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日本のメディアの
本質を現場から考えるL

〜外郭団体を介した行政と
近すぎる報道の危うさ(追跡調査)〜

青山貞一


掲載月日:2007年8月23日、24日拡充

無断転載禁

◆青山貞一:日本のメディアの本質を現場から考える 
  バックナンバー

L行政と近すぎる報道の危うさ
K欽ちゃん70kmマラソンの非常識
J巨大公共事業推進の先兵
I政権政党ともちつもたれつ
H政治番組による世論誘導
G民主主義を壊す大メディア
F意見の部分選択
E原発事故と報道自粛
D戦争報道と独立系メディア
C環境庁記者クラブ事件
B記者クラブと世論誘導
A地方紙と世論誘導
@発行部数と世論誘導

 本稿は、
青山貞一:官製談合と随意契約(2)〜外郭団体を介した「行政」と「報道」の危うい関係〜をもとに、その後の追跡調査を加え執筆しています。 

 「独立系メディア」の調査で非常に興味深いことが分かった。

 まず、旧環境庁元事務次官が設立した財団法人 地球・人間環境フォーラムに現環境省から毎年、特命随意契約で多くの業務が行っている。

 これについては、鷹取敦:環境省随意契約問題・(財)地球・人間環境フォーラムも参考にして欲しい。

 さらに池田こみち:行政と近すぎる報道の危なさ・3Rイニシャティブも参考にして欲しい。

 まず以下は、鷹取氏が鷹取敦:環境省随意契約問題・(財)地球・人間環境フォーラムで報告した財団法人 地球・人間環境フォーラムの環境省から随意契約で受注した業務と金額である。

 同財団法人のウェブサイトに掲載されている「平成16年度補助金等概要報告書」をみると環境省からの委託事業は以下の2件、総額3千万円余で、年間収入約6億円に占める割合は5.1%と掲載されている。なお、決算書によると約5.2億円が事業収入である。

・IPCC第4次評価報告書作成支援調査 20,425千円
・砂漠化防止対策技術の移転手法等検討調査委託業務 10,300千円

 しかし平成17年度は前述したように12件、1億9千万円もの事業を随意契約で請けているのだから、平成16年度の報告が全てを網羅しているかどうか、やや疑問だ。

 平成16年度と平成17年度で年間収入が同程度であるとすれば、平成17年度の環境省からの随意契約は全体の約1/3に及ぶことになる。

 先に紹介した(財)日本環境協会(財)地球環境センターと比べれば、環境省の随意契約による委託事業への依存度は低いものの、環境省依存は決して小さいとは言えない。

 最後に平成17年度(平成18年1月まで)に(財)地球・人間環境フォーラムが環境省から随意契約で請けた委託事業の一覧を契約額順に掲載する。いずれも随意契約、すなわちこの財団法人以外に出来ない事業だとはとても思えない。

3Rイニシアティブ閣僚会合開催運営等業務 1億500万円
インターリンケージ;地域間協力による持続可能な開発のための知識・能力開発ワークショップ開催業務 1491万円
リユースカップ等の実施利用に関する検討調査 1292万円
環境コミュニケーション普及推進事業 1197万円
砂漠化防止対策技術の移転手法等検討調査委託業務 1023万円
我が国ODA及び民間海外事業における環境社会配慮強化調査業務 1008万円
森林生態系の保全管理に係る調査業務 750万円
持続可能な地域づくりに向けた取組の促進事業業務 615万円
砂漠化防止対策推進支援調査業務 504万円
発展途上地域における原材料調達のグリーン化支援事業に関するフィージビリティー調査業務 400万円
GESAMPによる海洋汚染物質再評価試験 270万円
砂漠化防止対策技術情報調査業務 168万円

 ここでの第一義的問題は、環境省から業務が特命随意契約で財団法人 地球・人間環境フォーラムに垂れ流されていることである。

 だが、問題はそれだけではなかった。

 鷹取氏も指摘しているように、財団の事務所の一角に、日本を代表する主要メディアの記者らが参加する「日本環境ジャーナリストの会」の事務局があった。

  「日本環境ジャーナリストの会」に参加する記者は、もとより霞ヶ関の省庁やその外郭団体などの活動を監視すべき立場にある。

 ジャーナリストは、個々が独立してこそ、ジャーナリストである。それが...の会に群れていて、まともな記事など書けるわけがないのではないか?

