エントランスへはここをクリック   


岩手県 歴史短訪
中尊寺/毛越寺
@はじめに苦言を少々
青山貞一 池田こみち
掲載月日:2011年9月24日
 独立系メディア E−wave 無断転載禁

◆岩手県歴史短訪 世界遺産になった中尊寺
歴史短訪・中尊寺/毛越寺 @はじめに苦言を少々
歴史短訪・中尊寺/毛越寺 A中尊寺を歩く
歴史短訪・中尊寺/毛越寺 Bそして金色堂に
歴史短訪・中尊寺/毛越寺 C金色堂覆堂とその周辺
歴史短訪・中尊寺/毛越寺 D白山神社ととその周辺
歴史短訪・中尊寺/毛越寺 E平泉文化と毛越寺
歴史短訪・中尊寺/毛越寺 F毛越寺を歩く(前編)
歴史短訪・中尊寺/毛越寺 G毛越寺を歩く(後編)

●はじめに苦言を少々


 2011年8月下旬、三陸の被災地現地調査の合間そして一段落したとき、私たちはいつものように、近くにある史跡への歴史短訪を行った。

 今回の歴史短訪の目玉は、世界遺産(文化遺産)となったばかりの岩手県平泉町の中尊寺、毛越寺である。


撮影:青山貞一


 はずかしながら私が平泉に来たのは、高等学校の修学旅行で東北を訪れて以来のことである。当時のことはほとんど記憶にないが、今回、平泉の中尊寺、とくに金色堂を見てびっくりした。

 当時は、ひっそりとした平泉の山の中に、ほとんどまともな参道さえなく、金色堂も今回見たキンピカのものとはまったく「別物」であった。これは同行された池田さんも同じことを言っていたから間違いないところであろう。


出典:テレビ東京、世界遺産となった中尊寺特集

 私は欧州を中心に、膨大な数の世界遺産を現場で見てきたが、これほどキンキラキンで「演出」、「脚色」している「文化遺産」ははじめてだ。

 ちょっとやり過ぎな感じが否めない。

 鄙びたところにこの種の歴史文化遺産は意味と価値があるのに、ここまで整備や脚色をしていると元来の良さが半減する。

 たとえば日本人はほとんど行っていない、モンテネグロのコトール(Kotor)という超辺鄙な場所にある世界遺産の場合、おそらく平泉中尊寺に負けず劣らぬほど古い文化遺産だが、ほとんど観光客を当て込むような余計な「脚色」をしていない。今や日本でも有名になったクロアティアのドブロブニクでも同じだ。


モンテネグロにある世界遺産、コトル
撮影:青山貞一

 さらに面白くなかったのは、金色堂の写真や動画撮影が禁止されていたことだ。メイン中のメインの写真が撮れないのにはがっくりきた。昔の金色堂は見かけはボロだったが、写真撮影はできたはずだ。

 諸外国を見れば、世界に冠たる歴史文化資源の宝庫であるイタリア、たとえばローマの歴史地区、それもたとえばバチカン博物館でさえ、ほとんど問題なくどんな文物、絵画でも撮影ができる。


バチカン美術館(博物館)地図の回廊(Gallery of Maps)
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10


ラフェエロの『ボルゴの火事』(Fire in the Borgo)
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10


 欧州各地の世界遺産や寺社でストロボ撮影を禁止する場所はないではない。また博物館などでは、三脚を使った商業用の本格的な撮影を禁止したり、有料にすることはある。

 バルト3国各地の世界遺産、歴史地区の場合、多くは写真撮影を希望する場合には、入場料とは別にお金を払ったり、さらに三脚を使う場合にはさらにお金を払うというのが何度かあったが、それらは例外だ。

 中尊寺の場合、拝観料(入場料)を800円も徴収しながら、デジカメや家庭用のビデオカメラでのストロボなしの撮影まで禁止するのはいただけない。



 ひょっとすると、撮影させると絵はがきが売れなくなるなどケチな考えをもつ事業者がいるが、仮にデジカメで写真を撮ったからと行って絵はがきや資料を買う人は買うのである。

 ところでJRが新幹線車内で無料配布しているトランヴェールの2011年9月号でも大々的にキンピカの中尊寺の写真が掲載されていた。

 また、BSテレビを見ていたらテレビ東京で世界遺産となった中尊寺特集をしていた。そこではテレビカメラがさんざんハイビジョンで金色堂を執拗に映し出していた。

 おそらくテレビ局やJRがカネを出したから許可したのだろうが、これでは本来、世界各国市民の共有物であるはずの世界遺産を私物化、商業営利化していると言われても仕方ないだろう。非常に不愉快であった。 


つづく