野が占めている。人口規模だけで見ると、南相木村は限界集落に見えるが、現地でみた家々は、いずれもどうしてどうして立派なものばかりだ。 現在の生活の質から見ると、医療サービスなど福祉分野以外の質は非常に高いのではないかと感じた。村の主力産業は農業分野では、新規就農される人々への積極的な受け入れ、支援があり、新品目や農産加工品の開発にも力を入れているようだ。 南相木村の風景 出典:Wikipedia 北相木村の風景 撮影:青山貞一 ●南相木の財政と巨大ダム 南北相木村は、上述のように人口わずか1000人程度のまち、町の財政はどうなっているのかが気になった。 それは、なぜ人口わずか1000人の南相木村が財政面で存立するのか不思議に思ったからだ。私は、このときひょっとしたら南牧村には水力発電用の巨大ダムでもあるのかなと直感した。 そこで帰京後、調べてみたら、南相木村の最上部(1,532m)に東京電力が建設管理する発電用の大規模ダム「南相木ダム」があることが分かった。 さらにこの南相木ダムに関連したすごい情報があった。後述するように、この南相木ダムと群馬県の上田ダムを結び、最終的に世界最大規模の280万kwの揚水式水力発電が行われるというのだ。280万kwといえば原発3基分に相当する巨大な発電能力である。 南相木ダム 出典:南相木村公式Web 南相木ダム 出典:南相木村公式Web おそらく、南相木村ではいわゆる電源立地に伴う各種税収、収入で現在の村の財政は結構、豊かなのかも知れないと感じた。 実際、村の沿革にもあるように平成18年4月に南相木ダム完成に伴い南相木村は固定資産税増加分を受け、平成18年度以降地方交付税の不交付自治体となっている。 南牧村は世界最大規模とされる水力発電用ダム、それも東京電力の巨大ダムが立地していることで、固定資産税が増えるばかりか、巨大な水力発電との関連で、いわゆる電源三法による各種交付税が来ているはずだ。 ・電源開発促進税法 ・特別会計に関する法律(旧 電源開発促進対策特別会計法) ・発電用施設周辺地域整備法 そこで南相木村と北相木村の各種財政指数を調べてみた。 すると案の定、南相木の方が起債制限比率以外は全てにわたり上位にあるだけでなく、長野県内町村と比べても上位にあることが分かった。 ・財政力指数(2010) ・経常収支比率(2010) ・実質公債費比率(2010) ・起債制限比率(2007) 以下は、南相木村と北相木村の各種財政指数の全国及び長野県内のランクの比較である。 一目すれば分かるように、南相木の方が財政力指数、経常収支比率、ラスパイレス指数、起債制限比率(これはランクが低い方が健全)、実質高裁比率(これはランクが低い方が健全)など、起債制限比率以外全てにわたってかなり上位にあった。 ただし将来負担比率は南北相木村ともに第一位となっていた。これは今後、南北相木村は超高齢化、少子化、限界集落化で財政の将来は最悪となることを意味している。 南相木村の各種財政指数
北相木村の各種財政指数
今後、日本の電力はたとえ自民党政権になっても、長期的には原発依存を抜け出し再生可能エネにシフトし、電源三法関連の交付金、補助金が巨大水力発電用ダムにシフトして行く可能性もある。さらにそれに連れて今後、水力発電を目的とした巨大ダム開発が促進される可能性もある。 福島第一原発事故で東電の経営、資産状況がどうなるか心許ない問題に加え、この種の巨大水力発電を目的とした巨大ダム建設が自然生態系にどのような影響を及ぼすかについても注目して行かなければならないと思う。 ひとことで言えば再生可能エネとして水力は良いとして、あまりにも巨大なこと、また事業者が東京電力であることに不安がよぎる。 |