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地方議員の「政務調査費」の実態
青山 貞一 

掲載日:2004.8.1改訂
未曾有の財政危機 破綻寸前の都道府県財政 県議会の反応は? 
問われる政策提言、制度設計能力 「報酬・年俸」の実態 「政務調査費」の実態
「海外視察」の実態 米国地方議会の議員数と年俸

◆何のための政務調査費

 ところで、地方議会議員には、毎月、「政務調査費」が報酬とはべつに支払われている。

 「政務調査費」とは何か。

 一般的には、政務調査費とは、議員が県政全般にわたる政策や事務事業に関し、調査したり、その結果について県民、市民へ報告などを行う経費をとされている。

 以下は 長野県議会議員に支払われている「政務調査費」の使用実態を報ずる日本テレビ、<報道特捜プロジェクト>、<時事通信>、<長野日報>の各記事である。まさに、目を覆いたくなるような使用実態が分かる。

 本来、立法事務として使うべき政務調査費が飲み食いに類する飲食費に使われたり、身内・家族に支給されている実態も報告されている。さらに公用車をどうみても私用に使っている議員もいると言う。

 以下の具体例は長野県議会の一部議員のものだが、それはけっして長野県議会議員だけのことではない。

 前代未聞の「政務調査費」の使用実態が明るみに出た長野県議会では、その後、政務調査費の統一マニュアル作成などに動いており、その後統一マニュアルがくつられた。いずれにしても「政務調査費」制度を残すのであれば、納税者が誰でも、いつでも確認可能な明確な使途、証拠(詳細領収書等)を示すことがなによりも必要となる。

日本テレビの報道特捜プロジェクト(2004年03月13日放送より)

 
平成13年度長野県議会では、県議会議員1人当たり毎月31万円の政務調査費が交付されていた。

 長野県議会全体で、年間2億円にもなる。

 この監査を担当したのは外部包括監査人、廣田達人さん。

 これまで議会のチェックは議会の中で行われて来たが、田中知事は地元にしがらみのない東京の公認会計士を起用したのだ。果たして調査費はちゃんと使われているのか…。

 しかし、監査が始まって3ヶ月、廣田さんの出した中間報告の中身は目を疑う内容だった。花代という芸者代や料亭で50万円使われた領収書が出てきたのだ。さらに“9月定例議会の反省会懇談会”では、コンパニオンも交えた泊りがけの大宴会が開かれたという事実が明らかになった。かかった経費は、一晩でおよそ97万円。当時の長野県議会最大会派県政会が調査費を使って開いた宴会は、これを含めなんと1年間に16回に及んでいたのだ。

 これが調査費の実態なのか。長野県民からは「今まで表に出なかっただけじゃないですかね」と議会に対してあきれる声も出ている。

 議員が開いた宴会とはどんなものだったのか。

 特捜オンブズマンは現地の温泉街へ向かった。3年前、議員31人は、温泉街にある旅館で大宴会を開いた。しかしその時の領収書には、コンパニオン44とある。これは人数なのだろうか。44にこだわって地元で聞き込み調査を続けた。すると、44という数字は「44本」という数え方をするということがわかった。

 芸者やコンパニオンに詳しい地元の人は「計算は30分単位。最初の1座敷というのは2時間が基本なんで、それを4本と数える」という。では、コンパニオンは何人いたというのか。さらに当時宴会に参加した議員に聞くことができた。

 すると「たぶん6人が正解」と言う。つまり、コンパニオンが6人だとすると、4(本)×6(人)=24本で支払いをすべきだが、それが44本だったということは、44(本)−24(本)=20本で、宴会のあとの延長料金を倍近く払ったということになる。とにもかくにも、全部税金で支払われたコンパニオン代は、18万8,571円也!

 さらに、議員の領収書の中からは、不思議な領収書が何枚も出てきたという。

 それは、議員の妻や子供が受け取ったことになっている領収書だった。金額は78,000円とすでに印刷されていた。県政会の議員は、ほぼ全員が家族や知人に政務調査費からお手当てを出していた。

 当時の県政会団長は「電話番とか、県民の皆さんからの調査に対する要望ね。派出所の奥さんと同じような業務を議員の家族はやっているわけですから」とコメント。

 これに問題はないのか、国税庁の元調査官に聞くと「親族に払った給料、その他の経費は認めないというのが原則」と否定。議員の家族に支払われて来た年間100万円近い手当ては、税法上は経費として認められないというのだ。

 次々に監査で明らかにされる政務調査費の本当の使い途。その一方で、驚くべき事態に監査人は直面することになる。なんと、監査人は領収書のコピーが許されず、監査に支障をきたしているというのだ。外部監査人の廣田さんは、田中知事にコピーができるように緊急の申し入れをした。

