問われる政策提言、制度設計能力 青山 貞一 掲載日:2004.7.25, 8.1、12.26改訂 |
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◆地方分権時代における都道府県議会の役割 では、地方分権時代における都道府県議会の機能、役割とは何だろう? まず以下は、全国都道府県議会議長会が考える地方分権と都道府県議会の役割である。
◆疑われる議員の基本的資質、能力!? 地方分権との関連でもっとも地方議会、議員に要求される機能は言うまでもなく、政策立案機能であり、政策立案能力である。 一般的に言って、今の日本の地方議会議員の待遇は、彼らが年間実際にしていることに比べ、よすぎるのではないだろうか? 後述するように米国やスウェーデンなど欧米諸国では、昼間に議員以外の本業を行い、夕方から夜にかけ議会を開催している自治体が多いのである。 実際、地方議員には高額な報酬、特権的な旅費や政務調査費をもらいながら、議員として本来具備すべき立法能力や政策提案能力、すなわち資質が備わっているひとが少ないと思う。 議員として具備すべき資質、能力がなければ、立法事務、立法提案など、できようもない。 となれば本来、議員は資質はまだしも、具備すべきことを日夜勉強し少しでも習得すべきである。だが、地方議員の場合、奮励努力、勉強している議員にはあまりお目にかかれない。多くの議員は、よくて当選してから、そのイロハを学んでいる。それでも奮闘努力していればよい方だが。 その結果、地方議会には、ただたまたま立候補し、選ばれただけと、言う議員が議席の多くを占める異常な状況が現出している。本来すべき最低限のことすらない、非常にお寒い現状が日常化している。 問題は、このような議員に限って、地方を蹂躙する法律や法改正に、従順にそれに従う。知事が法律がもつさまざまな課題を解決するために、地方の実情に即した条例案を提案しても、その本質をまったく理解しようとせず、表相的な議論や揚げ足取りの批判、ヤジで対応し、地方からの改革を挫折させている、と言ったら過言であろうか。 たとえば、今の地方自治法は、さまざまな課題がある。総務省(旧自治省)主導の法改正の多くは、その課題を解決するどころか、さらに課題を増やす可能性すらある。 2001年、地方自治法一部改正による住民訴訟制度改正が衆議院で議論された。この改正は以下の記事にあるように間違いなく改悪であった。同時に行われた地方自治法を改正し、市町村合併を推進するための住民投票制度の改正にも多くの問題があった(下の記事参照のこと)。 だが、都道府県知事、市町村長でこれらに疑義を唱え、さらに反対したのは、知事では田中康夫知事、市町村町長ではニセコ町長くらいであった。まして地方議会でこれに反対したり、まともな議論をした議会はほとんどなかったのである。その結果、地方自治法が改悪されたのである。 またこのときに行われた地方自治法改正により、合併特例債までつけ、国主導の一方的な平成の市町村合併がその後、地方行政、地方自治に著しい影響を与えていることは、周知の事実である。
残念ながら日本の地方議会をつぶさにみると、肝心な「政策提言能力とディベート能力」のかけらもないひとが結構、議員になっていることに驚く。批判的精神が旺盛な議員であっても、「政策提言能力とディベート能力」がない議員ばかりでは、有権者は救われない。 ◆制度提案しない地方議員 そもそも、日本の議員の多くは自分たちが立法府、つまり条例などの制度を提案しつくることなどすっかり忘れている。忘れていると言うより、もともとその気がない議員も多い。条例制定のための立法提案など、およそ自分たちの仕事だと思っていない。 これは何も地方議会だけでない。国会議員ですら、衆議院、参議院を通じ、圧倒的多くの立法は政府提案法案(内閣提案法)であって、重要な法案で議員提案はきわめて少ないのが実態ではなかろうか。 私は1999年の冬から夏にかけての通常国会で参議院発の議員立法に係わった。そのとき、参議院法制局の資料から議員立法、それも参議院発の環境立法の数について調べてみたが、確か10年間に1ないし2本しかなかった。参議院法制局にも50〜60名のスタッフがいるはずだから、私たちは膨大な税金をそれらのスタッフに払っていることになる。 参議院予算委員会で後述する青山貞一(左)。この予算委員会で 参議院発の議員提案による環境法が誕生した! それでも衆参議員は野党議員を含め議員提案法案を出しているが、地方議会で議員が重要な政策分野で条例案を提案することはきわめて希である。 ◆もちろん、地方議員のすべてがそうだと言うわけではないが.... 地方議員にも、資質、能力はじめさまざまな意味ですばらしい議員も少なからずいる。 しかし、大変残念なこととして、彼らあるいは彼女らの絶対数が少ない。また無所属か少数会派に属することが多い。その結果、今の地方議会では、ほとんど発言機会や提案機会がもてないと言う実態がある。 これは私が代表理事を務める特定非営利活動法人 「一新塾」(政策学校)※から地方議員になった塾生が寄せる意見からもよく分かる。 ※ちなみに2003年春の統一地方選において一新塾から立候補した塾生のうち、 70%以上が県議会議員、市区町村議員に当選している。さらに2004年秋の 衆議院議員選挙でも4人が立候補し3人が当選している。 一新塾の政策コースでは、「政策提言能力とディベート能力」を特に重視している。それは国、地方を問わず議員として具備すべき最低限の能力であるからだ。 これらの能力はひとにあらかじめあるものではなく、自ら努力するとともに、一新塾のような政策学校で鍛えられはじめて身に付くものと考える。 次へ |