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日独・脱原発自治体
首長交流会 参加記(2)

(在日ドイツ大使館)
ラインラント=プファルツ州と自治体の概要
Present State of Rheinland=Pfalz and Municipalities

青山貞一
Teiichi Aoyama
環境総合研究所顧問、東京都市大学名誉教授
Advisor, Environmental Research Institute, Tokyo
Prof. Tokyo City University

掲載月日:2013年7月12日
独立系メディア E-wave Tokyo
無断転載禁


(1)はじめに (2)ラインラント=プファルツ州とは (3)再生可能エネルギー戦略
(4)
大臣の同行者紹介 (5)エヴェリーン・レムケさん  速報  補遺

◆ラインランド・プファルツ州の位置

 さて、ドイツ・ラインラント=プファルツ州(ドイツ語:Rheinland=Pfalz)の位置だが、上の図で分かるように、まさにヨーロッパの中央にある。またラインラント=プファルツ州は下のドイツ全図にあるようにドイツの南西、ベルギーやルクセンブルグに近い位置にある。州都はマインツである。比較的近くにはフランクフルトや有名なフライブルグなど日本人になじみの深い都市もある。


ヨーロッパの中央に位置するドイツ・ラインラント=プファルツ州
Source:Rheinland=Pfalz at a Glance, Facts and Figures


連邦国家ドイツには16の州がある
Source:Rheinland=Pfalz at a Glance, Facts and Figures

 周知のように連邦国家であるドイツには16の州がある。そのうちラインラント=プファルツ州は人口規模で7番目、約400万人が居住しており州都はマインツである。6番目にはザクセン州、8番目にはベルリン(特別政令市)がある。

順位 州名 人口(人)
1 ノルトライン=ヴェストファーレン州 18,058,105
2 バイエルン州 12,468,726
3 バーデン=ヴュルテンベルク州 10,735,701
4 ニーダーザクセン州 7,993,946
5 ヘッセン州 6,092,354
6 ザクセン州 4,273,754
7 ラインラント=プファルツ州 4,058,843
8 ベルリン 3,395,189
9 シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州 2,832,950
10 ブランデンブルク州 2,559,483
11 ザクセン=アンハルト州 2,469,716
12 テューリンゲン州 2,334,575
13 ハンブルク 1,743,627
14 メクレンブルク=フォアポンメルン州 1,707,266
15 ザールラント州 1,050,293
16 ブレーメン州 663,467
  合計 82,437,995
出典:Wikipedia

◆ラインラント=プファルツ州とは

 
以下はニコニコ大百科が出典

 ラインラント=プファルツ州は、ライン河畔とプファルツ地方のうち、主にライン左岸(ライン川の西側)をその領域とする州である。ワインの産地が連なっており、夏から秋にかけて河畔の葡萄畑が見事な景観美を成すことでも知られる。

 ラインラント=プファルツ州は、その北はノルトライン=ヴェストファーレン州と、東はヘッセン州およびバーデン=ヴュルテンベルク州と、南西はザールラント州と接しているほか、南はフランス、西はベルギーおよびルクセンブルクとの国境を成している。

 日本人には観光船によるライン川下りの人気が高いほか、ライン河畔の古城ホテルなども人気。国際空港のあるフランクフルトからケルンまで移動する際に寄り道してみると良いかもしれない。なお、世界的に知られるサーキット場「ニュルブルクリンク」の所在地でもある。

・ラインラント=プファルツ州の主要都市
人口10万人を超える都市は次のとおりである(2012年現在、人口の多い順に配列)。

 マインツ(Mainz):約20万人、ドイツ第39位、州都
 ルートヴィヒスハーフェン(Ludwigshafen am Rhein):約16万人、ドイツ第45位
 コブレンツ(Koblenz):約11万人、ドイツ第69位
 トリーア(トリア)(Trier):約11万人、ドイツ第74位

