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日独・脱原発自治体
首長交流会 参加記(3)

(在日ドイツ大使館)
再生可能エネルギーの研究開発拠点
としてのラインラント=プファルツ州
As a Base for Renewable Energy R&D
of Rheinland=Pfalz in Germany


青山貞一
Teiichi Aoyama
環境総合研究所顧問、東京都市大学名誉教授
Advisor, Environmental Research Institute, Tokyo
Prof. Tokyo City University

掲載月日:2013年7月12日
独立系メディア
E-wave Tokyo 無断転載禁

(1)はじめに (2)ラインラント=プファルツ州とは (3)再生可能エネルギー戦略
(4)
大臣の同行者紹介 (5)エヴェリーン・レムケさん  速報  補遺

◆ドイツにおける再生可能エネルギー(RE) 
  研究開発の拠点としてのラインラント=プファルツ州

 ドイツの脱原発は長足の進歩を遂げているが、ラインラント=プファルツ州では、すでに全エネルギー需要の過半を再生可能エネが占めており、60%の家庭、世帯でバイオガスの利用とそれを使ったバイオガス発電が普及している。そして後述するように2030年までに全電気エネルギー需要を再生可能エネルギーでまかなうための研究も全ドイツ、EU諸国に先駆けて行われているという。

 全需要の過半を再生エネが占めていることについては、すでにドイツ全体でも実現しているが、それにともない先月下旬に、再生可能エネルギー優先法(略称: 再生可能エネルギー法、EEG)が改正されており、再生可能電力の増加で、電力の取引市場での価格が大きく低下している。

 その結果、原発中心のフランスのKW当たりの電力料金よりも、ドイツの電力料金が安くなっているなど、当初の計画目標を遙かに超え再生可能エネが連邦全体、また州政府、基礎自治体に浸透しているようだ。

再生可能エネルギー優先法の改正
フランスなどより安いドイツの電気料金

 以下のドイツ国内の大規模風力発電の立地分布図を見ると、ラインラント=プファルツ州はそれほど多いように見えないが、実はこの分布図は2011年時点の図であり、2011年以降、ラインラント=プファルツ州で風力発電の立地が増加している。


ドイツ国内の大規模風力発電の立地分布図   出典:Wikipedia

 以下はやはり2011年時点での風力発電のタービン数と設備容量である。タービン数、設備容量で16州で7位となっている。
タービン数 設備容量 [MW] 正味電力消費量におけるシェア [%]
 ザクセン=アンハルト州 2,352 3,642.31 48.11
 ブランデンブルク州 3,053 4,600.51 47.65
 シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州 2,705 3,271.19 46.46
 メクレンブルク=フォアポンメルン州 1,385 1,627.30 46.09
 ニーダーザクセン州 5,501 7,039.42 24.95
 テューリンゲン州 601 801.33 12.0
 ラインラント=プファルツ州 1,177 1,662.63 9.4
 ザクセン州 838 975.82 8.0
 ブレーメン州 73 140.86 4.7
 ノルトライン=ヴェストファーレン州 2,881 3,070.86 3.9
 ヘッセン州 665 687.11 2.8
 ザールラント州 89 127.00 2.5
 バイエルン州 486 683.60 1.3
 バーデン=ヴュルテンベルク州 378 486.38 0.9
 ハンブルク 60 53.40 0.7
 ベルリン 1 2.00 0.0
北海洋上 31 155.00
バルト海洋上 21 48.30
合計 22,297 29,075.02 9.9
出典:Wikipedia

 以下のグラフは2012年までのドイツにおける風力発電の設備容量(赤色)と平均発電量(灰)である。設備容量はまさにうなぎ登りであることが分かる。


出典:Wikipedia

 以下に州内の各種再生可能エネルギー(RE)の開発利用状況についてのパワーポイントから主なものを示す。


ラインラント=プファルツ州の再生可能エネルギー政策

 以下は2030年時点で再生可能100%達成シナリオである。全エネルギー消費の70%を風力、24%を太陽光発電、水力が4%、バイオマスが5%、地熱が1%となっており、風力発電が全体の70%を占めている。ただし、このスライドは2011年時点の実績をもとにまとめられている。3.11以降、レムケさんが大臣となり、一段とREの研究開発が進んでいることを念頭にご覧いただきたい。


2030年時点で再生可能100%達成シナリオ

 下は、州全体の風力発電タービン数の2009年〜2011年までの推移である。2011〜2013のデータがあれば、その後も順調に増加していることがわかるはずである。


州全体の風力発電タービン数の2009年〜2011年までの推移


風力発電タービンの設置例

 なお、州の再生可能エネルギー、とりわけ風力発電については、以下の現地視察ブログに詳しく情報提供されている。

 ※滝川薫:内陸風力のメッカ、ラインラント=プファルツ州へ!

