被災地がれき処理仮設焼却炉
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2012年11月22日〜25日、青山貞一、池田こみち(ともに環境総合研究所顧問、東京都品川区)は、宮城県、仙台市および岩手県内の「がれき処理状況」を調査するため仮設焼却炉の現地視察を行ってきた。 現地調査の主な目的は膨大な量のがれき焼却に伴う周辺への影響(放射能影響、環境影響、健康影響など)の予備調査であるが、5000億円以上を費やして行われている被災地のがれき焼却の実態を確認すること、さらに被災地の復旧、復興状況の追跡調査もしてきた。 2012年11月22日〜11月25日、青山貞一、池田こみちは、宮城県大崎市の新幹線古川駅前を拠点として宮城県、岩手県、仙台市でこの間行っている被災地のがれき処理、とくに焼却処理のすべての現場を視察、調査してきた。 この1年間、5000億円以上税金、公金を投入している事業だが、誰も実態を知らない、知らされていないようなので、合計901km走破し、宮城県南端から岩手県北端近まで現場を調査してきた。 ◆現地調査ルート 一日単位の現地調査ルートを以下に示す。総走行距離は901kmである。 第1日目(2012年11月23日) 大崎市(古川駅)→気仙沼市→国道45号線→陸前高田市→国道45号線→大船渡市→国道45号線→釜石市唐丹→国道45号線→釜石市小室→国道45号線→大槌町吉里吉里→国道45号線→山田町→国道45号線→宮古市→国道106号線→盛岡市→東北自動車道→古川IC→大崎市(古川駅) 第2日目(2012年11月24日) 大崎市(古川駅)→南三陸町本吉→南三陸町→石巻市大川小学校→石巻市長面浦→石巻市雄勝→石巻市潮見→大崎市(古川駅) 第3日目(2012年11月25日) 大崎市(古川駅)→古川IC→東北自動車道→常磐自動車道→亘理IC→亘理町→山元町→亘理町→岩沼市→名取市→仙台市若林区→仙台市宮城野区→国道4号線→大崎市(古川駅) ◆仮設焼却炉設置によるがれき処理設置、稼働の実態調査 2012年11月23日 岩手県 宮古市 稼働中 山間地 岩手県 釜石市 稼働中(既存の直接溶融炉) 山間地 宮城県 気仙沼市1 焼却施設建設中 山間地 宮城県 気仙沼市2 焼却施設建設中 臨海部 2012年11月24日 宮城県 南三陸町 稼働中 山間地 宮城県 石巻市 稼働中 臨海部 2012年11月25日 仙台市 宮城野区 稼働中 臨海部 仙台市 若林区1 稼働中 臨海部 仙台市 若林区2 メンテナンス中 臨海部 宮城県 名取市 稼働中 臨海部 宮城県 岩沼市 稼働中 臨海部 宮城県 亘理町 稼働中 臨海部 宮城県 山元町 稼働中 臨海部 岩手県内調査対象地域一覧 出典:青山貞一・池田こみち 宮城県内調査対象地域一覧 出典:青山貞一・池田こみち がれき焼却施設において使用されている焼却施設(ストーカー炉、溶融炉、灰溶融炉、キルン炉などの種類、基数、能力、またバグフィルター、電気集塵機などの環境保全装置、さらに稼働開始時期などについては別途作成予定の報告に示す。 煙突高(実煙突高)は、おおむね15〜30mと低く、他の設備、建物、構造物の影響を受けダウンドラフト状態となっているものが多かった。したがって、排ガスは施設周辺数100mの範囲を高度に汚染する可能性が高いものと思える。 事実、宮城県石巻ブロック(潮見町)の焼却炉の周辺では激しいダウンドラフトが生じており、非常に刺激臭の強い臭いがするとともに、青山貞一の気道が著しく狭くなっていた。 もとより、原子力規制委員会の事故時シミュレーション同様、環境アセスメント(生活環境影響調査)における汚染物質の煙突からの拡散シミュレーション(調査書)では、まったく周辺の地形、建築物、構造物を勘案していないことが分かっている。 しかし、山間地など地形が複雑な地域に立地する場合には、地形を考慮しなければ汚染の拡散実体はまるで違ったものとなってしまう。その意味では、環境省主導のシミュレーションは、原子力防災計画策定時だけでなく、この種の環境アセスメントにおいてもまったく実際の汚染の拡散と異なる非現実的なものとなっている可能性が高い。 一方、焼却施設に関連する排水の処理については、多くの焼却施設が臨海部に立地しており、未処理の排水が海にそのまま捨てられている可能性がある。また山間地などに立地された焼却施設に関連する排水は、地下水を汚染する可能性が高いが、環境省の生活環境影響評価では地下水汚染の項目すら存在していない。 焼却施設周辺には各種がれき置き場が併設されていたが、分別状況は、地域により千差万別であった。これの中にはアスベストなど有害物質を含むものもあり得るが、多くの場合、露天で露出していた。ここから周辺地域に飛散、浮遊する可能性もあると思える。 木質焼却物には、津波及びその遡上により海水をかぶった森林、樹木を伐採した木材があった。 