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ソレントは、わずか人口1万7千のまちだが、伝統工芸品に関してはおそらくイタリア随一の感がする。それが単なるイタリアのどこにでもある観光地と一線を画すだけでなく、地域産業の中核をなしていると推察できる! ソレント市長自身の紹介によれば、ソレントの伝統工芸は「考古学セクションから象眼細工、カポディモンテの陶器、1800年代のナポリ派の絵画など幅広い所蔵品を誇ります。テラスからはナポリ湾を望むことができます。 ソレントの歴史的中心地にははめ木細工があります」*。市長の言葉にあるハメ木細工(日本で言う寄せ木細工か)こそ、ソレントならではの伝統工芸品である。 出典:*イタリア旅行情報サイトJAPAN-ITALY Travel市長が語る我が町観光自慢 そう、ソレントはさまざまな伝統工芸品のメッカなのだ。 バッグなどの革製品、とりわけ「はめ木細工」のメッカである。カソリックの総本山でメッカというのも辺だが、事実そうなのである。いずれも秀逸、卓越している!こと伝統工芸品に関して値段もリーズナブルだ。 実際、ソレント旧市街の狭い路地沿いにある小さな店をのぞくと、いかにも職人肌のおじいちゃんが「はめ木細工」や「カメオ」の工芸品を造っている。もちろん、大きなお土産屋にも、寄せ木細工の土産物や電動糸鋸がおいてある。 ソレントで最初にすばらしい「はめ木細工」を見つけたのは、サンタニェーロからソレントに散歩していた時のことだ。 海沿いの世界的に高級ホテル、エクセルシオールの壁沿いを歩いていると、ちょうどホテルの敷地が終わった次の壁に、埋め込まれたようなはめ木細工のウィンドーがあった。そこに下の写真にある2匹の猫のはめ木細工があったのである。なんともかわいらしい寄せ木細工だ。 13ユーロは安い!と買おうとしたが、店が休んでいて買えなかった。なんとも心残りである。 ソレントで最初に出会ったかわいらしいはめ木細工。 よく見ると、はめ木部分がよく分かる。 旧市街は迷路のようになっている。それぞれの路地からさらに小さな猫道のような裏路地が展開している。坂の町なので地形と相まって歩きながらウィンドーを見るだけでも楽しい。 伝統工芸の店が並ぶソレント旧市街の路地にて、筆者 ソレントの寄せ木細工については後で触れるとして、ソレントの伝統工芸をざっと見てみよう。まず、手刺繍の工芸品(刺繍に手織りはないので手刺繍に)、かわいい小物入れ、風呂敷、ネクタイ、ハンカチ、果ては女性用下着まで多種多彩だ。 入り口でウインドーを見ていると、店のおじいちゃんがニコッと笑らう。けっして近寄ってどうですか?などとは言わないところがしおらしい。ヴェネツィアにも似たような伝統工芸、たとえばガラス細工(ベニスはその道で超有名)がある。ベニスの場合、結構、客引き的な店が多かったが、ソレントではそれがまったくない。 刺繍細工の店 これも刺繍細工の店 次はカメオだ。カメオは、瑪瑙、大理石、貝殻などに浮き彫りを施した装飾品だ。カメオは古代より装飾品として愛され、古くはローマ時代のものも発掘されているという。おそらくソレントのカメオ細工もローマ時代からつづいているのだろう。 近年ではイタリアで工芸品として貝殻に彫り出したシェルカメオが、装飾品として珍重される。溶岩に掘り出したラバーカメオより、ストーンカメオに高価なものが多い。カメオに彫られた人物像をさらにダイヤモンド、ルビーなどで装飾したものはカメオ・アビレと呼ばれ珍品となっている。 これはカメオ細工の店 これもカメオ細工の店 ソレントの地にもヴェネツィアン・ガラス細工がおいてあった。下の写真はベニスのムラーノ(Murano)の伝統工芸品、ムラーノ・ガラス細工(Murano Glass)である。ペンダント、ブローチ、イヤリングなど。どれも色がすばらしい。 ムラーノのガラス細工 次は石けん細工だ。下の写真にあるデッサンは、いずれも石けんでつくったものだ。ちょっと調べるとイタリアは石けん細工で結構有名なよう。実際、アマルフィの小さな店でも石けん細工を売っていた。単に生活必需品としてだけでなく、装飾品としても石けんを売っている。下の写真の石けんは見るだけでも楽しい。 これは何と石けん(ソープ)でつくったいろいろなデザインだ! イタリアと言えばアパレルと皮革細工。もちろんソレントにも沢山のアパレルと皮革製品が所狭しと店を並べているが、なんと言ってもすばらしいのは、店構えというか小さなお店のデザインと色合いだ。旧市街の中世からの古い建築物を巧みに利用してウィンドーを展開している。 もちろんアパレルの店もたくさんある。どれもこれも旧市街にあか抜けたデザインのウィンドーを競っていた! これは革製品 これは新市街のウィンドー。こでもデザインはあか抜けている ところで、ソレントの伝統工芸であるはめ木細工は、南イタリア・カンパニア州の伝統工芸品の中 でも代表的な工芸品である。それは古くから培われた高度な工芸技術が必要とされ、現在に受け継がれている。物としては、上の2匹の猫のような一枚の絵にはじまり、額縁や小箱、小物の入れ、オルゴール付きの宝石箱、チェス台、果ては椅子や机の家具、床材にいたるまで、さまざまなはめ木細工の伝統工芸作品・製品がある。 はめ木細工店のウィンドー この手の壁掛け形式や箱の細工が多い 秀逸ですらしい色の「寄せ木細工」、ソレントにて ところで、なぜ、ソレントではめ木細工かが気になるところだ。 つまり職人芸の技術だけでソレントのはめ木細工があるわけではない。それは寄せ木に使うそらない薄手の木に関係している。ひょっとしたら、地中海を挟み対岸にあるモロッコの「アルガンツリー」と呼ばれるオリーブの木の一種がこの地でとれるかも知れない。 そもそも世界で最初にはめ木細工が生まれたのは、ソレントと言われている。 何と15世紀にこの地、ソレントで誕生したという。はめ木細工の伝統工芸技術が連綿と変化することなく現在に受け継がれているのだ。 作り方だが、木目の色が異なる板を薄くそぐ、それらの木を重ね合わせる。そして一番上の木に花や風景を描く。寄せ木細工の飾りは描いた絵にそい糸鋸で必要となる木片に切り分ける。最後に多くの木片を見本となる画にそい色目、木目を考慮しながらはめ合わせる、と根気のいる仕事である。 日本の箱根にあるはめ木細工もほぼこの工法を踏襲しているらしい。 ソレントのまちを探索していてわかったことだが、ソレントの教会、たとえば「ソレント大聖堂」には沢山のはめ木細工が大聖堂の内部に飾ってある。 下の写真は、その一部だが、協会内の装飾だけでなく、祭司の台はじめ門扉など至る所がはめ木細工でできているのである。イタリア広しといえど、教会の内外これほど寄せ木細工でできている所はないだろう。おそらくこれがソレントが中世の昔からはめ木細工の中心地であったことを示す証左である。 なんと、ソレント関連Webには、こんなはめ木細工もあった。 最後の晩餐の寄せ木細工 つづく |