 そして田中知事は、調査の権限を持つ県議会議長に領収書のコピーができるように強く要請した。議長は各会派の代表者会議を開いたが、議論は4時間続く。そして出た結論…【コピーやビデオ撮影は認めない】。結局、何も変わらなかったのだ。

 田中知事は怒りを隠せない「チェックしきれてないんですよ!」。知事にはコピーを命じる権限がないのだ。

 このような状況で、監査人は3月末までに最終報告をまとめなければならない。領収書から見えてきた政務調査費の実態、これは許されるものなのか。

 専門家は「もしいい加減な報告書を出して、本来の使途に使っていない、残金があるのにそれを返さない、となると一種の詐欺罪に該当する可能性がある」と断言する。ある県議会議員の手伝いをしていた人物は言う。「(政務調査費は)議員さんのおこずかい。(報告書は)ほぼ作文ですよね。領収書なしだから作文するのは楽ですよ」と。

 全国47都道府県議会の政務調査費で、領収書添付を義務付けているのは岩手と長野のたった2県。ほとんどは領収書のチェックもなく使われているのだ。その額、なんと133億円に上る。

 さらに、政務調査費の不当支出の詳細は以下をご覧頂きたい。
 
○時事通信28日付配信記事から

県議31人にコンパニオン44人
=政務調査費で大宴会、監査で判明−長野


 長野県議会の最大会派だった県政会(解散)所属の県議31人が、議員活動に必要な調査や研究のために支給される政務調査費を使い、旅館にコンパニオン44人を呼んで宿泊付きの大宴会をしていたことが28日、県が公認会計士に委託して実施した外部監査で明らかになった。

 中間報告によると、宿泊付きの宴会は同県千曲市の旅館で2001年10月18日、9月議会の「反省会」として行われた。出席県議は31人で、26人が宿泊した。

 政務調査費からの支出は計96万7978円。宿泊代(食事代含む)は1人2万円、日帰り組の食事代は同1万円で、コンパニオン44人分の料金は18万8571円だった。

 このほか2月議会後に長野市の料亭で行われた「反省会」費51万5088円など、2001年度に県政会が政務調査費を使った飲食計15件が不適切とされた。

 政務調査費は県議1人当たり月額29万円で、所属会派に支給される。報告を受けた田中康夫知事は「こういうことがまかり通っていた長野県政を恥ずかしく思う」と話した。

(注:01年当時の政務調査費支給額は議員1人当たり毎月31万円)
出典: 2004/01/29 (木) 旧県政会の政務調査費、宴会等への支出が判明


宴会費用、コンパニオン代に政務調査費=旧県政会
長野日報(2004年1月29日掲載)

 県議会最大会派だった旧県政会が二〇〇一年十月に開いた宴会の費用が政務調査費から支払われていたことが二十八日、県包括外部監査人の広田達人氏の中間報告で分かった。

 公費である政務調査費は議員の海外視察などと並んで使途の不透明さが指摘されており、そうした実態の一端が浮き彫りになった形だ。

 報告によると、問題の宴会は〇一年十月十八、十九日、旧埴科郡戸倉町の旅館で宿泊付きの懇談会として「九月定例議会反省会懇談会」の名目で開かれ、三十一人が出席した。

 この中には酒食に加え、四十四人分のコンパニオン代として十八万円余も含まれており、九十六万円余が支払われていた。

 このほかにも、〇一年四月以降、「懇談会」などと称した、飲食や飲酒を伴った会合が十五件あり、百六十万円余が政務調査費から支払われていた。

 一方、報告では、旧県政会議員が親族を「議員協力者」として選定し、政務調査費から謝金が支出されていたことも判明。

 受領書には、謝金の支出根拠となる業務の内容、日時、時間、時給、経費の内訳などを示す文書は添付されていなかった。

 政務調査費は、県政に関して会派が行う調査研究活動に必要な経費を交付するもので、当時は各会派に議員一人あたり三十一万円が支払われていた。

 ただ、〇一年三月以前は関係書類の保存が義務付けられておらず、書類が既に廃棄されていたため、調査ができなかった。

 広田氏は「政務調査費の支出としては不適切と考えざるを得ない事案が複数認められた」と報告した。

 田中康夫知事は「言葉を失った。想像を絶すること。こういうことがまかり通ってきていた長野県政だったのかと思うと、恥ずかしい思いだ」と話した。
(社会)

出典:http://www.nagano-np.co.jp/cgi-bin/kijihyouji.cgi?ida=200401&idb=334h

その他
●長野県及び県議会関連の政務調査費使途報告等。
http://www.pref.nagano.jp/gikai/gisoumu/seimu13.htm
http://www.pref.nagano.jp/gikai/gisoumu/kessan-kensei13.htm
http://www.pref.nagano.jp/gikai/gisoumu/houkoku-kensei13.htm

全国市民オンブズマンによる「政務調査費」等の公開度の最新調査結果について

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