国、自治体の未曾有の財政危機 青山 貞一 掲載日:2004.7.25, 8.3、12.26改訂 |
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◆はじめに 〜まず、国の財政の実態を知る 日本社会の将来、とくに21世紀の大きな課題である中央集権から地方分権国家への移行を考えるとき、それに対応する地方の行政や政治(議会)のあり方について、「量」、「質」、「機能」の3面から考える必要がある。 周知のように、今の日本では国、地方あわせ700兆円超、国民一人当たりに換算すると550万円、一世帯当たり1500万円近くに達する「累積債務」が重くのしかかっている。下図は平成12年までの累積債務だが、その後も現在に至るまで確実に増えている。 言うまでもなくその原因の多くは、バブル期を前後して、毎年国債や地方債を発行し、後先を考えない「経営」をしてきたことにある。民間企業であれば、とっくに企業倒産しているはずだが、自治体はまだしも、こと国については、累積債務を外部評価する手段がなく、次世代、次次世代などに対して無責任な借金を繰り返しているのが実態だ。もちろん、このまま進めば日本の国際的な信用が瓦解する可能性もある。 日本の累積債務の推移。平成15年度ですでに700兆円を超えている。 現在、日本の一般会計はここ数年、予算額の約半分が借金となっていると言う現実がある。すなわち今の日本は、下図にあるように、約半分しか国の予算が税金でまかなえなくなっているのである。こんな先進国は世界広しといえ、日本以外にはない。このことは、日本の多くの自治体にも妥当する。私たちは自分たちがしていることに、責任をもたなければならない。実際、2004年度の一般会計予算も45%が借金に依存している。 いわば、もっと身の丈、身の程を知らねばならないのだ。孫子の代に累積債務、借金を残すことだけは大人の責任として何が何でも抑制しなければならない。 国の一般会計に占める税収の割合が約半分となっている。 <日本の国及び地方の財政破綻を示す各種指標> @参考データ:わが国税制・財政の現状全般に関する資料(平成16年4月現在) 出典:財務省 A参考データ:我が国の一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移 出典:財務省 B参考データ:公債残高の推移 出典:財務省 C参考データ:国及び地方の債務残高の国際比較 出典:財務省 D参考データ:平成16年度一般会計歳入歳出の内訳(予算) 出典:財務省 E参考データ:国及び地方の財政収支の国際比較 出典:財務省 ◆土建国家、「はこもの」づくり天国ニッポン!? 以上は、いわば総じて一般会計支出、予算に関する話だが、いわゆる公共事業支出は、主に特別会計支出となる。 しかし、日本はここでも後先を考えずに、建設国債などの国庫補助、一般会計につけ回す特別地方交付金などを行ってきた。まさに、後先を考えず、土木建築系公共事業、「ハコモノ」づくりを進めてきたのだ。ちなみに、現在、日本には土建業が約60万社あり、600万を超える就業人口があると推定されている。 以下は少々古いデータだが、OECD調査による先進各国の公共事業費総額である。国別の調査方法の差など課題はあるとしても、@総額、A対GDP比、B対単位面積のいずれをとっても、1995年前後の日本が異常な公共事業支出天国であったことがデータ面から分かる。 1996年度の日本の公共事業費総額は実に異常なものとなった。 長野で冬季オリンピックが開催されたのはその直後、1998年である。 1996年度の日本の公共事業費の対GDP比は実に異常なものとなった。 長野で冬季オリンピックが開催されたのはその直後、1998年である。 1996年度の日本の公共事業費の単位面積当たりの額実に異常なものとなった。 長野で冬季オリンピックが開催されたのはその直後、1998年である。 以上、概括的に日本の一般会計、特別会計分野の財政をみてきた。今後、中央集権から地方分権へと移行するに際し、国から地方へのの税財源、権限、権限の委譲が必要であることは言うまでもない。同時に、従来の国から地方への垂れ流し的な国庫補助、地方交付金、特別地方交付金についても徹底したメスを入れる必要があるだろう。 この場合、もっとも重要なことは、国、地方における財政の自立と自律である。だが、それを達成するのは容易ではなく、至難の業である。その前提は、借金を前提として一般会計を組む予算を「身の丈」で「身の程」の財政とすることであり、国民から見えにくい特別会計による公共事業費の突出をいかに抑えるか、である。それらが今、問われている。 次へ |