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<論考>九十九死に一生

頸椎骨折手術Informed Consent全記録

B頓死か下半身不随となる理由

青山貞一
Teiichi Aoyama

掲載月日:2010年11月11日〜30日
独立系メディア「今日のコラム」
無断転載禁
Table of Contents

◆頸椎骨折で頓死か下半身不随となる理由

 このように背椎に神経の束(脊髄)が通るトンネルがある。「頸椎」のトンネルところにある神経の束を「頸髄」という。そして「脳」などの中枢神経系と「消化器」や「呼吸器」さらに「下半身筋」は脊髄という神経系の束で繋がっている。

 もし、頸椎が折れると、この神経の束がつぶされて中枢神経系と末梢神経系は相互に連絡が途切れることになり、脳から「消化器」や「呼吸器」さらに「下半身筋」への伝達が出来なくなる。これを一般的に下半身不随状態という。


脳神経系(中枢神経系)の全容
出典:http://bunseiri.michikusa.jp/sekizui.htm


脊髄神経系の全容
出典:http://bunseiri.michikusa.jp/sekizui.htm

 2人の専門医は、頸椎が折れ、神経系の束が破断した場合、呼吸器系統が機能不全となり頓死するか、頓死しない場合でも以下に述べるように下半身不随となると言われた。そして、「奥さん、青山さんは本当に強運の持ち主です」と言われた。

 専門的に言えば下半身不随とは、自分意志で下半身が思うように動かせない状態を指す。随意運動の麻痺状態である。

 神経の束がつぶされ壊れていても、「下半身筋」に別ルートで血液が供給されていると「下半身筋」と腰周辺の脊髄は脳などの中枢神経からの伝達を無視し勝手に動くことになるが、これらの動きは「脳」、すなわち中枢神経系の情報を受けていないので自分の意志と無関係な不随運動になる。

 「消化器」系は「脳」との関係が強いが、「消化器筋」は不随運動するので頸椎骨折などで神経の束に大事故があっても、他のルートから血液供給があって臓器が損傷しないかぎりは勝手に動いてくれる可能性はある。むろん事故前のように正常ではないが。


自律神経系の全容
出典:http://bunseiri.michikusa.jp/sekizui.htm

 
下図は脊髄と頸椎との位置関係を表している。頸椎の真ん中を脊髄が上下に通っており、その脊髄は中枢神経から出た信号を手足や内臓に伝える末梢神経系に繋がっている。

◆脊髄(せきずい、英: spinal cord)

 脊椎動物のもつ神経幹。脊椎の脊髄腔の中を通り、全身に枝を出す。脳と脊髄を合わせて中枢神経と呼ぶ。脊椎の中を通って脳につづき延髄とともに中枢神経系を構成する長い器官である。


 人間の脊髄は、延髄の尾側に始まり、第一腰椎と第二腰椎の間の高位で脊髄円錐となって終わり、終糸と呼ばれるひも状の繊維につながっている。

 脊髄から直接出ている神経は神経根と呼ばれ、神経根が脊髄腔から出る高位によって、頸髄、胸髄、腰髄、仙髄、尾髄に分けられる。

 ただし人間では、尾髄は退化的である。脊髄は脊椎より短いため、脊髄の高位と脊椎のそれとは一致しておらず、脊髄の末端より下位の脊髄腔には神経根のみが伸びており、馬尾と呼ばれる。

脊髄損傷(せきずいそんしょう、英語:Spinal Cord Injury)

 主として脊柱に強い外力が加えられることにより脊椎を損壊し、脊髄に損傷をうける病態である。また、脊髄腫瘍やヘルニアなど内的原因によっても類似の障害が発生する。略して脊損(せきそん)とも呼ばれる。