岩手県釜石市のがれき置き場を背景にした青山貞一 撮影:池田こみち、Nikon Coolpix S10 2012-11-23 宮城県南三陸町のがれき置場に立つ池田こみち 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2012-11-24 宮城県気仙沼ブロック南三陸町の看板を撮影する青山貞一 撮影:池田こみち、Nikon Coolpix S10 2012-11-24 宮城県石巻ブロック(潮見町)の焼却炉を背景にした青山貞一 ここでは非常に刺激臭の強い臭いがし気道が著しく狭くなった 撮影:池田こみち、Nikon Coolpix S10 2012-11-24 宮城県亘理ブロック(山元町)がれき焼却炉前の青山貞一 撮影:池田こみち、Nikon Coolpix S10 2012-11-25 宮城県亘理ブロック(亘理町)がれき焼却炉前の青山貞一 撮影:池田こみち、Nikon Coolpix S10 2012-11-25 宮城県亘理ブロック(亘理町)がれき焼却炉前の池田こみち 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2012-11-25 焼却炉周辺で土壌を採取する池田こみち 背後の自動車は調査用に使ったホンダのフィット(ハイブリッド車) 撮影:青山貞一 Casio Exilim GPS付き 2012-11-25 宮城県亘理ブロックがれき焼却で説明を受ける池田こみち 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2012-11-25 宮城県名取市閖上のがれき焼却施設を背景にした池田こみち 撮影:青山貞一 Casio Exilim GPS付き 2012-11-25 ◆復旧、復興、現地視察 第三回調査 第二回調査 第一回調査 2012年11月23日 2011年12月3日 2011年8月28日 家 ビ 基 瓦 家 ビ 基 瓦 家 ビ 基 瓦 岩手県 宮古市 残 残 残 有 岩手県 山田町 撤 - 残 有 残 残 残 有 岩手県 大槌町 撤 残 残 無 撤 残 残 有 岩手県 大船渡市 岩手県 釜石市唐丹町 撤 残 残 無 残 残 残 有 岩手県 陸前高田市 撤 残 残 無 撤 残 残 有 宮城県 気仙沼市 撤 残 残 有 残 残 残 有 2012年11月24日 宮城県 南三陸町 撤 残 残 有 残 残 残 有 宮城県 石巻市雄勝 撤 残 残 有 残 残 残 有 宮城県 石巻市長面浦 撤 - 残 無 残 − 残 有 宮城県 石巻市大川小 - 残 残 無 − 残 残 有 宮城県 石巻市中心市街 残 残 残 有 残 残 残 有 2012年11月25日 宮城県 仙台市宮城野区 撤 撤 残 無 撤 残 残 有 宮地県 仙台市若林区 撤 撤 残 無 撤 残 残 有 宮城県 名取市 撤 撤 残 有 撤 残 残 有 宮城県 岩沼市 撤 撤 残 無 撤 残 残 有 宮城県 亘理町 撤 撤 残 無 撤 残 残 有 宮城県 山元町 撤 撤 残 無 撤 残 残 有 凡例:残=残っていた 撤=大部分撤去されていた 有=あった −もともとほとんど存在していなかった なお、基礎のコンクリートガラは、地盤沈下の埋め戻し用の骨材として 使用するために基礎が破砕された場合でも、現場に置かれている場合 が多い用であった。 本調査は、主に動画及び静止画撮影により行った。いずれの地域も昨年夏から秋にかけて実施した同地域への動画及び静止画撮影と比較表示する予定である。 岩手県釜石市小白浜漁港の破壊された防潮堤を撮影する青山貞一 撮影:池田こみち、Nikon Coolpix S10 2012-11-23 多くの児童が亡くなった宮城県石巻市大川小学校の慰霊碑の前で 撮影:池田こみち、Nikon Coolpix S10 2012-11-24 左から青山貞一、世古一穂さん、池田こみち 宮城県名取市閖上神社の前にて 撮影:NHK仙台放送局ディレクター ◆放射線測定ポイント(ガンマ線、1m高) 11/22〜11/25 上記の現地調査にあわせ岩手県、宮城県、仙台市の約200カ所で地上1m高のガンマ線の測定を行った。がれき焼却処理を行っている13施設の官民境界上での測定結果は、0.04-0.08μSv/hの範囲にあった。 岩手県、宮城県の主要地点の空間放射線量(γ線)測定値 単位:μSv/h
上記の測定値は原則として一地域2回〜5回測定した平均値(四捨五入) なお、上記地域には過去何度も現地調査を行っているが、いずれの地域も復興のためのグランドデザインの遅れからか、国と県、基礎自治体の間での地域計画、土地利用計画、都市計画、住民との合意など進まないこともあり、外見上は震災から2年弱経ちながら、ほとんど進んでいない感じがした。 これについても、昨年夏〜秋に同地を撮影した動画、写真と今回撮影しました動画、写真を比較してみたいと思っている。 なお、いわゆる被災地のがれき処理が復旧、復興の足かせになっている現実は、どの地域でもほとんどなかったと思う。 現地調査の詳細はおって池田さんと共著で課題提案を動画、写真でも報告する予定である。 |