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●特集:奥秩父、滝川上流の遭難事故を検証する 青山貞一:日テレ取材班の奥秩父遭難を検証する @経緯と事故の場所 青山貞一:日テレ取材班の奥秩父遭難を検証する A貴重な現場動画 青山貞一:日テレ取材班の奥秩父遭難を検証する B詳細分析 青山貞一:日テレ取材班の奥秩父遭難を検証する C遭難の原因リスト 青山貞一:日テレ取材班の奥秩父遭難を検証する D尾瀬での経験 青山貞一:日テレ取材班の奥秩父遭難を検証する E3次元シミュレーション ●特集:奥秩父遭難現場視察報告 2010.9.19 青山貞一:秩父再訪を敢行して 日テレ取材班遭難現場調査 青山貞一:奥秩父遭難現場視察報告 @現場周辺の状況 青山貞一:奥秩父遭難現場視察報告 A遭難事故の再検証 青山貞一:奥秩父遭難現場視察報告 B使えない携帯電話(通話・メール・GPS) 青山貞一:奥秩父遭難現場視察報告 C3次元想定ルート図 青山貞一:奥秩父遭難現場視察報告 DGPSデータによる検証 そういう私たち(青山貞一、池田こみち)も、沢登りの遭難ではないが遭難を身近に感じたことがある。 ■残雪の大清水→尾瀬沼 2009年5月のゴールデンウィークの5月5日、残雪かつ山開き前の尾瀬に登山した。このときは、戸倉→シャトルバス→鳩待峠からトレッキングで尾瀬ヶ原を目指すルートではなく、車で群馬県片品村の大清水まで行き、大清水から入山し一ノ瀬、三平峠経由で尾瀬沼を目指すルートをとった。 しかし、私たちの環境総合研究所の保養所がある北軽井沢から片品村へは、同じ群馬県内でも県の西端から東端まで行かねばならず相当の距離がある。 当日は朝食後すぐに北軽井沢の別荘を車で出たのだが、途中川場村に寄ったこともあり、大清水に到着した時はすでに昼過ぎとなってしまった。 午後1時半に入山し、尾瀬沼まで登り、大清水に戻るのは夏なら十分可能であるがが、残雪があり気温も低い5月上旬にあっては少し不安があった。ただ天候は幸い曇りだったが雨は降りそうになかった。 下の写真は、大清水の休憩所から尾瀬沼を目指す登山道ルートのゲートの前の池田こみちさんである。右に第2駐車場があり登山者はクルマをそこにおいて行く。 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.5.5 大清水のゲートから一ノ瀬の休憩所までは標高差で約200mある。 一ノ瀬までのいわばアプローチは、ゆったりとした傾斜の林道の砂利道を歩く。時間はおよそ1時間である。 一ノ瀬休憩所から尾瀬沼までは、林道はなく登山道となる。一ノ瀬から尾瀬沼までは夏なら、約1時間20〜30分で登れる。残雪がある木道は、雪と土砂でぐちゃぐちゃとなっていて歩くのは楽でなかった。 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.5.5 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.5.5 下の図は、<大清水>→<一ノ瀬>→<岩清水>→<三平峠>→<尾瀬沼>のルートと標高を示している。 大清水から尾瀬沼までのルート地図 大清水の標高は約1200m、一ノ瀬は約1450m、岩石清水は約1600m、三平峠の標高は約1780mである。 大清水→一ノ瀬→三平峠→尾瀬沼の標高図(試作) ヤマレコの基本図に青山貞一が調査し記入したもの(赤色部分) 片品川に沿って一ノ瀬に向かう。 一ノ瀬からは、随所に残雪がある。以下は一ノ瀬から150mほど登った約1500mの地点。 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.5.5 沢沿いの登山道は、下の写真にある幅員はもっとも広い場所であり、この後は50cmもない場所も多くなる。そこに残雪がある。一歩間違ったり滑ると2〜5m下にある沢に転落してしまう。 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.5.5 この辺(↓)は約1600m。岩清水を通過する。木道がおおくなる。 一ノ瀬から尾瀬沼までのコースには、半分ほど木道がある。夏ならこの木道が登山に有効なのだが、残雪の5月上旬だと、木道の上に雪があると、雪が木と木の上そしてその間にも残り足を取られ転倒したり、つんのめることになり、非常に危険である。 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.5.5 下はナメ沢近くの雪原。 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.5.5 この辺に来ると標高は約1650mとなりしかも登り勾配が急になる。それだけでなく木道が雪で埋もれ、非常に歩きにくくなる。また登山道から沢の差は大きくなり5〜10mとなる。 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.5.5 さらに30分ほど登る。一ノ瀬からは1時間以上歩いている。おそらくあと100mも登れば三平峠(1780m)となる。 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.5.5 あと1時間足らずで尾瀬沼という三平峠(上の地図参照)の直前で、下山者がこれから尾瀬沼に行っても帰りが暗くなり厳しくなること、また尾瀬沼は凍結しており、その周りも残雪で見るべきものが少ないという話を受け、この時点で最終的に登山をあきらめ折り返すことにした。 ここから一ノ瀬経由で大清水に戻ると、夕方5時過ぎなっていた。もし、尾瀬沼まで行けば大清水への帰途は暗くなっていたはずだ。 ■2日前に同じルートで遭難者 ところで、私たちが入山した5月5日の2日前の5月3日、横浜市の男性3人が私たちとほぼ同じコースで入山していた。そのうちの一人が体調不良なので「すぐについて行くので先に行って欲しい」と残り2人に告げた。残り2人は先に進んだ。 その後、いつになってもその男性から連絡がなく、2人は下山後、すぐに県警に連絡した。県警が遭難救助隊を組織し、大清水から尾瀬沼に向かう途中、ナメ沢から500m以上離れた雪原で男性の死体を発見している。 さらにインターネットで検索すると5月4日付けの以下の記事も発見した。
以下は5月6日の日本テレビの定時ニュース(NNN)である。
おそらく読者の多くは、大清水→尾瀬沼のルートで「遭難」? それも死亡事故など起こりようもないと思うだろう。 しかし、それは真夏の尾瀬のことであり、雪が多く残る春の尾瀬の場合、登山の時間や当日の気象、装備、体調いかんで遭難が起こっても不思議ではないのである。 実際、私たちははじめから入山時間や装備の不備に不安があったし、もともとトレッキングに毛の生えた程度のルートとたかをくくっていた。その私たちが尾瀬沼直前で登山を諦めたのは、下山者の話に加え、入山時に一ノ瀬休憩所に警察のパトカーが駐車していたのを見ていたことがあある。 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.5.5 下山後、よく見たら以下の看板があった。 撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.5.4 つづく |