 そのジャーナリストらが、こともあろうか環境庁元事務次官その後神奈川県知事になった元高級官僚が設置、運営している財団法人に間借りしていたというのだ。 

 過去形で書いたのは、財団法人 地球・人間環境フォーラム及び日本環境ジャーナリストの会事務局は、現在、東京都港区虎ノ門の森ビルに移転しているからである。



 それより前は東京都港区麻布飯倉のビルに事務所があった。しかもそこは、某宗教法人所有のビルであるとされていた。

 引っ越し先の虎の門の10森ビルの近くにも、その某宗教法人の本部があるがこれが偶然かどうかはわからない。私たちの調査では、今のところ不明であるといっておこう。

 さらに調べたら、財団法人 地球・人間環境フォーラム今は東京都文京区本郷に移転していることが分かった。

 一方、「日本環境ジャーナリストの会」が事務局を借りていた財団法人 地球・人間環境フォーラムは、毎月「グローバルネット」なるニューズレターを発行している。同ニューズレターには「環境ジャーナリストの会」の常設ページがあり、会員が執筆を担当している。

 以前、NHKが環境省の特命随意契約業務の割合が92%を超え異常に多いとの報道がなされたが、私たち「独立系メディア」が調べたところ、「環境ジャーナリストの会」メンバーがこの環境省の随意契約問題およびその発注先を追跡取材した形跡はなかった。あったなら、連絡して欲しい。

 独立系メディアによる調査報道ブログとしては 随意契約 を参照。

.....

 その日本環境ジャーナリストの会だが、以下を見て欲しい。現在は、財団法人 地球・人間環境フォーラムが虎ノ門から移転した文京区本郷に移転していることがわかった。



 さらに日本環境ジャーナリストの会は、東京都渋谷区神宮前にある特定非営利活動法人 持続可能な開発のための教育の10年推進会議にも関与しているが、このNPOの設立発起人リストを見ると、環境省OBと元新聞記者がいることが分かった。参加しているNPOのいくつかは環境省から委託業務などを受けている団体である。

....

 ひるがえって、本特集で何度も述べたことだが、日本の「記者クラブ」は、世界にも類例がない行政と報道、ジャーナリズムのもたれあいが指摘されている。

 冒頭に述べた「官製談合と随意契約」問題は、何も天下り先の特定組織に税金を垂れ流す問題だけでなく、「政」「官」「業」「学」「報」、すなわち@政治家、A国、地方の行政、B民間企業、業界、C御用学者とD報道との間で現状を追認し、既得権益を守る癒着の構造の温床を与えている点できわめてゆゆしき問題であると推認している。

 にもかかわらず、日本環境ジャーナリストの会は、環境省から膨大な業務が随意契約で行っている財団の事務所内に事務所を持っている。これでは環境省の随意契約や天下り、官製談合を批判などできるわけがない。「李下に冠」がこの団体には通用しないようだ。

 上記に問題に関連し、日本環境ジャーナリストの会のメンバーの一人で大手新聞者のS記者は、港区飯倉に事務所があったとき、筆者にかけてきた電話のなかで次のように語った。

 「青山さんが指摘されるのは、元高級官僚なり財団自身の問題であって環境ジャーナリストの会の問題ではないのではないか? 私たちはたまたま事務所を借りているだけ」だと。

 果たしてそうだろうか?

 今時そんな認識が通用すると思っているのだろうか? 

 S記者が電話してきた当時、事務所は港区飯倉にあった。その後、港区虎ノ門、文京区本郷と財団が移転を繰り返すたびに、日本環境ジャーナリストの会は、財団の事務所内に移転している。

 つまり、自分たちがしていることを何らおかしいと思っていないのである。

 どうしても群れたいなら、なぜ、自分たちでポケットマネーを出し合い、独自の事務所をもたないのか? 

 記者クラブ同様、あまりにも日本的にすぎる。 

 ここ数年、環境省は地球温暖化対策などで巨額の予算をもっている。

 環境官僚は、自分たちの天下り先でもあるOBが関係する企業、財団、社団、NPOに業務をせっせと出している。しかも、公益法人というだけの理由で、特命随意契約が多い。

 冒頭の「官製談合と随意契約」についてのNHKのスクープはまさに、これを見据えたものである。現在の「日本環境ジャーナリストの会」のメンバーリストを見ると、NHKはひとりもいない。よく見ると、テレビ系メディアの記者等もいない。

 もし、日本を代表する大新聞の記者がいつまでもそんな認識でしかないのだとすれば、到底、「政」「官」「業」「学」「報」の癒着、もたれあいなど取材し、記事化することなどできるわけないだろう。

 その意味で、日本環境ジャーナリストの会は第2の記者クラブ化しているといっても過言ではないのではないか。

 ※参考:青山貞一、環境庁記者クラブ事件

つづく