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大震災とそれにつづく津波、さらに原発事故は甚大な環境汚染を地域にもたらした。原発事故は周辺地域だけでなく、広域的な放射性物質汚染をもたらしているのはいうまでもない。 今回は万一に備えデジタルの放射線検量器はもって行ったが、各種デジタルの水質測定器、大気(PM測定器)などは持参しなかったので、定量的な測定はできなかった。 しかし、瓦礫処理の現場では、どこでも粉塵が舞い上がり、有害物質を含む瓦礫や土砂が水路、河川から海などの公共用水域に流れ込み、水質汚濁や底質汚染を起こしていることは想像に難くない。 ◆公共用水域での甚大な水質汚濁 海、河川、関連湿地などの公共用水域には、瓦礫から出た汚染水、消火現場からの排水などが流入し、相当汚染されている可能性がある。 3.11により海洋研究の一大拠点が壊滅した。 大槌町にある海洋研究の拠点、東京大学海洋研究所付属の国際沿岸海洋研究センターは、人的被害こそ無かったものの、建物は3階まで津波に洗われた。 とくに壊滅的状態となった1、2階では紙媒体と電子媒体による保存データの全てが失われたという。また、港に係留してあった研究船は沈没した。 下は大槌町赤浜地区にある久居市壊滅した東京大学海洋研究所付属の国際沿岸海洋研究センター。 津波で壊滅した東京大学海洋研究所国際沿岸海洋研究センター (赤浜地区)。3月15日撮影。出典:Wikipedia 三陸の海岸には膨大な数の河川が流れ込んでいる。その河川の上流数kmまで津波が押し寄せ、河川周辺の農村集落に甚大な影響をもたらした。環境面からとくに問題となるのは、農薬、殺虫剤、除草剤などが多量に河川に流出したり、瓦礫に含まれる有害物質や有機物が河川に流出することで河川や海が汚染されることだ。 また古い公共施設や学校、工場でアスベストを使用していることも多い。大震災、津波、火災によりそれらが瓦礫にまみれたり、直接河川に流れ込む可能性もある。 以下は、大槌港に流れ込む小槌川の河口部にある水門だが、グーグルマップで上空から見ると河川が海に流れ込むギリギリのところで膨大な瓦礫、材木などが貯まっていることが分かる。 大槌港に流れ込む小槌川の河口部 出典:グーグルマップ 小槌川の河岸に積まれた瓦礫 2011.8.24 撮影:青山貞一 小槌川の河口堰 2011.8.24 撮影:青山貞一 私たちが現地視察した際は、下の動画に見られるように、すでに上記の河川に貯まっていたゴミは排除されていたが、被災地域には膨大な数の河川があり、それぞれの河川から海に有害物質を含むゴミが流れ込んだことは間違いない。 大槌町大槌川河口の水門付近で撮影 2011.8.24 動画撮影:青山貞一 ◆瓦礫焼却による甚大な大気汚染 環境汚染面から見ると、放射線、放射能の著しい影響がないと思われる岩手県南部、宮城県北部にあっても、3.11から5ヶ月たった現在でも瓦礫処理(解体、収集、運搬、分別、運搬、仮置)までが精一杯な地域が多い。 それらの各種の瓦礫を具体的にどう中間処理、処分するかの方針が今後のまちづくりとの関連、処理費、作業員、作業機器、設備、処分場確保との関連で明確になっていないことから、せいぜい大まかに分別した瓦礫(木・プラスチック系、金属系、コンクリートガラ系、土系など)が高く積まれている現状があった。 釜石市の瓦礫 2011.8.23 動画撮影:青山貞一 当然、上記には有害な化学物質、アスベストなどが含まれれている可能性もある。火災が起きた地域ではダイオキシン類はじめ各種の重金属類、農薬類などの有害化学物質が大気、土壌、水を汚染することになる。 さらに、安易に瓦礫を焼却処分すれば、放射性物質問題が無くても、ダイオキシン類はじめ各種の重金属や有害物質が大気だけでなく排水、灰類が周辺の環境を汚染する可能性があるだろう。 釜石市にて 2011.8.23 動画撮影:青山貞一 私たちが帰京してまもない8月28日、釜石市は被災地ではじめて瓦礫を市の焼却炉で燃やすと発表した。下の写真は現地調査時に撮影した平田地区の焼却炉である。 釜石市平田地区で今後瓦礫を焼却する焼却炉(溶融炉) 撮影:青山貞一 この焼却炉(溶融炉)が立地している場所は、釜石市の釜石大観音がある丘陵の直下である。下の写真は釜石大観音から撮影した釜石市の焼却炉である。