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<論考>九十九死に一生

頸椎骨折手術Informed Consent全記録

L退院後一年半の検診

青山貞一
Teiichi Aoyama

掲載月日:2012年4月3日
独立系メディア「今日のコラム」
無断転載禁
Table of Contents

◆手術後一年半の検診

 昨日(2012年4月2日)午前は、一昨年11月上旬に第二頸椎を骨折し、大手術をして、早1年半が経ち、術後1年半の検診を港区の慈恵医科大学病院脳神経外科の大橋医師のもとで受けてきました。

 大学定年で社会保険も一旦切れ、国民健康保険に切り替えようと思っていましたが、研究所の税理会計士からの助言で、私学共済を退職後2年継続可能なことが分かり、大学経由で手続きを取っていたため、何ら問題なく4月以降も従来の社会保険の切替、延長で検診を受けることが出来ました。

 ちなみに、私学共済だけでなく、多くの共済組合では、退職後2年継措置が可能とのことですので、いきなり国民健康保険に切り替えるより、相当経済的負担が減ることが分かりました。本来大学の総務が事前に退職者に連絡すべきことですが、たまたま環境総研の税理・会計を担当していくれている方から伺い、すぐ
に対応した次第です。定年退職間近い方にとってきわめて重要な情報となります!!

 さて術後検診は、術後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、1年半と5回目の検診で、次回は2年となります。

 ご承知のように、私は自分の骨折事故と入院、手術などについて膨大な量のブログを書いてきました。また動画でも一部始終を話してきましたが、慈恵医大の主任医師は、それをしっかり全部読んでくれており、私は検診の都度、いろいろ医師に質問を出すのを楽しみにしています(こんな患者はいないと思いますが)。

◆青山貞一:<論考>九十九死に一生
 頸椎骨折手術Informed Consent全記録
 http://eritokyo.jp/independent/aoyama-col12814.htm

◆青山貞一:頸椎骨折〜事故発生から事後検査まで〜前編  Ch 10 
 http://www.ustream.tv/recorded/14009194

◆青山貞一:頸椎骨折〜事故発生から事後検査まで〜後編  Ch 10 
 http://www.ustream.tv/recorded/14027713

 今回は術後1年の検診同様、CTではなく頸椎を中心にX線を4枚撮影しました。医師は前回撮影したX線写真と今回の写真を比較し、手術した場所にずれがないか、6本入っているチタン合金にずれがないか、腰から第一頸椎と第二頸椎の間に移植した骨がしっかり癒着しているかを確認し、さらに問診が行われました。

 おかげをもちまして、「いずれも問題なし」と判断されました。 社会保険のおかげで、CT撮影をしない場合、術後検診の医療費の自己負担分は、何と1500円です。

 医師による問診では、私の手足、指など運動器系にしびれがないかが、大きなポイントとなりました。これは、手術により第一頸椎、第二頸椎を固定化したために、第三頸椎から第七頸椎までの頸椎と椎間板部分に第1、第2の頸椎固定化による負荷が加わるために、場合により他の頸椎に負荷がかかり、手足、指などにしびれなどの不具合、支障がでる可能性があるからだそうです。


それぞれの位置 背面図
出典:http://www.orihime.ne.jp/~one-/tekious.htm


出典:http://hernia-portal.net/helnia/helnia_06.shtml

 幸い、この間、手足、指にしびれは一切ありません。

 以下は術後一年の検診時の写真であるが、今回もほぼ同じことを確認した。

 なお、この間、何度も海外や国内移動で飛行機を使ったが、セキュリティーチェックで一度も頸椎固定に使っている金属によりひっかかかることはなかった。


撮影:青山淑子 Nikon CoolPix S8 2011.11.07




撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2011.11.07


撮影:青山淑子 Nikon CoolPix S8 2011.11.07

●人間とパソコンにおける「脳神経系」の違い
 
 今回、私は大橋医師と人間とコンピュータとの違いについて議論しました。ご承知のようにパソコンにはバスがあります。バスはまさに「乗り合いバス」(=自動車)のバスを意味します。乗り合いですからいろいろな人(信号)がそのバスに乗っているわけです。

 私たちがパソコンを使う際、たとえばキーボードやマウスをUSB端子に差し込んでいます。以前はPS/2という端子に接続していましたが、今では外部ハードディスクであれフラッシュメモリーであれ、何でもかんでもUSB端子に接続しています。

 ※ USB Universal Serial Busの略
 ※ バス バス(bus)とは、コンピュータの内外、各回路が
   データを交換するための共通の経路を指すコンピュータ
   用語である。


パソコンにおけるバス
出典:http://www.softlab.cs.tsukuba.ac.jp/~yas/gen/it-2004-10-18/

 パソコンでは、この共通のバスがあり、それが人間でいえば脳と人間の手足、指などをつないでいます。ここからが問題です。

 このようにパソコンでは、まさに乗り合いバスがCPUすなわち中央演算装置とマウス、キーボードのような感覚器系機能との間で大きな役割をもっているのですが、残念ながら人間には、このような乗り合いできるバスがありません。

