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■はじめに 3.11後の福島第一原発事故で分かったように、ひとたび巨大原発事故が起きると、その影響範囲は半径で10km、20kmにとどまらず、30km、50km、100kmなど、とどめなく広がることが分かった。 これは何も各地の空間放射線量のレベル(μSv/h)だけでなく、土壌などに降下した放射能の量(Bq/kg、Bq/km2など)でも明らかである。 下図は日本中の原発立地点を中心に、それぞれ半径100kmで円を描いたものである。この原発汚染影響分布図から直ちに分かることは、仮に半径100kmを影響範囲とした場合、影響を受けない地域はきわめて限定的であるということだ。 出典:青山貞一、環境総合研究所(東京都目黒区) 本州では北から秋田県南部、山形県北部、山梨県北部、横浜、長野県西部、長野県南西部、和歌山県南部、三重県、香川県、徳島県など、本当に限られている。山口県は現状では100km圏からはずれているが、将来上関原発が稼働すればほぼ山口県全域が影響地域となる。 何と、日本政府はこんな簡単な影響地図ですら国民に公開してこなかったのだが、上図では原発立地域に原発が一機であっても、多数機あった場合でも同じ色として示しているが、下図は同一立地域に多くの原発が立地している場合には濃い赤色で示している。 出典:青山貞一、環境総合研究所(東京都目黒区) 上のような簡単なポンチ絵であっても、原発事故によって影響を受ける相対リスクあるいは影響範囲がよく分かる。 その観点から日本を概観すると、実は関西地区は、まさにリスクが日本で最も高い地域であることが容易に見て取れるのである。しかも、京都、大阪、滋賀、兵庫と巨大都市が目白押しの関西地域のほぼ真上の若狭湾地域に15機もの原発が設置されている。 ■ERI版SPEEDI Super Air 3D による 影響範囲のシミュレーション 私たちは、2011年春から従来より環境総合研究所(ERI、東京都品川区)が開発し使用してきた気象、地形、発生源規模を考慮した3次元拡散モデルを福島第一原発事故に適用し、放射性物質の移流、拡散をシミュレーションしてきた。 ◆青山貞一・鷹取敦・池田こみち:福島原発事故に起因する 放射性物質による地域汚染の実態解明と汚染構造の把握(2) 環境アセスメント学会誌、2012年 Vol.10 No.1 http://eforum.jp/aoyama-takatori-ikeda_assess_society-2012-2.pdf ◆青山貞一:脱原発から廃炉への道筋〜『福島』の再生に向けて〜参加記 http://eritokyo.jp/independent/aoyama-fnp10146...html さらに2011年12月から5月にかけ、上記のシステムを日本各地、どこにでも適用可能なシステムとするための研究開発をしてきており、プロトタイプがほぼ完成した。 ただし、実際に原発事故発生時の初期避難用に使うためには、気象庁(気象協会)のアメダスなど、風向、風速の実時間データと連動させる必要がある。。 この問題は、私が国会 福島第一原発事故調査委員会の調査員による3時間に及ぶヒヤリングのなかでもさんざん指摘したが、原子力ムラとは別に気象ムラの存在が立ちはだかっており一つの課題となっている。
◆放射性物質予測、公表自粛を 気象学会要請に戸惑う会員 http://www.asahi.com/national/update/0402/TKY201104020166.html 朝日新聞 これについてはすでにリンクが外れているので巻末の記事内容を参照して欲しい! ※追記 4/6-4/8に沖縄県にがれき広域処理問題ででかけた時、現地の研究者らに伺ったところ、気象学会だけでなく、どうも物理学会、原子力学会なども、会員による論評を自粛するような連絡があったとの話しがあった。まだ100%確認していないが、事実ならトンデモないことだ。もっぱら気象学会は、会長が正会員に対して個人でシミュレーションなどの結果を公表しないようにとお達しをだしたとのことである。 3次元流体計算モデル(偏微分方程式群で表現された運動方程式を有限差分法を用いて近似解を求めるモデル)は、当初、科学技術計算用のコンピュータ言語、フォートラン(FORTRAN)で記述していた。 今回これをC#に全面移植した。これにより対話型のシミュレーション。すなわち条件を変えシミュレーションするなどが、容易となった。また数値計算結果を各種グラフィックス表現するのが容易となった。 私たちの3次元流体シミュレーションシステムは、数十億円するパソコンではなく、パソコン上で稼働する。 研究所だけでなく、たとえば青山貞一の自宅には4台の超高速パソコンが書斎の一角にあるが、これらのパソコンを用いたERI版SPEEDIでは、原発事故時の1時間単位の結果の表示が可能となる。 ちなみに自宅の超高速パソコンは秋葉原のBTOパソコンで1台約5万円だ。 ◆青山貞一:BTO「スーパーパソコン」を駆使する時代の到来! http://eritokyo.jp/independent/aoyama-col8009..html 単純な風速、風向、発生源規模別のシミュレーションの表示であれば、上記の気象情報がリアルタイムで入手可能な場合、数10秒から数分単位のシミュレーションが可能となる。 これらの方法、手法は青山、鷹取が開発してきたもので、おそらく、日本国内はもとより世界でも他に存在しないものと思う。 というのも、国のSPEEDIは数10億円のスパコンを使用しているが、それでも最低1時間はかかると、斑目原子力安全委員長が国会、原発調査委員会で述べているからだ。 今後、若狭湾地域を対象に準備に入るが、追って伊方原発、浜岡原発、玄海原発、新潟の柏崎刈羽原発など他の地域についても準備する予定である。 以下は、ERI版SPEEDIベータ版を使用した若狭湾にある原発からの放射性物質の移流、拡散シミュレーション例である。当然、予測範囲はじめ前提条件、境界条件などは自由自在に変えられる。また一部の条件を変えた場合の結果の変化も分析可能である。 若狭湾にある原発からの放射性物質の移流、拡散シミュレーション例 出典:青山貞一、鷹取敦、環境総合研究所(東京都目黒区) 若狭湾にある原発からの放射性物質の移流、拡散シミュレーション例 出典:青山貞一、鷹取敦、環境総合研究所(東京都目黒区) 3次元シミュレーションに使った若狭湾及びその周辺の地形データ1 出典:青山貞一、鷹取敦、環境総合研究所(東京都目黒区) 3次元シミュレーションに使った若狭湾及びその周辺の地形データ2 出典:青山貞一、鷹取敦、環境総合研究所(東京都目黒区) 3次元シミュレーションに使った若狭湾及びその周辺の地形データ3 出典:青山貞一、鷹取敦、環境総合研究所(東京都目黒区) <参考>
<参考2> 私たち環境総合研究所の超高速シミュレーション技術は、技術的にはハードウェアではなく、ソフトウェアのプログラム内容、アルゴリズムによるものなので、特許出願はしていません。 我が国の場合、ソフトの著作権は登録が不要であり、権利侵害には著作権法にもとづく訴訟を東京地裁に提訴することにしています(念のため)。 つづく |