 ところで、ラインラント=プファルツ州には1100基を超す風力発電がすでに立地されているので、風力発電があるライン川流域の写真を掲載しようと、私がいつも使用しているトリップアドバイザーにある写真のデータベースを検索した。ラインラント=プファルツ関連で660枚の写真があったが、何と風力発電が景色の中に写っている写真はついぞ1枚もなかったのである。

 おそらくこれは、景観保全について世界一厳しいドイツでは、歴史的建造物や旧市街の背景に風力発電が見えないことがガイドライン化されているからではないかと思った。事実確認にはしていないので断言できないが、間違いないと思う。


州内の太陽エネルギーマップ分布図


州内のメガソーラー例


州内の太陽光発電設備容量


州内バイオマス利用(地区内熱利用ネットワーク)


州内バイオマス利用(地区内熱利用ネットワーク)


州内のバイオマス利用の各種数値


州内のバイオマス利用

 州内での地熱利用についてのイメージであるが、地熱は明確にベースロードと位置づけられている。


州内での地熱利用


◆2030年までにすべてを再生可能エネルギーでまなかうための野心的試み

 以下は2030年までに100%の再生可能エネルギー(RE:Renewable Energy)供給を目指すラインラント=プファルツ州の野心的ネルギー戦略についての技術的、システム的側面についての情報である。

 電力需要の100%をREで供給するというラインラント=プファルツ州の試みでは、当然のことながら電力需要供給バランス、負荷変動への対応、電力蓄電などの技術だけでなく法的枠組にも新たな枠組が必要となる。ラインラント=プファルツ州では、敢えてその難題に先進国で最初に取り組んでいるのである。

◆ドイツ:ラインラント=プファルツ州(ドイツ語:Rheinland=Pfalz)
 2030年までに100%の再生可能な電力を目指す


 2030年までに再生可能エネルギー(RE)によって電力需要の100%を供給することを目標にしたドイツ・ラインランチ=プファルツ州のエネルギー戦略は、ドイツとEU双方における再生可能エネルギーの拡大の最前線にある。

 ラインラント=プファルツ州のこの野心的なエネルギー目標は、電力分配システムの拡張や再編に対応するための革新的でインテリジェントな新技術の必要性を提起するものである。

 地域の再生可能エネルギー供給と負荷変動にいかに対応させるか、そのために需要管理と電力蓄積をどう活用するかが重要なものとなる。経済・気候保護・エネルギー・国土計画大臣による外部期間への委託研究では、電源システムの100%再生可能エネルギー化の影響についてはEnergynautics、エコ研究所e.V.そして法律事務所のバード&バード法律事務所が研究業務を請け負っている。

 本研究では、電力配分システムに再生可能エネルギーを統合するための特定技術がコンピュータ・シミュレーション・モデルによって検討され評価されている。また、本研究で重要なのは、法的枠組と実際の配送電システム(グリッド)との統合のための障害を明らかにするだけでなく、法的枠組を改善するための制度的な方法を開発することにもある。電力供給システムの将来的役割と同システムの運用の権限、組織についても同様に研究されている。

 配送電システムの研究には、以下の課題も含まれている。

 ・ネットワーク拡張コストの最小限化研究
 ・ネットワークの拡張性と柔軟性についての研究
 ・柔軟性オプションの優先順位付け
 ・法的枠組の検討事項

Source; 2030enlarge map
Germany: Rhineland-Palatinate aims at 100% renewable electricity by 2030

 ところで、ラインラント・プファルツ州には原子炉が1基あったはずだ。これについて、ドイツのベルリン在住の知人から以下のメールが届いたので以下に紹介する。


 ラインラント・プファルツ州には原子炉1基(ミュルハイム・ケアリヒ)です。現在廃炉中ですが、この原発はドイツでもいわくつきの原子炉です。

 建設の初期段階で、タービン建屋の下に断層があることがわかって、設計の変更(タービン建屋の位置変更)が必要になったのですが、最初の工区に出 ていた建設許認可をそのままにして、二回目に出す建設許認可の申請で設計変更することで電力会社側と当時の州首相コール(後のドイツ首相)が内々 に取り決めていて、それが後になって問題になり、住民がしつこく提訴して何回も裁判が行われ、最終的に90年代に建設許認可無効が法的に確定しま した。

 実際には原子炉は全体で1年ほどしか稼働しておらず、2000年に脱原発を決めた時に廃炉が決定しています。

 廃炉は直接解体方式です。世界最大の廃炉現場、ドイツのグライフスヴァルト原発で取材していますが、そこにこのミュルハイム・ケアリヒ原発からきた弁などが除染されていま したね。

 小生の記憶違いでなければ、同州にはその原発の近くにドイツGNS社のキャスク製造工場もあります。

 なおドイツの場合、中間貯蔵は電力の責任で行い、監視は州管轄、最終処分だけが電力が貯めた引当金で国の管轄で行い、監視も国が行います。

 ※ ドイツの原子力発電所 Wikipedia


 なお、ラインラント=プファルツ州エネルギー庁の公式ホームページは、以下をご覧いただきたい。

 ラインラント=プファルツ州エネルギー庁
 http://www.energieagentur.rlp.de/





つづく

 下は使節団にいただいたラインラント=プファルツ州エネルギー庁の資料の表紙である。