◆瓦礫撤去後のまち復興のメドたたず
〜まちづくりのグランドデザインが不可欠
今回現地視察した被災地域に共通しているのは、3.11から5ヶ月以上経っているものの、瓦礫処理の目処が立った自治体(大槌町、陸前高田市、大船渡市)でも、今後のまちの復興にほとんどメドがたっていないことである。
これは、まち復興のグランドデザインが明確になっていないことにあると思える。すなわち、一応瓦礫の整理(処分はまだ)はしたものの、今後、まちをどう復興するか?
今までのように臨海部の平地にまちを再建するのか?
それとも高台や丘陵、林野を切り開きそこに住宅を造成するのか?
などが明確になっていないことを意味する。
土台だけ残った市街地。岩手県大槌町にて
撮影:青山貞一
岩手県陸前高田市にて
撮影:青山貞一
●復興は安全で安心、環境に配慮した
持続可能なまちづくりのグランドデザインから
このグランドデザインは、復興のための各種のインフラ整備はじめ巨額の資金がともなうものであり、ここで間違えると将来に大きな禍根を残すこともある。さらに平地にまちを復興する場合、将来、再度大きな津波がきた場合にどう物理的に対応するかという大きな課題がある。
青山貞一、池田こみちは、この重要課題について、瓦礫処理に連携し、海岸側に20−30mの防波堤(防潮堤)を構築する政策提言をしている。この政策提言は、欧州諸外国における実例をもとに、日本の廃棄物処理法、沿岸法など現行法とも齟齬がない形で構築が可能であり、費用対効果にも優れた方法であると考えている。
東日本大震災の瓦礫の処理に関連し、日本政府(環境省)は、私たちが30年間批判してきた燃やして埋めるやり方を瓦礫に適用しようとしている。
だが、この「燃やして埋める方式」は、汚染を大気、水、土に広げるだけで、本質的な問題解決にならないことは間違いありません。ましてや放射性物質を含む場合は論外である。
また瓦礫処理を廃棄物処理という範疇だけで、目の前の瓦礫をなくすだけの処理では今回、まちづくり、とくに津波対策との関連では問題解決にならない。
津波対策を考慮した瓦礫処理として私はひとつの大胆な計画を提案する!
それは沿岸域の陸側最先端部分に、コンクリート構造物で管理型処分場に類する堰堤、防波堤型の処分場をつくることである。
まず、提案する防波堤型の瓦礫処理の概念図を以下に示す。
出典:青山貞一、池田こみち
これは堤防型の管理型最終処分場の中に、瓦礫類を燃やさず埋め立てることになる。 規模は、たとえば堤防ブロック一つ当たり、幅(30m〜50m)×長さ(50〜100m)×高さ(15〜30m)とする。この防潮堤、防波堤を兼ねた瓦礫の処分場を地域の実情に合わせ、10、20と連たんさせることになる。
以下に平面図を示す。
出典:青山貞一、池田こみち
処分場の上には、表土をかぶせ低木などを植える。
当然、時間がたてば表土は沈降、沈下する。
必要に応じ、たとえば福島県の場合には、遮断型として管理型処分場の上にコンクリートのフタを付ける。福島県内の海岸では、放射性物質を含む土砂、瓦礫が多くなるので、遮断型とすれば万全である。
また瓦礫は分別し、この処分場に処分するのではなく、仮置し、将来、リサイクルなりリユースできるものはすればよい。
こうすることで、ほとんど瓦礫類を遠隔地に運ぶ必要も、燃やす必要もなくなる。環境汚染は通常の管理型処分場と同じであるから、2次処理まですれば排水を公共用水域に流すことも可能である。
ただし、福島県の場合は、放射性物質を含む瓦礫となる可能性が大なので、遮断型とし内部に雨水、海水が入り込まないような構造とし、放射性物質を含む排水が外部に出ない構造とする。
一方、宮城県、岩手県など、放射性物質を含む瓦礫がほとんど存在しない場合は、コンクリート構造の管理型処分場とし、コンクリートのフタを付けない場合は、2次処理まで可能な水処理施設を50〜100mの間隔でつける。
コンクリート構造物は汚染水の重力浸透を防ぐので水処理装置を常時モニタリングしながら監視すれば汚染の問題は深刻にならないであろう。
10年以上経ったら、小高い古墳状の緑地でありスーパー堤防となる。もちろん、この場合には、その内側の平地でまちづくりが可能となるので、新たに山を削ったり造成する必要もない。
この方式のヒントは、北イタリアでミラノ北にあるセベソにある。またスーパー堤防はオランダのペッテンやデンフェルダー地方にある。
オランダのペッテンやデンヘルダー地方にある堤防の断面概念図
出典:青山貞一、池田こみち
以下の写真はオランダのペッテンにあるスーパー堤防である。
堤防の海側は自転車道路となっており、自転車が高速で走行している。オランダのペッテンの堤防では、それより海側の波打ち際は散歩道や犬の散歩道、ドッグランとなっており、鎖を解かれた犬が喜んで泳いでいた。
オランダのペッテンやデンヘルダー地方にある堤防
撮影:青山貞一
また堤防の陸側は、牛、羊などの家畜の放牧場となっていた。
オランダのペッテンやデンヘルダー地方にある堤防
撮影:青山貞一
さらに上の断面イメージにあるように、陸側にはもう一つの防波堤があり二段構えとなっていた。その外側には、以下のようなかわいらしい住宅がたくさんあった。
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防波堤の内側の住居
撮影:青山貞一
費用対効果は計算していないが、従来の日本の運んで燃やして埋める方式に比べれば環境負荷、環境汚染は大幅に少ないし、もとより大津波を考慮したフリーハンドのまちづくりが、震災以前の従来の平場で行えることになる。となれば高台を造成したり、隣地開発し大規模な住宅地を造成する場合に比べ、B/Cは絶大だと思う。
なお、防波堤(防潮堤)の高さは、明治三陸津波及び東日本大津波の各地の波高を考慮すべきである。以下の表によれば、波高の高さは地形などの条件で、地域により異なるが、およそ15m〜30mとなろう。
調査対象地域別津波犠牲者比較(推計未了)
★岩手県
津波被害者数
2011年 1896年(推定値)
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大槌町 1,450人 900人 ( Max8.85m, Ave5.67m)
釜石市 1,180人 8,181人 (Max14.6m, Ave11.9m)
大船渡市 449人 3,143人 (Max26.13m, Ave11.16m)
陸前高田市 2,098人 845人 (Max32.6m, Ave8.5m)
★宮城県 津波被害者数
2011年 1896年(推定値)
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気仙沼市 1,411人 1,467人 (Max21.5m, Ave7.32m)
( )内は最高波高
出典:東京都市大学青山研究室、環境総合研究所(東京都品川区) |
<参考>
青山貞一:ペッテン、温暖化防衛の最前線
青山貞一:デン・ヘルダー、温暖化防衛の最前線
青山貞一:北イタリア紀行〜セベソ 化学工場爆発から30年
もちろん、高台に住み、漁業者が容易に浜辺に降りれるタイプのまちづくりも提案したい。これはイタリアのソレント半島及びアマルフィ海岸を参考にしたものである。さらに、福島県の江名走出など小さな漁村などでは上記の方法以外に別の方法を提案したい。
つづく
岩手県内被災地に貼ってあった陸前高田のポスター 撮影:青山貞一
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