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●白根山系河川の強酸性水 私達は野反湖で自然を満喫した後、一旦国道292号線まで戻り、一路、品木湖(ダム)に向かった。 この一帯は、白根山系にあり全国的に有名な草津温泉はじめ万座温泉などいおう温泉のメッカである。いおう鉱泉の温泉水は、下の表にあるように酸性度が非常に高く、pHで2〜4となっている。 とくに私達が登ってきた白砂川上流の支流地域は、pHが低い。とりわけ強酸性となっているのは、草津温泉を始点とする湯川である。湯川のpHは2前後である。
ところで強酸性水は、下の写真にあるように鉄やコンクリートを溶かしてしまう! たとえば、草津温泉から出るpH2の湯水は、下の写真にあるように約10日間で五寸釘を溶かし細い針金としてしまう! 出典:国土交通省関東地方整備局品木ダム水質管理所 同様にpH2の湯は下の写真のように一ヶ月で、コンクリートをボロボロにしてしまう。 出典:国土交通省関東地方整備局品木ダム水質管理所 ●強酸性水の中和工場 品木ダムを視察後、私達は品木ダムに流入する湯川の源流でもある草津温泉に向かった。 湯畑にて。これは青山ゼミの学生を連れ2006年8月にでかけたときに撮影 (2006年8月8日、ニコンCoolPix 撮影:青山貞一) いつもにぎわう湯畑。 (2007年9月15日、ニコンCoolPix 撮影:青山貞一)
草津温泉には大小、膨大な数の温泉があるが、昭和初期から温泉からの排水はそのまま湯川と呼ばれる一級河川の上流に流されてきた。 その後、昭和45年前後に水質汚濁防止法などの環境法が整備されるが、おそらくひとつひとつの温泉は小規模であり、いわゆる特定施設とならず、規制の対象とならなかったはずである。 このように草津温泉の強酸性水をそのまま湯川などに流していたが、そうなると当然下流域の河川のpHが著しく低くなり、飲料水はもとより農業用水などでも利用できなくなる。 そこで、建設省(当時)は、草津温泉を流れる湯川など白砂川の主要支流の河川について石灰で中和する工場を流域に設置し、たとえば草津温泉の大滝の湯近くにある工場の場合、1日に60トン規模の石灰を使い、pHで2前後の強酸性水を5前後まで中和している。 国土交通省側の説明では、「湯川の水を汲み上げ、石灰を混ぜて再び湯川に注ぐことによって中和している」としている。 湯川の始点に近い草津温泉にある石灰工場 撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8 2010.5.5 下の写真は湯川の始点に近い草津温泉の大滝の湯近くにある湯川の強酸性の水(湯)を石灰によって中和している現場である。写真手前が中和以前、写真奥が中和後である。石灰により中和するため水(湯)が白濁していることが分かる。 湯川の始点に近い草津温泉にある石灰による中和現場 撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8 2010.5.5 下は私達が8月19日、その中和工場を訪問したときの写真である。国土交通省の担当者がひとつひとつ説明をしてくれ、私達がその都度質問をしていった。 国土交通省の若い担当者は、青山や池田が専門的な質問を次々にするのでびっくりしていた! 施設、設備の説明をする国土交通省職員 撮影:鷹取敦 Digital Camera CASIO EX-H20G 中和工場の施設、設備の説明をする国土交通省職員 撮影:鷹取敦 Digital Camera CASIO EX-H20G 施設、設備の説明をする国土交通省職員 撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10 施設、設備の説明をする国土交通省職員 撮影:鷹取敦 Digital Camera CASIO EX-H20G 施設、設備の説明をする国土交通省職員 撮影:鷹取敦 Digital Camera CASIO EX-H20G 根掘り葉掘り質問する国土交通省職員。すべてに懇切丁寧に答えた(笑い)。 青山にヒヤリング(アンケート)をする国土交通省職員 撮影:鷹取敦 Digital Camera CASIO EX-H20G ●中和水が流れ込む品木ダム ところで、湯川の中和水や大沢川、谷沢川などの酸性が強い水は、国土交通省がつくった品木ダムに流れ込む。このダムも中和工場設置とほぼ同時期の昭和40年代中頃に開発されている。 下の写真2枚は、以前(2010年のGW)に品木ダムに行ったときに撮影したものだが、今回も野反湖の帰り4人で品木ダムを視察した。 国土交通省の品木ダム。右は池田こみちさん 撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8 2010.5.5 国土交通省の品木ダム 撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8 2010.5.5 ●ヒ素を含む浚渫土砂不法投棄? 当然のこととして、品木ダムには石灰を高濃度に含む土砂(ヘドロ)が堆積する。そのヘドロを定期的に浚渫しているのだが、そのヘドロに高濃度のヒ素が含まれていることが明らかになっている。従って、それをどこに持って行っているかが問題である。 撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8 2010.5.5 ◆河川整備基金助成事業 「品木ダムの堆積環境の解析と浚渫物土捨場による環境負荷の見積」 http://www.kasen.or.jp/seibikikin/h22/pdf/rep1-07.pdf 国土交通省と群馬県は、過去、廃棄物処理法に言う安定型最終処分場に、高濃度のヒ素を含むヘドロ(浚渫土砂)を捨てているが、これは違法行為ではないのかという疑問が提起されている。 これについては、その昔、朝日新聞が大きく報じた。私の意見も掲載されている。 ◆八ッ場ダム上流で国交省、基準の370倍のヒ素汚泥を投棄 朝日新聞http://www.eritokyo.jp/independent/aoyama-col120367.htm また水質調査結果、国土交通省の最終処分場などへの現地調査を踏まえ、詳細な調査報告を環境行政改革フォーラムの論文集に執筆しているので、別途参照して欲しい。 さらに、独立系メディアに関連する調査、詳細な調査結果などを公開しているのでご覧頂きたい。 ●特集:真夏の上州で環境調査 2010.7.17 青山貞一:真夏の上州で環境調査 (3)白砂・吾妻水系における環境問題の所在@ 青山貞一:真夏の上州で環境調査 (4)白砂・吾妻水系における環境問題の所在A 青山貞一:真夏の上州で環境調査 (5)白砂・吾妻水系における環境問題の所在B 青山貞一:真夏の上州で環境調査 (6)「水質調査」の目的・方法・対象 青山貞一:真夏の上州で環境調査 (7)「吾妻川」で水質調査 青山貞一:真夏の上州で環境調査 (8)「川原湯温泉」で水質調査 青山貞一:真夏の上州で環境調査 (9)「不動の滝」で水質調査 青山貞一:真夏の上州で環境調査 (10)「白砂川(広池発電所)」で水質調査 青山貞一:真夏の上州で環境調査 (11)「白砂川(滝見橋)」で水質調査 青山貞一:真夏の上州で環境調査 (12)「品木ダム」で水質調査 青山貞一:真夏の上州で環境調査 (13)「大沢ダム」で水質調査 つづく つづく |