日本のメディアの 本質を現場から考えるE 〜原発事故と報道自粛〜 青山貞一 掲載月日:2007年6月10日 無断転載禁 |
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2005年5月12日、私は「英セラフィールド再処理施設から漏れ出る放射能汚染」の第一本目のブログを執筆し、その冒頭に次のように記した。 「現在、日本のマスコミは北朝鮮(DPRK)の核開発や核廃棄物の再処理によるプルトニウム生産を連日、喧しく報道している。もちろん、DPRKの核問題は重要な問題であることは言をまたない。 だが、日本のマスコミがこの間、日本が密接に関わる核廃棄物の再処理問題について、まったくといってよいほど報道していない重要な事実がある。 それは英国のセラフィードにある核廃棄物の再処理施設からの放射能物質の漏洩問題であり事件である。 セラフィールド再処理工場には、日本から多くの原発の使用済み核廃棄物を再処理のため委託されており、現地に送り込まれている。 このひとつの事実だけをとっても、日本のマスコミがセラフィールドの事故と事件を報道すべきことは当然のことである。 報道しなければ、何らかの意図があってしていないと勘ぐられてもしかたがないだろう。 どういう訳か、日本のマスコミは、この世紀の再処理工場重大事故を報道せず、なぜ押し黙っているのであろうか。 この間、「ザ・タイムズ」、「ガーディアン」など、英国を代表する新聞各紙は、セラフィールド核廃棄物再処理工場からの放射能汚染問題を大々的に報道してきた」事実もある。 セラフィールド事故に関連して、我が国(日本)で配信された記事は、共同通信社が2005年5月11日に配信した以下の記事だけである。
以下はこれに関連し、「英セラフィールド再処理施設から漏れ出る放射能汚染(4)〜膨大な放射能物質漏洩〜」で私が書いたブログの論考である。 「ご承知のように共同通信社は新聞社ではなく通信社である。共同通信の記事は、ほんの数行、しかも英国のガーデンアンなどの新聞が報じた内容のごくごく一部だけである。 内容を読めば分かるが「異常なし」とか「放射能による大気汚染もない」など、ことさら問題がないことが強調されているようにも見える。 この共同通信の記事だけを見た読者は、事故は起きたが大したことことはないと思うだろう。 にもかかわらず、この共同通信が配信した記事を報道した日本の新聞、テレビ、ラジオなどのマスコミは、現在までの筆者の調査によれば、次の各社だけである。 京都新聞、佐賀新聞、山陽新聞、河北新報、岩手新聞、東奥日報、ヤフーニュース、ライブドアニュース、エキサイトニュース、gooニュース、インフォシークニュース。 もし、他のメディアが報道している場合は、メールで青山貞一まで記事のURLなどをお送りいただきたい。 他方、はっきしりているのは、インターネット系のニュースが共同通信の記事をそのまま掲載していたことである。 さらに大切なこと、重要なことは、共同通信の速報を追っかけ、その詳細を取材、調査した日本の主要マスコミの記事が今のところ皆無であることだ。」 これは英国を代表する新聞、「ザ・タイムズ」や「ガーディアン」が報じたプルトニウムの大規模流出事故を、世界一の購読部数を誇る読売新聞、また朝日新聞、読売新聞、日経新聞などが一字も報じなかったことを意味する。在京テレビ各局も数秒たりともこの大事故を報じなかった。 これは一体、何を意味するのだろうか? 衆議院議員、河野太郎氏はブログ「ごまめの歯ぎしり」のなかで次のように述べている。
くしくも、河野太郎氏のブログにあるように、日本の大メディアが意図的にこの重大な放射性廃棄物漏洩事故を報道しなかったのである。 おそらく報道各局や新聞社は、故意に報道をしなかった、自粛したのではないかと思われても仕方ない。 ではなぜ、意図的に報道しなかったのか、報道を自粛したのであろうか? 想定される理由は、以下であろう。 大メディアの一大スポンサーそして広告主となっている電力会社、電事連(電気事業者連合会)、原子力産業会議傘下企業への配慮と思われることだ。 もし、これが事実であるとしたなら、こほれど明白な「情報操作による世論誘導」はないだろう。もしそうだとしたなら、もはや日本の大メディアは報道機関とはいえない。 原発事故や核廃棄物再処理問題にからむ報道自粛は、その後も続いていると思われる。たとえば、 本独立系メディアが報じた「なぜか日本のメディアで一切報じられないスウェーデンの原発事故!」もそのひとつである。偶然のこととは思えない。 ........閑話休題 もっぱら、これは原発事故・核燃料廃棄物再処理問題に限ったことではない。 今や世界企業となった日本企業、たとえばトヨタ、パナソニックなどは、年間数千億円規模、さらにそれ以上の広告宣伝費用をもっている。下の表にある2006年度の有力企業の広告宣伝費は、まさにそれを物語っている。2006年度のトヨタの広告宣伝費は1000億円を超えている。松下電気産業(注:現在、パナソニック)、ホンダ自動車も800億円以上の広告宣伝費をもっていることがわかる。 表1 2006年度の有力企業の広告宣伝費 出典:日経広告研究所資料より テレビ、新聞などメディアが、それら巨大企業スポンサーに遠慮して、国民にとってきわめて重要な事故や問題を報道しないとすれば、それはいうまでもなく、国、自治体の行政情報とは別に、民間企業の情報操作による世論誘導に手を貸していることになり、国民の知る権利をメディア自らが侵害していることになる。 それもこれも、日本のメデイアが巨大な発行部数や全国規模のネットワーク維持など、本来、客観報道と両立することが難しい課題をもっていることと無縁ではないだろう。 表2 世界の主要新聞発行部数比較
外国紙は1996年・日本紙は1997年の調査 2)都道府県別新聞発行部数 2003年1−6月「社団法人ABC協会」「社団法人日本新聞協会」調べ 日本の国民の世論の圧倒的多くが、これら巨大メディアが報道する内容と密接に結びついていることは紛れもない事実である。とすれば、日本はまだまだ、一人前の民主主義国家とはいえない。 かつて東京大学の総長は学生を前にして、肥えた豚となるより痩せたソクラテスたれ、と述べた。 日本の大メディアは、一方で「行政の官僚社会主義」、他方で「企業の利益至上主義」に蹂躙、汚染されているといっても過言ではない。 発行部数や視聴率の呪文で、がんじがらめになっている肥えた豚の大メディアにとっては、事実を報道することにより、営業利益を上げることを優先しているのである。 つづく |