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●特集:奥秩父、滝川上流の遭難事故を検証する 2010.8.7 青山貞一:日テレ取材班の奥秩父遭難を検証する @経過と事故の場所 青山貞一:日テレ取材班の奥秩父遭難を検証する A貴重な現場動画 青山貞一:日テレ取材班の奥秩父遭難を検証する B詳細分析 青山貞一:日テレ取材班の奥秩父遭難を検証する C遭難の原因リスト 青山貞一:日テレ取材班の奥秩父遭難を検証する D尾瀬での経験 青山貞一:日テレ取材班の奥秩父遭難を検証する E3次元シミュレーション ●特集:奥秩父遭難現場視察報告 2010.9.19 青山貞一:秩父再訪を敢行して 日テレ取材班遭難現場調査 青山貞一:奥秩父遭難現場視察報告 @現場周辺の状況 青山貞一:奥秩父遭難現場視察報告 A遭難事故の再検証 青山貞一:奥秩父遭難現場視察報告 B使えない携帯電話(通話・メール・GPS) 青山貞一:奥秩父遭難現場視察報告 C3次元想定ルート図 青山貞一:奥秩父遭難現場視察報告 DGPSデータによる検証 ここでは、先に行った以下の検証を現地調査をふまえて再度してみた。 ◆使えない携帯(通話、メール、GPS) 今回の奥秩父の現地調査によって明確となったことがある。 それは国道140号線の豆焼橋、林道など遭難現場周辺では、ドコモ、auともに携帯電話、携帯メールがまったく使えなかったことである。ソフトバンク社の携帯は誰も持っていなかったので不明である。 また携帯に付属しているGPS機能*は、衛星を使ったポインティングは可能だが、肝心な現在位置を知る上で必要となる地図情報が携帯の通信回線を使い送られてくるので、携帯電話、携帯メール同様にGPSの地図情報(ラスターデータ、画像データ)も送られてこない。したがって、携帯電話についているGPSはまったく使えないことが分かった。 ※ GPS グローバル・ポジショニング・システム (Global Positioning System):全地球測位システム これは池田さん、鷹取さんが常時持参しているブラックベリーでも同じである。ブラックベリーは日本ではドコモが扱っているが、通話、メールはドコモの携帯同様、遭難現場周辺では使えず、同時にブラックベリーに付属しているGPS機能も地図情報が届かず、鷹取さんの実験でも結果的に使えないことが分かった。 したがって、こと今回遭難事故が起こった奥秩父の地域一帯では、携帯電話を持参しても遭難時の警察、救急に通話、メールは一切利用できず、また登山道などで道を迷った場合の位置情報として携帯付属のGPSが使えないことになる。 これはきわめて重要なことであり、致命的な問題である。 ちなみに、国道140号線の秩父よりにある雁坂峠茶屋山麓亭、滝川渓谷休憩所では、池田さんのauの通話、メール機能が使用可能となった。しかし、ドコモはここでも携帯、ブラックベリーともに使用不能な状態となっていた。 また今回の日テレ取材班取材のもととなったブドウ沢で沢登りをしていた5人のうちの一人が滑落で救急車を呼ぼうとしたときも、いわゆる携帯電話では現地から連絡がとれず、ひとりが携帯電話が使えるおそらく滝川渓谷休憩所近くまで来て、救助ヘリの支援を連絡しているようだ。滑落現場から電波が通ずる滝川渓谷休憩所までは、がんばっても3時間はかかるだろうから、助かる者も助からなくなるだろう。 いずれにしてもたとえば、豆焼橋近くに携帯電話用アンテナ一本を設置すれば十分通話、メール、GPSか使用可能となるので、携帯各社のアンテナ設置を望む。 一方、遭難した日テレ取材班は業務用の無線連絡装置を持っていたとされるが、果たしてその装置(トランシーバー)が滝川の渓流で使用できたかは不明である。もちろん、インマルサットやワイドスターなど衛星無線を使った電話もあるが、これらの使用は非常に高額であり、業務用ならまだしも一般の登山者、入渓者らが持参するのは難しい。また下の写真にあるようにかなりの重装備となり、通常の沢登りで使用するのは困難であろう。 インマルサット 出典:KDDI ワイドスター 出典:NTT たまたま私はいわゆアマチュア無線の国家資格を持っており、移動用にHFからSHFまでの100W出力までのトランシーバーを持参することは可能だが、重量を考えるとせいぜい出力は5W程度となるだろう。アマチュア無線では防災通信、緊急通信も行えるし、訓練もしているので有資格者であれば、これがひとつの命綱となるだろう。 アマチュア無線用トランシーバ 出典:ケンウッド 今回は現地での実験はしていないが、よほど防水加工がされていないと沢を登っている最中に水をかぶり使用不能となる可能性が高い。また果たしてV字型の深い渓谷からVHFあるいはUHFなどのFM電波が秩父市の無線かに届くかどうかは不明である。また誰でもが無線の国家資格(免許)をもっているわけではない。 次に、GPSだが、Garmin社製の個人携帯用のGPSの場合には、地図情報をあらかじめGPSにインストールする方法法採用しているため、衛星が受信できる場所であればどこでも自分の現在位置を知ることができ、ロガーにデータを登録すれば後からグーグルマップなどの地図システムやGIS(地理情報システム)で自分が通った場所の奇跡を詳細地図上に表示させることも可能である。 Gamin社製個人携帯GPS「オレゴン」 出典:Gamin社Web ちなみに、Push Happyさんは、地図情報をあらかじめインストールするタイプの個人用携帯GPSを持参されていた。 下はPush Happyさんが奥秩父の滝川水系で沢登りをした際に記録したGPS情報を元に3次元地図上に、ご自身の踏破記録を赤線でプロットしたものである。日テレ遭難現場も踏破しており、遭難検証作業でも非常に参考になる。 個人携帯GPSを使ったPush Happyさんの奥秩父滝川水系踏破記録 つづく |