脊髄を含む中枢神経系は末梢神経と異なり、一度損傷すると修復・再生されることは無い。現代の医学でも、これを回復させる決定的治療法は未だ存在しない。


 したがって、頸椎が骨折したり破断した場合には、脊髄や末梢神経系を傷つけたり、破断することが多く、私の場合のように頸椎が骨折陥没しながら、脊髄や末梢神経系に一切傷害がない例は希であると主治医に言われた。

 確かに下図を見るとその通りである。
 

脊髄と頸椎との位置関係。
出典:http://www.towatech.net/productdetail/10007061.html

 というように、頸椎の破断や損傷は、通常は良くて下半身不随、悪いと頓死となり、私の場合のように第二頸椎が骨折、陥没しながらどちらにもならない例は、100件のうち1件もないとのことで、専門医は奇跡だと述べている。繰り返すがこれが九死に一生ならぬ、九十九死に一生と私がタイトルに掲げた理由である。

◆頸椎骨折で多いのは交通事故

 私の場合、頸椎骨折の原因は階段からの落下だったが、調べてみると頸椎事故の原因は、
1位 交通事故 (43.7%)、
2位 高所からの落下 (28.9%)、
3位 転倒 (12.9%)、
4位 打撲・下敷き (5.5%)、
5位 スポーツ (5.4%)、
6位 その他 (3.6%)

となっており、交通事故が圧倒的に多いようだ。ということは自動車を運転するひと、その同乗者は、誰でもいつでも日常的にリスクに接しているといってよい。

 参照 脊髄損傷 Wikipedia

 はからずも私の場合、第二頸椎が骨折、陥没したが脊髄、神経系の破断が免れたため当面、命に別状はなかった。しかし、運動選手などの場合でも、頸椎を折ると良くても全治3〜6ヶ月となるようだ。以下はある著名なサッカー選手の場合だ。

頸椎骨折した加賀が手術へ…今季絶望も

 磐田DF加賀が頸椎(けいつい)骨折のため、一両日中にも手術を受けることになった。4日の富山との練習試合で相手選手と接触し負傷。救急車で浜松市内の病院に搬送され、そのまま入院していた。

 柳下監督は「術後でないと分からないが、今のところ復帰まで3〜6カ月かかるようだ」と話した。加賀はセンターバックにコンバートされた今季リーグ戦全12試合にフル出場していた。

 また頸椎が折れない場合でも、ここに圧力が加わった場合、以下のような症状が出る可能性がある。

☆変形性頚椎症  
 力仕事やスポーツ、不良姿勢、小さな外傷の積み重ねなどが起因となったり加齢変化としての頚椎の変形、椎間板(頚椎と頚椎の間にあるクッションの様なもの)の変性や破綻が頭部の痛みや重苦、運動制限など頚部の症状として現れた状態である。症状としては無理をしたり、姿勢が悪いなどのきっかけで肩が凝る、首筋が張るなどがある。症状が慢性化すると筋緊張の力は頚椎にストレスを与えるので頚椎がより変形していくという悪循環を呈する。
出典:http://www.dokutoruyo.com/toyoigakusindan21.html

☆頚椎症性神経根症  
 変形性頚椎症を原因として頚椎と頚椎の間から出ている神経の根っこが圧迫されて起こるシビレと痛み(神経痛)、筋力の低下や萎縮などの運動マヒが起こる状態。上を向いたり、首を横に傾けたりでこれらの症状が出やすいが、どこの頚椎と頚椎の間かによってシビレや痛みが出てくる場所が変わってくる。
出典:http://www.dokutoruyo.com/toyoigakusindan21.html

☆頚椎症性脊髄症   
 変形性頚椎症を原因として頚髄(首から出てる神経のおおもと)が障害された状態。神経根症よりも重篤で頚髄の上の方を傷つけてしまうと手足が動かなくなってしまうばかりか自分で呼吸することさえ出来なくなったりする。また膀胱や肛門の神経も障害され排尿障害(オシッコが出にくい)、排便障害(自力で排便出来ない)といった症状をきたす場合もある。
出典:http://www.dokutoruyo.com/toyoigakusindan21.html

つづく