当日はすごい霧が発生しており視界が極端に悪かった。 専門的になるが、このような地形が複雑でしかも山間地の谷間に焼却炉(溶融炉)がある場合、ダウンドラフト、ダウンウォッシュと言って、煙突から出た煙はうまく拡散せず、すぐに地表に落ちることが物理現象として分かっている。 撮影:青山貞一 焼却炉(溶融炉)からの煙がダウンドラフト、ダウンウォッシュにより風下近くの平田町に大量に落ちる可能性は高い。瓦礫焼却宣言をする前に、地形を考慮した3次元の流体シミュレーションなどにより、煙がどこに落ちやすいか、濃度はどのくらいかを調査すべきである。 釜石市平田地区で今後瓦礫を焼却する焼却炉(溶融炉) 焼却炉は写真右上の大観音の左下にある 出典:グーグルマップ 動画撮影:青山貞一 焼却炉(溶融炉)がある場所は、上の動画でも分かるようにすばらしい入り江に面しており、今後、この焼却炉(溶融炉)で燃やされる各種瓦礫から出るダイオキシン類を含む有害物質が周辺の土壌や海を汚染する可能性は十分あり得る。 ●釜石市の焼却炉(溶融炉)についての補講(池田こみち) 釜石市は新日鉄の企業城下町、日本最初の高炉跡も残っているまさに「鉄のまち」である。ごみ焼却に関しては、日本最初の溶融炉を導入した町として有名である。釜石市栗林町に建設され1979年から稼働していた新日鉄が開発したガス化・高温溶融炉方式によるごみ処理施設は操業31年にして力尽き、2010年12月30日に閉鎖となった。これから3億円をかけ、施設内のダイオキシン類などの有害物質の調査及び解体撤去の作業が始まるところである。 旧ごみ処理施設:釜石市清掃工場(釜石市栗林町 県道35号線、鵜住居川沿い) 直接溶融・ガス化溶融炉 全連続式 処理能力 54.5t/日×2炉 BF付き 稼働開始年月日は1979年9月1日 そして新ごみ処理施設は2011年4月から操業開始を予定していた。新工場は、公設民営方式として整備され、同じくガス化溶融炉方式のごみ処理施設となっている。工場のホームページを見ると、平成23年3月11日に発生した東日本大震災による大津波では、約1億円の被害が生じたが、奇跡的に建物への浸水をまぬがれ、その復旧工事も完了し、4月から一般ごみと併せて構成市町の災害ごみも受け入れ順調に稼動しているとのことである。 ◆新ごみ処理施設の概要(http://www1.ocn.ne.jp/~en-nan/jigyou3.html) ・工事名 岩手沿岸南部クリーンセンター整備運営事業 ・発注者 岩手沿岸南部広域環境組合(釜石市、大船渡市、陸前高田市、 大槌町、住田町) ・設計施工 新日鉄エンジニアリング株式会社グループ ・建設地 岩手県釜石市大字平田第3地割81番地1 ・敷地面積 21,148u ・工 期 平成20年8月から平成23年3月 ・建設内容 焼却施設(シャフト炉式ガス化溶融炉) ・施設規模 147t/日(焼却施設) 10.5t/日(破砕処理施設) しかし、今回の視察からも明らかなように、津波の被害を受けた瓦礫は、通常の家庭や事業所からの一般廃棄物とは明らかに性状が異なっている。津波で流出した油や有害物質、泥にまみれ、金属類からプラスチック類、木材類、などが雑多に混ざり合い、まさにいったん埋め立てられた産業廃棄物を掘り起こしたような状態のものである。海水に浸って塩分も含んでいる。 ガス化溶融炉で高温処理するとはいえ、このような瓦礫類を地域の焼却炉(ごみ処理施設)において焼却処理することについては、従来の法律(廃掃法や大気汚染防止法など)の枠を超えて、未規制物質についての監視を行っていくことが不可欠であると思われる。 まして、新清掃工場のように立地位置が煙突からの排ガスの拡散を阻害するような地域にあっては、排出された大気汚染物質が地域に滞留することも考えられる。公設民営方式は、施設の建設や維持管理に際して、民間企業の経済力、技術力に大きく依存し、100%公設での建設に比べて事業を進めやすいというメリットがある。今回のケースでは、維持管理費用を含めて15年間で200億円近い契約額、年間にすれば13億円にもなるわけだが、果たして周辺環境のモニタリングや施設の維持管理の監視については、どのような体制がとられているのか、確認しておく必要があるだろう。 以下、新工場についてローカル紙の記事を引用する。
つづく |