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奥秩父遭難現場視察報告
@現場周辺の
自然・地形・交通状況

青山貞一 
20 September 2010
独立系メディア「今日のコラム」
無断転載禁


●特集:奥秩父、滝川上流の遭難事故を検証する
青山貞一:日テレ取材班の奥秩父遭難を検証する @経過と事故の場所
青山貞一:日テレ取材班の奥秩父遭難を検証する A貴重な現場動画
青山貞一:日テレ取材班の奥秩父遭難を検証する B詳細分析
青山貞一:日テレ取材班の奥秩父遭難を検証する C遭難の原因リスト
青山貞一:日テレ取材班の奥秩父遭難を検証する D尾瀬での経験
青山貞一:日テレ取材班の奥秩父遭難を検証する E3次元シミュレーション


●特集:奥秩父遭難現場視察報告 2010.9.19
青山貞一:秩父再訪を敢行して 日テレ取材班遭難現場調査
青山貞一:奥秩父遭難現場視察報告 @現場周辺の状況
青山貞一:奥秩父遭難現場視察報告 A遭難事故の再検証
青山貞一:奥秩父遭難現場視察報告 B使えない携帯電話(通話・メール・GPS)
青山貞一:奥秩父遭難現場視察報告 C3次元想定ルート図
青山貞一:奥秩父遭難現場視察報告 DGPSデータによる検証 

  ここでは、先に行った以下の検証を現地調査をふまえて再度してみた。


遭難現場周辺の自然、地形、交通状況

 救助ヘリを取材に行き遭難した日テレ取材班は、秩父市と山梨県の甲州市の間を走る国道140号線の豆焼橋と雁坂橋にある林道から救助ヘリの脱落現場に2010年7月31日午前に取材に向かっている。

 下の図1は事故現場近くを通る<国道140号線>、<豆焼橋>、<奥秩父トンネル(雁坂トンネル)>、<雁坂橋>、<林道>、<林道終点>、<滝川>、<遭難現場>を一枚の地形図の上に示したものである。


図1 豆焼橋、林道と遭難現場の位置関係
出典:グーグルマップより作成 

 私たち(青山、池田、鷹取)は、国道140号線を秩父方面、すなわち図1の右上から左下に降り、豆焼橋を渡る直前を右折し、下の写真にある「出会いの丘」に停め、徒歩で豆焼橋に行った。


写真1 国道140号線沿いにある「出会いの丘」
撮影:青山貞一  2010.9.19


写真2 国道140号線沿いにある「出会いの丘」にて
撮影:鷹取敦  2010.9.19

 出会いの丘の一角には、ヘリポートが常設してあった。遭難急需で来るヘリはここに一端停機するのだろうか。


写真3 「出会いの丘」にはヘリポートもあった
撮影:青山貞一  2010.9.19

 下は豆焼橋である。この写真は同じ国道140号線上にあるもう一つの橋、雁坂橋から撮影している。


写真3 豆焼沢
撮影:青山貞一  2010.9.19

 豆焼橋を横から見たところ。橋の下は数10mの谷である。


写真4 豆焼沢
撮影:青山貞一  2010.9.19

 この写真も豆焼橋を雁坂橋から撮影したものである。この橋の下はトウグリ沢である。遭難現場はこの写真の右側にある山の裏にある沢で起きている。


写真5 雁坂大橋から見た豆焼橋。この豆焼橋の奥が遭難現場
撮影:青山貞一  2010.9.19

 下は豆焼橋上から雁坂橋を遠望したものである。二つの橋の間は奥秩父トンネル(雁坂トンネル)で結ばれている。遭難現場はこの写真の左にある山の裏側の沢にある。手前に見える渓谷にある沢はトウグリ沢である。


写真6 豆焼橋から雁坂大橋を見る
撮影:青山貞一  2010.9.19

 上の2枚の写真を見るだけでも、遭難現場周辺が山が深く、谷もが切れ込んでいるかが分かるだろう。しかも、奥秩父連峰には標高2000mを超す山が多数ある。

 下は雁坂大橋から豆焼橋方面を見たところ。なぜか、豆焼橋と異なり、雁坂大橋には写真のように幅員の広い歩道(兼停車帯)がある。


写真7 雁坂大橋から豆焼橋方面を見る
撮影:鷹取敦  2010.9.19


写真8 雁坂大橋
撮影:鷹取敦  2010.9.19

 下は国道140号線に架かかる豆焼橋の上で撮影したものでえある。左が鷹取さん、右が池田さんである。


写真9 豆焼橋上の鷹取(左)、池田(右)
撮影:青山貞一  2010.9.19

 下は豆焼橋上の筆者。いつものようにデジタルハイビジョンビデオカメラ、デジカメなどでIT武装」している。今回は登山、沢登りは一切しない。


写真10 豆焼橋上の青山
撮影:鷹取敦  2010.9.19


写真11 豆焼橋上の青山
撮影:池田こみち  2010.9.19

 豆焼橋の下は、豆焼沢である。下の写真で分かるように、この橋の周辺も深い谷が続く厳しい地形となっている。この橋から登山者、沢登り者が出発することもあり、現在、この橋一帯が行政機関のなどの固定カメラの常時監視地域となっている。