 この外、サッカーチームで知られるカイザースラウテルン(Kaiserslautern)、世界遺産の大聖堂を擁するシュパイアー(Speyer)といった中小規模の都市やライン河畔のビンゲン(Bingen)、オーバーヴェーゼル(Oberwesel)、ザンクト・ゴアール(St. Goar)、ボッパルト(Boppard)などの町村もある。

・世界遺産
 州内にある主な世界遺産は次のとおりである。

 ライン渓谷中流上部(Kulturlandschaft Oberes Mittelrheintal zwischen Bingen/
     Rudesheim und Koblenz):2002年登録、ビンゲン(Bingen)からコブレンツまで
 ローマ帝国時代の記念的建築物、大聖堂および聖母教会(Romische Baudenkmaler,
      Dom und Liebfrauenkirche):1986年登録、トリーア
 シュパイアー大聖堂(Dom zu Speyer):1981年登録、シュパイアー


 上述のように日本人にとってラインラント=プファルツ州で最も有名なのは、やはりライン川とそのライン下りの観光船から見るライン川のほとりにそびえる秀逸な景観を持った古城である。下に写真を掲げる。

ラインランド プファルツ州: 写真
ラインランド プファルツ州 (トリップアドバイザー提供)

ラインランド プファルツ州: 写真
ラインランド プファルツ州 (トリップアドバイザー提供)

ラインランド プファルツ州: 写真
ラインランド プファルツ州 (トリップアドバイザー提供)


Schloss Gemunden       Source:German Wikipedia


Burg Pfalzgrafenstein      Source:German Wikipedia

 下の写真にあるようなマインツ市街も有名となっている。さらにサッカーファンにとってマインツのサッカーチームは世界的に有名である。


州都マインツの市街   出典:グーグル・ストリートビュー


州都マインツの市街   出典:グーグル・ストリートビュー


Bacharach Marktplatz    Source:German Wikipedia


Universitat Trier       Source:German Wikipedia


◆ラインラント=プファルツ州(ドイツ語:Rheinland=Pfalz)の行政(市町村などを含む)

 以下に行政の主な指標を掲げる。

  
ラインランド=プファルツ州の州旗と紋章


州の首相 Ministerprasidentin Malu Dreyer (SPD)

ラインラント=プファルツ州の主要指標
州都 マインツ
面積 19,846.91 km2 (第9位
人口
 - 総計
 - 人口密度
(2005/12/31)
4,058,843 人 (第7位
204.5 人/km2
ISO 3166-2:DE DE-RP
公式サイト ラインラント=プファルツ州政府
政  治
州首相 マル・ドライヤー (SPD)
与党 SPDGrune
前回選挙 2011年3月27日
次回選挙 2016年
連邦参議院(上院)
での投票権数
4
地  方
市町村数
 * 独立市
2,306
12
出典:Wikipedia

 ラインラント=プファルツ州は、かつては州内を3つの行政管区 (Regierungsbezirke) に区分して、それぞれの地域に属する自治体の活動を監督していた。しかし、2000年1月1日をもって行政管区は廃止された。

 州に直属する地方自治体は、24の郡(Landkreis、ラントクライス)と、郡には属さない12つの独立市 (kreisfreie Stadt)から成る。郡には、163の連合自治体(Verbandsgemeinde、フェアバンズゲマインデ)と連合を組まない37の自治体が属する。連合自治体を構成する自治体の内訳は、市 (Stadt) が82、町村が2175。連合を組まない自治体の内訳は、市が25、町村が12。市も含めた広義の「ゲマインデ」(基礎自治体)の総数は2306である。


