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真夏の群馬北西部短訪

B八ッ場ダムは公費乱費の典型
青山貞一
掲載月日:2012年8月23日
 独立系メディア E−wave Tokyo
無断転載禁

 ◆特集:真夏の群馬北西部短訪 2012.8.17-8.20
@浅間山大噴火と鎌原観音  H暮坂高原の「花楽の里」
A迷走つづける八ツ場ダムと工事現場  I上信越県境の野反湖
B八ッ場ダムは公費乱費の典型  J品木ダムと草津温泉
C江戸の中山間地の生活を今に伝承  K四阿山とバラギ湖
D群馬満蒙拓魂之塔と浅間牧場  Lパノラマライン北ルート
E六合村の赤岩養蚕集落  M白根山をトレッキング
F六合村の赤岩神社  N「毛無峠」と小串硫黄鉱山跡
G六合村の上の観音堂  OGPSによる移動経路図

●巨大ダムは公費乱費の典型

 一方、JR吾妻線の付け替え工事だが、水没予定の吾妻線川原湯温泉駅の移転先となる新川原湯温泉駅の基礎工事の一部が着手されていた。

 新駅予定地の真ん前に位置する豊田牛乳の社長と、いつものように青山が議論を行った。社長によると吾妻線の付け替え工事は、今後5〜10年後と聞いていると述べていた。

 これが事実だと、今後、八ッ場ダム工事の本体工事が開始されたとしても、吾妻渓谷がダム化するのは5から10年後ということになる。なぜなら、JR吾妻線の新川原湯温泉駅が出来ないことには、仮にダム本体が完成してもせき止めることはできないからである。


豊田牛乳  川原湯温泉駅は、豊田牛乳の真ん前に作られることになっている。
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8


豊田牛乳社長との議論 左が社長
撮影:鷹取敦 Digital Camera CASIO EX-H20G


豊田牛乳社長との議論 左から奈須さん、青山、右が社長
撮影:鷹取敦 Digital Camera CASIO EX-H20G

 私や池田は、今まで20回以上、八ッ場ダム工事現場に足を運んでいるが、現地に行くたびに豊田牛乳に行き、社長や奥様と議論してきた。

 今回は残念ながら奥様はいらっしゃらなかったが、夫婦そろって一貫して八ッ場ダム建設や国土交通省の対応に批判的で、忌憚ない意見を伺っている。

 以前、奥様と話したときに、この間多くの新聞、テレビが取材に来て対応したが、実際に記事やニュースとなったのはごく一部であったと。おそらくその理由は、現地で明確に八ッ場ダム工事を批判し、反対している豊田牛乳の夫妻の意見は、事業推進に近い立場を取る日本の大マスコミは記事やニュースにしたくないものだったのだろうか!?

 川原湯温泉で一番大きな温泉である柏屋の建物が基礎だけ残し、完全に解体されていた。


解体された川原湯温泉の温泉、柏屋の現場
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8


動画撮影:青山貞一 Yashica HD Video Camera

 川原湯温泉側の住民の移転建築工事がかなり進捗していた。


動画撮影:青山貞一 Yashica HD Video Camera

 下は、川原湯温泉近くでほぼ完成した砂防ダム。計画地域にはこの種の砂防ダムがたくさん建設されている。


川原湯温泉近くに完成した砂防ダム
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8

 この後、ダム本体が出来る位置より下流にある「鹿飛橋」(東吾妻町)に行く。


撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8


吾妻渓谷にかかる鹿飛橋
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8

 下の写真は鹿飛橋から吾妻渓谷を撮影したものである。ダムができる吾妻渓谷がいかに秀逸な景勝地であるかがこの一枚で分かるというものである。


鹿飛橋からみた吾妻渓谷
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8

 吾妻渓谷は上の写真のように吾妻川の浸食によって深い切り込みができている。このように群馬県北西部は、地形学上、地質学上、特異な地形のデパートとなっていることもあり、巨大な八ッ場ダム工事により、特異な地形が湖底に沈められることは断じて防がなければならない。

 下の図は、吾妻渓谷の長野原町と東吾妻町の接する地域に計画されている八ッ場ダムの本体工事の模式図である。現地で撮影した写真と国土交通省の設計図をもとに青山貞一が作成した。


現地で撮影した写真と国土交通省の設計図をもとに青山貞一が作成

 上の吾妻渓谷を地形図で見ると下のように、渓谷で700m以上ある標高が一気に500m台に落ち込んでいる。八ッ場ダムの本体工事の予定箇所は、下の地形図の少し左(西側)にある。


作成:青山貞一

 一通り、現場を視察した後、国土交通省の八ッ場ダム広報センターである「やんば館」に向かった。

 やんば館では、地元群馬のNPOの方々が私達を駐車場で待っていて下さった。下の写真は鷹取さんが撮影した写真である。


StopやんばダムNPOと 
撮影:鷹取敦 Digital Camera CASIO EX-H20G


StopやんばダムNPOと 
撮影:鷹取敦 Digital Camera CASIO EX-H20G


八ッ場ダム広報センター、やんば館にて
左二人:群馬県高崎市在住のNP、池田、青山、右二人:大田区議
撮影:鷹取敦 Digital Camera CASIO EX-H20G


やんば館を背景に
撮影:鷹取敦 Digital Camera CASIO EX-H20G

 私達はすでに22回、八ッ場ダムの工事現場に足を運んできたが、これほどさまざまな観点、すなわち必要性、妥当性、正当性のいずれも乏しく、巨額な公費を狭い地域に投入しているケースは、日本広しと言え、ここしかないのではないかと感じている。

 当初予算がその後大きく修正された事業のリスト
ダム名 県名 当初見積額
億円
(A)
実際の
建設費額
億円(B)
倍率
B/A
計画
策定時期
八ッ場 群馬県 2,110 4,600 2.1 1986年
大滝 奈良県 230 3,640 15.8 1972年
徳山 岐阜県 330 3,500 10.6 1976年
川辺川 熊本県 350 2,650 7.5 1976年
滝沢 埼玉県 610 2,320 3.8 1976年
湯西川 栃木県 880 1,849 2.0 1986年
志津見 島根県 660 1,450 2.1 1988年
出典:2007年8月30日の日本経済新聞一面記事より。赤色の強調は筆者

 公共事業は小さく産んで大きく育てる之たとえの通り、八ッ場ダムもすでに当初予算の2倍以上を使っているが、おそらく今後、地質学的にみて谷の両岸が脆弱であることを含め本体工事まで、総額で1兆円を超す巨大事業に発展するのではないかと思われる。

つづく