 人間の場合は、脳神経と指先、関節、手、足その関節などが一本一本の神経系でつながっており、乗り合いバスはないのです。自律神経系は脳からの指令と関係なく、自立的に循環、呼吸、消化、発汗・体温調節、内分泌機能、生殖機能および代謝のような不随意な機能を制御しているのですが、周知のように、指先、関節、手、足その関節などは、脳からの指令により動くわけです。


脳、脊髄と頸椎の位置関係
出典:http://square.umin.ac.jp/jsss-hp/intro/08.htm

 人の脳の命令を手足に伝える神経系は中枢神経系として大脳、小脳から脳幹、頸椎、脊髄を経由し、神経が内臓、腰、足、指などに末梢神経系に達しており、首周りの7つの頸椎は脳と首より下の内臓を結ぶ上で一番重要、大切なものとなっているわけです。

 問題は、大脳、小脳などから脳幹、頸椎、脊髄を経由し、神経が内臓、腰、足、指などに末梢神経系にそれぞれ一本づつ一対一の関係でつながっていることにあります。ここが、パソコンの場合の乗り合いバスとまったく違うところなわけです。

 脳神経から末梢神経に至る神経作用は、一本一本が別々の作用、たとえば親指の第一関節を曲げるなどの作用をもっているので、もし、頸椎骨折の影響でその神経が不具合を起こすと、親指が自分の意志で曲がらなくなります。その前の現象として指にしびれが起きるということになります。


出典:http://video.about.com/backandneck/Cervical-Spine-Anatomy.htm


出典:http://video.about.com/backandneck/Cervical-Spine-Anatomy.htm

●神経系の破損と手術による回復の可能性について

 ことほど左様に、脳からは体のあちこちを動かす膨大な量の神経が展開しており、とくに首から下の自律神経系以外の膨大な数の機能は、頸椎のすぐ隣にある脊椎系のなかを通り、手足の神経や末梢神経までつながっているわけです。

 たとえば、人差し指を曲げるという指示も、またその指先を針で刺し痛いと感ずるのもそこにある末梢神経や神経と脳との間での一対一の交信により、曲げ、また痛いと感じているわけです。

 もし、頸椎骨折に伴い首を通過している大神経系の脊髄に損傷があれば下半身不随となりますが、そこまで行かなくても、第一から第七まである頸椎からでている神経系に一部でも損傷や不具合があると、下半身のどこかしらに、機能不全や機能の不具合が起こることになるわけです。

 大橋医師との話では、たとえば頸椎骨折などで、これらの神経系の損傷がおきた場合、一旦切断あるいは損傷した当該神経系を手術により一対一の関係を維持させるように繋ぐ技術が現代医学にあるのかと伺ったところ、「ありません」と即座に答えられました。

 これだけ医学が進歩しながらひとたび脳から手足に行く神経系が破談、切断されると手術によりそれを復旧することはほとんど困難となるとのことでした。

●リハビリについて

 一方、リハビリテーションがあります。これは、破談、切断までされない神経系の不具合を時間をかけ修復させる行為であると言えます。

 このリハビリの対象には、出生前あるいは出生後に罹患した病気や外傷によって起きる脳・脊髄・末梢神経などの神経系、筋・骨・関節などの運動器系、呼吸器・循環器・消化器・内分泌などの内臓器系、視覚・聴覚・平衡覚などの感覚器系、精神・心理などの知的機能系などに起きる機能と構造の障害までを含んでいます。

 またリハビリ障害は、心身機能・構造だけでなく、日常生活の活動の制限、社会生活への参加の制約も含める概念でもあり、その概念は、障害というものが個人の生活する家庭・学校・職場・近隣地域・社会・行政などの環境に大きく影響を受けることを示しています。

 もちろん、一旦神経系が切断などで完全に機能不全となった場合、リハビリで回復は不可能とのことですが、比較的軽度な場合は、リハビリにより脳・脊髄・末梢神経などの神経系、筋・骨・関節などの運動器系、呼吸器・環器・消化器・内分泌などの内臓器系、視覚・聴覚・平衡覚などの感覚器系は、かなりのところまで回復するとのことでした。

 幸い、今のところ第二頸椎骨折、そして手術後、リハビリを必要とする神経系、運動器系などの不具合はなく、ほっとしておりますが、もし、人間にパソコンのような乗り合いバスがあれば、ある部位の機能不全をもっと容易に回復できるのではないかなどと夢想しました。

 逆説すると、人間の中枢神経はきわめて精密、繊細にできており、視覚、聴覚、平衡感覚などの感覚器系はもとより、首から下の運動器系、内臓系の機能はすべて頸椎あるいはその近くを通過する脊髄には膨大な数の神経があり、それを骨折などの事故で損傷を与えると、下半身の一部あるいはすべてが機能不全となることがよく分かります。

 下半身不随はその象徴であり、一歩間違えると私自身、下半身不随となっていたことになります。

 大橋医師との議論で、私は人間にパソコンのような乗り合いバスがあればという仮説を投げかけたわけですが、人間の脳神経系は、バスではなく、自律神経系以外は、すべて一本、一本の神経により、それぞれ微細な機能が果たされている事実を私たちはしかと認識しなければならないと感じた次第です。
 

つづく