ラインラント=プファルツ州の郡 ラインラント=プファルツ州の区分マップ

郡と郡庁所在地 番号は右の区分地図に対応。
@アールヴァイラー郡 - バート・ノイェンアール=アールヴァイラー
Aアルテンキルヒェン郡- アルテンキルヒェン
Bアルツァイ=ヴォルムス郡- アルツァイ
Cバート・デュルクハイム郡 - バート・デュルクハイム
Dバート・クロイツナハ郡- バート・クロイツナハ
Eベルンカステル=ヴィットリヒ郡 - ヴィットリヒ
Fビルケンフェルト郡- ビルケンフェルト
Gコッヘム=ツェル郡 - コッヘム(コーヘム、コーヘン)
Hドナースベルク郡- キルヒハイムボーランデン
Iビットブルク=プリュム郡 - ビットブルク
Jゲルマースハイム郡- ゲルマースハイム
Kカイザースラウテルン郡 - カイザースラウテルン
Lクーゼル郡 - クーゼル
Mマインツ=ビンゲン郡 - インゲルハイム・アム・ライン
Nマイエン=コブレンツ郡 - コブレンツ
Oノイヴィート郡 - ノイヴィート
Pライン=フンスリュック郡 - ジンメン
Qライン=ラーン郡 - バート・エムス
Rライン=プファルツ郡- ルートヴィヒスハーフェン・アム・ライン
Sズュートリヒェ・ヴァインシュトラーセ郡 - ランダウ・イン・デア・プファルツ
21 ズュートヴェストプファルツ郡 - ピルマゼンス
22 トリーア=ザールブルク郡- トリーア
23 フルカナイフェル郡 - ダウン
24 ヴェスターヴァルト郡- モンタバウアー

独立市 右上図での位置を付記ししてる。
フランケンタール (Frankenthal) - 19の内側北部
カイザースラウテルン (Kaiserslautern) - 12の内側部分
コブレンツ (Koblenz) - 15の東
ランダウ (Landau in der Pfalz) - 20の内側部分 + 4,20,21の間
ルートヴィヒスハーフェン (Ludwigshafen am Rhein) - 19の中部
マインツ (Mainz) - 14の東北
ノイシュタット (Neustadt an der Weinstrase) - 4と20の間
ピルマゼンス (Pirmasens) - 21の内側部分
シュパイアー (Speyer) - 19の東南
トリーア (Trier) - 22の内側部分
ヴォルムス (Worms) - 3,4,19の間
ツヴァイブリュッケン (Zweibrucken) - 21の西部

 下の写真はラインラント=プファルツ州の郊外、典型的農村部のイメージである。実は日本にも2014年5月に現地調査した青森県の下北半島にも似たようなイメージのまちが沢山あった。

 大臣の話を聞いていて、日本とドイツの最も重要な違いは、ドイツは連邦国家であり、16の州はまさに国としての立法、許認可権限、財源、税源などを持っていることだと感じた。日本のようにいつまでも中央省庁が地方の隅々までコントロールする制度、方法は結果的に国全体の活性化、人材、能力の発揮を押さえつけ、結果的に地方を疲弊させダメにすると感じた。日本経済=グローバル化した巨大企業だけが肥え太り、万骨枯ることになっていると感じる。

 もちろん、ドイツにも世界に冠たるグローバル企業が沢山ある。しかし、連邦国家であるだけでなく、政治がしっかりしていると日本のTPP参加の前提のように工業系、サービス系などのグローバル企業に恩恵をもたらすのではなく、地方、地域の小さな産業や企業にも地域が成り立つ経済的基盤を同時に構築してきたことが分かる。
 


 その結果、同じOECD加盟国にあって、ドイツはジニ係数が 0.286 であるのに対し、日本は 0.336 また米国は 0.38 と格差社会化が他の先進国に比べて進んでいない。OECD加盟諸国におけるジニ係数については、以下を参照のこと。

※ 世界の中の日本ランク(2)民主主義・報道自由・腐敗認識・男女平等

 なお、以下にラインラント=プファルツ州の政治、議会の概要を示す。

◆政治と政党

政治
 ラインラント=プファルツ州は議会民主制の政治が行われている。5年に1度、州議会の選挙が行われ、投票権は州内の18歳以上全員に与えられる。さらに、州議会内から州首相を選出、内閣が組織される。ドイツの中で、ラインラント=プファルツ州にのみワイン製造に関する大臣がいる。