写真12 豆焼橋上の池田こみち
撮影:青山貞一  2010.9.19

 下は豆焼橋から林道の入口に向かう筆者である。日テレ取材班とガイドは、2010年7月31日、この林道入口から午前6時30分に滝川渓谷の沢に向かっている。

 現在、この豆焼橋と奥秩父トンネル(雁坂トンネル)周辺には監視カメラが設置されていて、この周辺に車を止め写真撮影などをしていると、危険なので車は止めないようにというアナウンスが繰り返される。 車で来た場合には、車は必ず「出会いの丘」に駐車(無料)することになる。
 

写真13  豆焼橋の端にある林道入口
撮影:鷹取敦 2010.9.19

 以下は林道の入口である。豆焼橋の端、雁坂トンネルの出口(入口)の脇にある。通常、林道内への車の出入りは写真にあるように禁止されている。


写真14 林道入口
撮影:青山貞一  2010.9.19

 林道を入るとすぐにいくつもの看板がある。遭難事故後、さらに増えている。

 下の看板には、黒岩尾根登山道入り口、雁坂小屋まで8.2kmとある。雁坂小屋は今回の遭難現場からは遠く離れた黒岩尾根沿いにある小屋である。ちなみに、この林道入口から遭難現場に近い黒岩尾根までは、2km〜3kmである。


写真15 林道入口にある掲示
撮影:青山貞一  2010.9.19

 下も林道の入り口にあった看板である。

 看板には「この付近の渓谷は険しく非常に危険ですので、入渓にあたっては、十分注意をお願いします。初心者の方や単独では絶対に入渓しないでください」とある。


写真16 秩父警察署と秩父市による入山者、入渓者、釣り人への注意
撮影:青山貞一  2010.9.19

 その昔、雁坂トンネルが完成する前は、奥秩父は山梨側からも秩父側からも車でのアクセスができず、渓流釣りや渓流登りをするひとびとにとって、滝川水系の上流部は秘境中の秘境であったらしい。

 しかし、国道140号が整備されさらに雁坂トンネルが完成してからは、いずれの側、特に東京から中央道で山梨側から雁坂トンネルを抜け、この地に来るのが容易となり、一気に渓流釣りや渓流登り人口が増え、遭難も増えているようだ。

 さらに林道入口には、秩父警察署と秩父山岳連盟の連名で下の登山計画書届け入れも置いてある。おそらく毎日、回収に来ているのだろう。
 

写真17 林道入口にある登山計画書入れ
撮影:青山貞一  2010.9.19

 林道には容易に入れ、林道終点まで歩けるが、今回の現地調査でそこから遭難現場に降りるのは、時間、装備などさまざまな観点から非常に危険である。そこで回は国道140号線の豆焼橋から事故現場に通ずる林道に限っての調査となった。

 林道の途中には下の写真のように、この連休中に来られたと思われるひとが遭難者に花を供えていた。


写真18 遭難した日テレ社員に花束が供えられていた(林道にて)
撮影:青山貞一  2010.9.19

 実はこの林道一帯は東京大学農学部の秩父演習林であった。下の看板はおそらく日テレ取材班遭難以降、新たに設置されたと思われる看板である。


写真19 東大農学部による注意看板
撮影:青山貞一  2010.9.19

 下は林道を行く筆者。遭難現場となった豆焼沢からブドウ沢周辺の谷は、写真右にある傾斜とほぼ同じ30度〜50度の急傾斜と推定される。写真のように林道の上から小さな岩が多数落ちており、林道からヘルメットをかぶっていないと非常に危険であることが分かった。


写真20 林道周辺の傾斜度
撮影:鷹取敦

 下の写真は林道の途中で撮影した遭難現場近くの山と渓谷である。遭難現場は、この谷の右側下の渓流である。すでに初秋、下にススキが見える。


写真21 遭難現場近くの山と渓谷
撮影:鷹取敦

 下は遭難現場から滝川本流を下流側に行ったところで撮影したものである。一番下に渓流が見える。


写真22 遭難現場と類似した山と渓谷。
雁坂峠茶屋山麓亭、滝川渓谷休憩所より撮影
撮影:青山貞一

 下は、林道から撮影した夕闇迫る奥秩父の山々の渾身の一枚。遭難現場は写真の右にある山の谷間にある。撮影したビデオから静止画として切り出している。


写真23 林道から撮影した夕闇迫る奥秩父の山々
撮影:青山貞一 HD-DV カムコーダ 


つづく