州議会
 州議会の政党別の議席数(2011年現在)だが、州議会 (Landtag) の定数は101、2011年3月27日に行われた前回選挙での政党別議席配分は、ドイツ社会民主党 (SPD) 42、ドイツキリスト教民主同盟 (CDU) 41、同盟90/緑の党(Grune)18である。  2006年3月の選挙では10議席を持っていた 自由民主党 (FDP) は2011年の選挙で全議席を失い、代わりに2006年の選挙では議席を獲得できなかった緑の党が18議席を獲得しその結果、社会民主党と緑の党が連立政権を組んでいる。

 立食パーティーだったので15分ほど大臣と立ち話したところ、ラインランド=プファルツ州では、社会民主党(SPD)、緑の党だけでなく中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)も再生可能エネルギー開発利用に積極的であること、同州では3.11直後の選挙で、エヴェリーン・レムケ大臣が所属する緑の党が18議席をとり、まさにキャスティングボートとなったとのことだ。

 ※同盟90/緑の党(どうめい90/みどりのとう、Bundnis 90/Die Grunen)は、ドイツの
   環境政党。グローバルグリーンズ加盟。2013年現在はドイツ連邦議会で63議席を
   持つ4番目に大きい政党であり、1980年代以降一定の勢力を持っている。1998年
   から2005年まではドイツ社会民主党と連立政権を組み、脱原発・風力発電の推進・
   二酸化炭素の削減など環境政策を進展させ、国民的人気の高いヨシュカ・フィッシ
   ャー外相などの閣僚を送り出した。この期間以外は常に野党である。。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2014-7-11

 これはまさに福島第一原発事故によってドイツ国民の意識が明確に脱原発となった証左でもある。その結果、緑の党が州の連立内閣に入ることになり、経済・気候保護・エネルギー・国土計画という主要な政策全般の大臣に彼女がつくことになったとのことだ。

 さらに同州では、州議会議員の60%が女性議員、5つある大きな市町村議員の40%が女性議員ということで、連邦政府を遙かに超える政治分野での女性上位を実現している。 

 なお、以下はベルリン在住の知人のコメントである。

 ラインラント=プファルツ州は州全体でいずれ100%再生可能エネルギー化すると思います。この州には、BASFという独化学大手の本社工場などありますがね。

 同州である小さな町を取材したことがあります。町長は保守系、キリスト教民主同盟の人で、ドイツで最年少で自治体首長になったといっていました。でも話を聞くと、まったく緑の党の政治家かと錯覚するくらいでした。町役場の屋根も市民に太陽光パネルを設置するために貸していました。ワインの産地なので、ワイン醸造から出る糟をバイオマスとして使いたいのだが、それだけはうまくいっていないといっていました。ロジスティック上 たいへんなんだということです。

 ここもそうなんですが、ドイツでは再生可能エネルギー関係の企業を誘致して、それを再生可能可能エネルギー化するきっかけにしている自治体が結構 ありますね。

 町長はそれを意識して企業誘致を考えたと、はっきりいっていました。この町には、JUWIという再可能エネルギー設備のゼネコンが入っています。

 確か農民からの起業で、今この分野ではドイツの最大手の一つです。社 用車はすべて電気自動車で(社長は電気自動車のスポーツカーでした)、カーポートにはすべて太陽光パネルがついていて、電気自動車を充電できるよ うになっていました。

 社屋は低エネ建屋で、木をふんだんに使っていました。社員食堂はもちろん有機食品しか使っていませんでしたね。それから、社 屋のすぐ横にはバレーボールのコートなどや池があって、社員がスポーツをしたり、憩いの場とできる公園のようになっていました。

 ところで、ラインラント=プファルツ州は州首相も女性です(SPD)。この州首相は多発性硬化症という難病を患っていて、車いすがないと歩けない 時もあるのですが、たいへんガッツのある人です。


つづく